機械設計の初心者が最初につまずきやすいポイントが、
「図面は描けるのに、設計者として評価されない」 という壁です。
寸法は入っている。
形状も成立している。
CAD操作も問題ない。
それでも、
▶ 設計レビューで修正が多い
▶ 加工・組立現場から質問が来る
▶「この設計、何を狙ってるの?」と聞かれる
この原因の多くは、
図面に設計意図が表現されていないことにあります。
本記事では、
機械設計初心者が伸び悩む理由と、
「描ける図面」から
「意図を伝えられる図面」へ成長する考え方を、
図面設計の基礎としてわかりやすく解説します。
「描ける図面」と「伝わる図面」の決定的な違い
初心者の図面は、
形状と寸法はあるが、意図が読み取れない
という特徴があります。
一方、伝わる図面には、
が、図面を見るだけで分かる工夫があります。
機械図面は「情報の集合体」であり、
設計者の考えを現場に伝えるためのコミュニケーションツールです。
機械設計初心者が図面でやりがちな失敗
寸法をすべて同じ重要度で入れてしまう
すべての寸法が同じ見た目だと、
重要な寸法ほど、意図が伝わる書き方が必要です。
なぜその公差なのか説明できない
「なんとなくこの公差」
これは初心者に非常に多い状態です。
図面は“理由のある数値”で構成することが重要です。
加工・組立を想像せずに描く
加工者・組立者は、
図面を見て作業をイメージします。
これを考慮しない図面は、
必ず現場で止まります。
図面で「設計意図」を伝えるための基本ポイント
〜描けているのに伝わらない図面から卒業しよう〜
機械設計において図面は、
単なる形状の説明書ではありません。
本当に大切なのは、
「なぜこの形・この寸法・この精度なのか」という
設計者の意図を正しく伝えることです。
ここでは、初心者がまず押さえるべき
図面で設計意図を伝える3つの基本ポイントを解説します。
① 重要な機能・基準を明確にする
設計意図が伝わらない図面の多くは、
“基準が見えない”ことが原因です。
基準面・基準軸をはっきり示す
- どこを基準に加工するのか
- どこを基準に寸法を見てほしいのか
これが分からないと、
加工者・検査者は迷います。
基準面・基準軸は
寸法の起点として一貫性を持たせて配置しましょう。
機能に関わる寸法を整理する
すべての寸法が同じ重要度ではありません。
これらは、
機能寸法として意識的に整理する必要があります。
「この部品は、何のための部品か?」
それが寸法配置に表れているかが重要です。


② 公差にメリハリをつける
初心者がやりがちなのが、
公差を全部同じにしてしまうことです。
公差の基本的な考え方
- 機能寸法 → 必要な公差を指定
- それ以外の寸法 → 一般公差に任せる
これが公差設計の基本です。
公差は
「ここは管理したい」「ここは厳しく見てほしい」
という設計者からのメッセージです。
公差を入れる=精度を上げる、ではない
公差を厳しくすると、
という影響があります。
本当に必要なところだけに公差を入れる
これが「考えられた図面」の特徴です。
③ 注記・表記で意図を補足する
図形と寸法だけでは、
どうしても伝えきれない情報があります。
注記で補うべき代表例
- 組立方向(表裏・左右)
- 加工方法の指定(仕上げ・面取りなど)
- 注意事項(干渉注意・傷注意など)
これらは
文章で補足することで初めて伝わる情報です。
曖昧な表現は避ける
NG例)
注記は
誰が読んでも同じ行動が取れる表現にしましょう。


設計意図が伝わる図面は「質問されない」
良い図面の共通点はシンプルです。
- 加工現場から質問が出ない
- 組立がスムーズに進む
- 検査で迷いが出ない
つまり、
設計意図が図面にきちんと表れているということです。
図面は「形」ではなく「考え」を伝える
図面で設計意図を伝えるためには、
この3点を意識するだけで、
図面の質は大きく変わります。

「描けている図面」から
「伝わる図面」へ。
これが、
機械設計初心者が一段レベルアップするための
最重要ポイントです。
図面設計は「作業」ではなく「設計そのもの」
図面を描く行為は、
設計の“最後”ではありません。
図面設計そのものが設計行為です。
脱初心者の設計者は、
図面を「描くもの」ではなく
「考えを表現するもの」として扱います。
図面でよくあるNG例コラム
〜「描いてあるのに伝わらない」図面の正体〜
機械設計初心者の図面は、
一見すると成立しているのに、現場で止まるという特徴があります。
ここでは特によくあるNG例を紹介します。
NG例① 寸法は入っているが「基準」が分からない
寸法はすべて記載されているのに、
この状態では、加工者も検査者も迷います。
基準面・基準軸を意識した寸法配置ができていない図面は、
「設計意図がない図面」と判断されがちです。
NG例② 全寸法に同じ公差を付けてしまう
初心者によくあるのが、
- すべて ±0.01
- すべて ±0.1
といった 公差の一律指定。
これでは、
- どこが重要なのか分からない
- 過剰品質になりやすい
- 加工コストが無駄に上がる
公差は「管理したい意思表示」。
重要寸法だけに意味のある公差を付けることが大切です。
NG例③ 図面を見ても「使われ方」が想像できない
- 組立方向が不明
- 左右の区別がつかない
- 取付面が分からない
このような図面は、
組立現場で必ず質問が発生します。
図面は「部品単体」ではなく、
装置の中でどう使われるかを意識して描く必要があります。
NG例④ 注記が曖昧・抽象的
例)
これらは設計者には分かっていても、
現場には伝わりません。
注記は
誰が読んでも同じ行動が取れる表現にすることが重要です。
NG例⑤ CADはきれいだが、設計意図がない
線はきれい、モデルも整っている。
それでも、
という図面は、
「描ける人」止まりの設計です。
脱初心者になるには、
「この図面、何を狙った設計?」と聞かれて答えられるか
を常に意識しましょう。
NGを避けるための一言アドバイス
図面を描き終えたら、必ずこう自問してください。
「この図面を初めて見る人に、設計意図は伝わるか?」
YESと言えなければ、
その図面はまだ 改善の余地あり です。
まとめ
機械設計初心者が伸び悩む最大の原因は、
図面に設計意図が十分に表現されていないことです。
▶ 描けるだけの図面から卒業する
▶ 図面で「何を重視した設計か」を伝える
▶ 加工・組立・検査まで想像する
これができるようになると、
設計レビューの質、現場からの信頼が大きく変わります。
機械設計の図面基礎とは、
線を引く技術ではなく、意図を伝える技術です。
次は「部品設計編」へ
〜形状・強度・使いやすさを考える力を身につけよう〜
図面で設計意図を伝えられるようになると、
次にぶつかる壁が 「そもそも、この形状で本当に良いのか?」 という疑問です。
これらはすべて、部品設計の基礎知識に関わる重要なテーマです。
次の記事では、
形状・材料・剛性・人が使う視点まで含めた
「考える部品設計」の基本を、初心者向けにわかりやすく解説していきます。




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