【切削加工の工夫】ポケットの角は丸くするのが正解!~隅Rの基本と加工性への影響~

製図の基礎知識

機械部品の設計において、「ポケット形状」の四隅をどう設計するかは、加工性とコストに大きく関わってきます。とくに角部のR(アール)処理は、切削加工における基本的なポイントの一つです。

この記事では、なぜポケットの角にRが必要なのか、どのように設計すれば加工しやすくなるのかを初心者向けにわかりやすく解説します。


なぜポケットの角を丸くする必要があるの?

ポケット形状とは、部品の中に凹んだ部分を作る加工形状のことです。たとえば、箱状のくぼみや、取り付け用の凹部などがあります。

このポケット形状の四隅(内コーナー)に直角(90°の角)を設計してしまうと、加工上問題が発生します。

なぜなら、エンドミルなどの切削工具は「回転する円筒形の工具」なので、角が削れない=直角が作れないのです。

直角設計にするとどうなる?

  • 特殊な工具や角出し加工(手作業や放電加工など)が必要になる
  • 加工時間が増える
  • 工数が増える=コストアップ!

内コーナーには「R(アール)」を設けよう

そこで設計上の工夫として、内コーナーには「R(半径)」を設けることが推奨されます。

例えば、、、

  • 角を「R3」や「R5」などで丸くする
  • 図面には「R5以下」「R8以下」などと記載することで、加工者が使用できる工具の選択肢が増える

これは「隅R」や「隅角R」と呼ばれ、工具サイズに合わせて適切なR寸法を設定することで、スムーズに加工でき、コスト削減にもつながります。


できるだけ大きなRを設定しよう!

隅Rは、できるだけ大きめに設計するのが基本です。

理由は以下のとおりです。

大きなR ⇒ 太い工具が使える ⇒ 加工が速く・安定しやすい
工具寿命が長くなり、トラブルが減る
「R以下」の指示をすれば、現場で自由に工具が選べる

🔍 例)

🚫 「隅R1固定」 → 加工が難しい(細い工具が必要)
✅ 「隅R3以下」 → φ6のエンドミルで加工できて効率的!


設計時の注意点

  • 「四角い部品をポケットに差し込む」ような用途では、コーナーに逃げを設ける工夫が必要です
  • ポケット形状と合わせる部品も同時に見直し、干渉が起きないように調整することも大切です。
    • 隅R部に干渉しないようにC面取り等対策が必要

ポケットの四隅にRを設けることは、加工性を高めてコストを抑える基本的な設計テクニックです。

✔ 工具の形状上、内角は直角に加工できない
✔ 隅Rを設けることで、追加加工を避けられる
✔ 可能な限り「大きめのR」を設定し、「以下」表記で柔軟な加工対応を可能にする

隅Rをつけられない場合の逃がし加工とは?

ポケット形状などの四隅には、通常「隅R(すみアール)」を設けることで切削工具が入りやすくなり、加工性が向上します。しかし、設計上どうしても角を直角に保ちたいケースもあります。

たとえば・・・

  • 四角い部品をぴったり差し込む必要がある
  • 機能上どうしても角を直角に保つ必要がある

このような場合、隅Rを設けられない=エンドミルでそのまま加工できないという問題が生じます。

はじめ
はじめ

そこで登場するのが、「逃がし加工(クリアランス加工)」という設計上の工夫です。


逃がし加工とは?

逃がし加工とは、部品の角(内コーナー)に小さな溝やくぼみを追加することで、切削工具の干渉を防ぐ加工方法です。これは「コーナーリリーフ」とも呼ばれます。

この逃がしによって、工具が角まで届きやすくなり、工具折損のリスクや追加工の手間を減らすことができます。


逃がし寸法を「エンドミル径」に合わせて柔軟に設計する

逃がし加工を設ける場合も、できるだけ「エンドミル径の選択肢が広がるような設計」にすることが重要です。

たとえば・・・

  • 逃がしの幅を大きめに取ることで、細い工具だけでなく、太めのエンドミルでも対応可能になる
  • 「幅2.5mm」などと指示しておくと、φ5エンドミルを使える=加工が安定しやすい

これにより、

✅ 使用可能な工具が増える
✅ 加工コストを抑えられる
✅ 工具寿命も伸びるため、品質安定にもつながる


よく使われる逃がし形状

逃がし加工にはいくつかの形状パターンがあります。

丸逃がし形状:丸穴を角にずらして設ける


丸溝逃がし形状:四隅に小さなR形状の溝を設ける


直線逃がし形状:隅に直線的な溝を伸ばす


設計上の注意点

  • 逃がしが機能や外観に影響を与えないことを確認しましょう
  • 差し込み側(相手部品)との干渉がないか、クリアランス設計も重要です
  • 図面に「逃がし形状あり」「R以下」などを明示しておくと、製造側とのトラブルを減らせます

ポケットの隅にRが設けられない場合でも、逃がし加工を設計に組み込むことで、切削加工の難易度を下げることが可能です。

✅ 隅Rが使えないときは逃がし加工で対応
✅ 幅や深さは「エンドミルが入りやすい寸法」にすることがコツ
✅ ドッグボーンやリリーフなど形状は用途に応じて選択
✅ 工具選択の幅が広がれば、コストも品質も両立しやすくなる

はじめ
はじめ

逃がし加工は「設計と加工のすり合わせ」が重要なテーマです。
加工現場の意見を取り入れながら、設計時に柔軟に取り入れていきましょう。

まとめ|隅Rを意識した設計が加工コストを左右する!

切削加工において、ポケットや内コーナーの隅にR(アール)=曲線部を設けることは、加工のしやすさに直結します。工具の形状上、エンドミルでは直角の角を削れないため、隅Rがないと追加の角出し加工が必要になり、コスト・工数ともに増加します。

✔ 隅には可能な限り大きめのR寸法を設ける
✔ 「R以下」と記載すれば、工具選択の自由度が上がる
✔ どうしても直角が必要な場合は、逃がし加工で対応

このように、ほんの少しの配慮で加工時間や費用を大きく削減できるのが隅R設計のメリットです。図面を描く段階で、加工現場の視点を意識した設計を行うことが、ムダを減らし、品質の安定につながります。



はじめ
はじめ

図面とCADはアイデアを具体的な形にし、設計意図を正確に伝えるための重要な手段です。

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