空圧機器は、工場の自動化や生産設備において広く使用される重要な要素です。空気圧を用いたシステムは、コスト効率やメンテナンスの容易さ、クリーンな動作環境など、多くの利点を提供します。これらの空圧システムの基本的な構成要素として知られるのが「3点セット」です。これは、空気の品質を保ち、システムの長寿命化と安定した動作を実現するための必須機器です。本記事では、空圧機器の3点セットの機能、選定ポイント、用途について解説します。
空圧機器の3点セットとは?
空圧機器の「3点セット」は、フィルター、レギュレーター、ルブリケーターの3つの装置で構成され、圧縮空気の品質と圧力を管理し、システムの信頼性を向上させる役割を担っています。
- フィルター(エアフィルター)
- 圧縮空気から水分や微細な異物を除去し、クリーンな空気を供給します。
- レギュレーター(圧力調整器)
- 圧縮空気の圧力を一定に保ち、適切な圧力で機器を動作させます。
- ルブリケーター(給油器)
- 圧縮空気に適切な量の潤滑油を供給し、空圧機器の摩耗を防ぎます。
これらの機器は、それぞれ重要な役割を持ち、空圧システムの効率と耐久性を高めるために組み合わせて使用されます。
各機器の役割と選定ポイント
フィルター(エアフィルター)
フィルターは、圧縮空気に含まれる水分や微細な異物、塵埃を取り除く装置です。圧縮空気には、空気中の湿気や汚れが含まれており、それらが機器内部に蓄積すると、腐食やシール破損、精密機器の故障を引き起こします。フィルターはこれらの汚れを取り除くことで、システムの信頼性を高めます。
選定ポイント
- フィルターのメッシュサイズ(微粒子の捕捉サイズ)
- 使用する空気の水分含有量
- フィルターのドレン処理方法(自動・手動)
レギュレーター(圧力調整器)
レギュレーターは、圧縮空気の圧力を一定に保つための装置です。空圧システムでは、必要とされる圧力範囲が異なることがあり、レギュレーターを使用して過剰な圧力を抑えたり、安定した圧力を供給することが重要です。
選定ポイント
- 圧力範囲(使用する機器に応じた調整範囲)
- 圧力の安定性と精度
- レギュレーターの取付方法や寸法
ルブリケーター(給油器)
ルブリケーターは、圧縮空気に適量の潤滑油を供給し、空圧機器の摩耗や劣化を防ぐ装置です。空圧機器の内部では、摩擦によって部品が摩耗することがありますが、ルブリケーターにより潤滑油が供給されることで、これを防ぐことができます。
選定ポイント
- 適切な潤滑油の種類(使用環境に応じたもの)
- 潤滑油の供給量の調整が可能か
- ルブリケーターの設置位置やサイズ
ルブリケータが使用される機会が減少している原因
近年、空圧機器の設計においてルブリケータの使用が減少している理由はいくつかあります。大きな要因の一つは、メンテナンスフリー化や潤滑不要の空圧機器の普及です。これらの機器は、潤滑が不要な素材やコーティングを使用することで、従来必要だった油の供給を不要としています。これにより、潤滑油の管理や定期的な補充といったメンテナンス作業が削減され、稼働効率が向上しました。
さらに、クリーンルームや食品・医療分野などの衛生的な環境では、潤滑油の飛散や混入が許されないため、ルブリケータを避ける設計が増加しています。これにより、潤滑不要な空圧機器が好まれる傾向が強まり、ルブリケータを使用する機会が減少しています。
また、空気中の油分が環境に悪影響を与えることから、環境への配慮という観点からも、ルブリケータを使わない方向にシフトしています。このように、技術の進化と環境への意識の高まりが、ルブリケータの使用機会の減少に繋がっています。
最近では新規で設備を設計する際にはルブリケータを使用することはありません。
古い設備に設置されているのを見ますが、周囲が油で汚れていたり、油切れになっていたり、メンテナンスが行き届いていないことがよくあります。
また、無給油シリンダでも一度給油してしまうと封入されているグリスが流されてしまい継続した給油が必要になるため、注意が必要です。
ミストセパレータの設置位置とその重要性
最近では、エアフィルターの後にミストセパレータを設置することが増えています。これにはいくつかの理由があり、空圧システムの効率と信頼性を向上させるための重要な取り組みとなっています。
エアフィルターとミストセパレータの役割分担
エアフィルター | 主に比較的大きな異物や粉塵を除去する役割を持っています。 圧縮空気が空気圧縮機から供給される際、空気中に含まれる砂や錆などの粒子がフィルターで取り除かれます。 |
ミストセパレータ | エアフィルターで除去しきれなかった微細な油分や水分、さらに小さな異物を分離・除去します。 エアフィルターが大きな粒子を、ミストセパレータが細かなミスト状の不純物を取り除くという役割分担がなされているのです。 |
エアフィルター後にミストセパレータを設置する理由
- 圧縮空気のクリーン度を最大化するため エアフィルターだけでは、すべての不純物を取り除くことはできません。特に、微細な油分や水分、ミスト状の汚染物質はフィルターをすり抜けてしまうことがあります。ミストセパレータをフィルターの後に設置することで、これらの微粒子を効率的に除去し、最終的にクリーンな圧縮空気を供給することができます。
- 機器の寿命を延ばす 空圧システム内の微細な油分や水分が、空圧機器に蓄積すると、機械の動作に悪影響を及ぼし、長期的には機器の寿命を縮めることになります。エアフィルターの後にミストセパレータを設置することで、こうした不純物が機器に到達するのを防ぎ、結果としてメンテナンスの頻度を減らし、機器の寿命を延ばすことができます。
- 高精度な機器への対応 近年、空圧システムで使用される機器は、より高精度かつ高効率なものが求められるようになっています。このような機器では、圧縮空気の清浄度がさらに重要となり、フィルター後にミストセパレータを設置して空気の質を高めることが必要不可欠です。
- 高品質な仕上げが求められる産業での需要 自動車、食品、電子機器、医薬品など、高品質な仕上げが求められる産業では、圧縮空気の清浄度が製品品質に直接影響を与えることがあります。そのため、エアフィルターとミストセパレータを組み合わせることで、より高いレベルで不純物を除去し、製品品質の向上に寄与しています。
3点セットの用途と利点
空圧機器の3点セットは、製造ラインや自動化設備、エアツールなど、幅広い分野で使用されています。これらの機器を適切に設置することで、システム全体の効率を向上させ、機器の寿命を延ばし、保守コストを削減することが可能です。また、機器の摩耗や故障を防ぐことにより、生産効率の向上やダウンタイムの削減にも寄与します。
まとめ
空圧機器の3点セットは、フィルター、レギュレーター、ルブリケーターの3つの要素で構成され、空圧システムの運用に欠かせない存在です。これらの機器を適切に選定し使用することで、システムの信頼性と効率を大幅に向上させることができます。空圧システムを設計する際には、それぞれの機器の役割と選定ポイントをしっかりと理解し、最適な機器を選ぶことが成功への鍵です。
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