機械設計や自動化装置において、エアシリンダーやバルブを接続するために使用されるエアーチューブ。その中でもよく使われるのがポリウレタン(PU)チューブとナイロン(PA)チューブです。
この記事では、それぞれの特性の違いや、現場での適切な使い分け方法について解説します。
ポリウレタンチューブ(PUチューブ)の特徴
▶ 主な特性
項目 | 内容 |
---|---|
柔軟性 | 非常に柔らかく、曲げやすい |
曲げ半径 | 小さく、狭い場所でも配管可能 |
耐圧性 | 標準的な耐圧性(0.8〜1.0 MPa) |
耐摩耗性 | 比較的低め |
耐熱性 | やや低め(常用温度:〜60℃程度) |
色展開 | 豊富で識別しやすい |
✅ メリット
- 配管作業がしやすい(取り回しが簡単)
- 機器の可動部にも使いやすい(柔らかく追従性がある)
- コストが比較的安価
🚫 デメリット
- 耐熱性・耐薬品性が低め
- 長期使用で劣化・硬化しやすい
🔍 向いている用途
- ロボットアームやスライダなどの可動部配管
- 作業者が頻繁に配管作業を行う柔軟性重視の装置
ナイロンチューブ(PAチューブ)の特徴
▶ 主な特性
項目 | 内容 |
---|---|
硬さ | やや硬く、しっかりしている |
曲げ半径 | 大きめ(曲げにくい) |
耐圧性 | 高い(〜2.0 MPa以上も可能) |
耐摩耗性 | 高い(摩耗しにくい) |
耐熱性 | 高め(常用温度:〜80℃) |
寿命 | 長く、劣化しにくい |
✅ メリット
- 高圧ラインに対応可能
- 耐久性・耐熱性に優れ、長寿命
- 固定配管に適している
🚫 デメリット
- 曲げにくく、配管作業性は劣る
- 価格はポリウレタンより高め
🔍 向いている用途
- 高圧エアラインや長距離配管
- 固定配管で長期間メンテナンスフリーを目指す設計
- 油分や薬品の飛散がある環境
特性比較一覧表
項目 | ポリウレタンチューブ | ナイロンチューブ |
---|---|---|
柔軟性 | ◎ 非常に柔らかい | △ やや硬い |
耐圧性 | ○ 標準 | ◎ 高耐圧 |
耐熱性 | △ やや弱い | ○ 高め |
耐摩耗性 | △ 低め | ◎ 高い |
配管作業性 | ◎ 取り回し良好 | △ 固めで作業性は低い |
コスト | ◎ 安価 | △ やや高い |
向いている場所 | 可動部・狭所配管 | 長距離・高圧・固定配管 |
実際の使い分け例
📌 可動部(例:ロボットアーム、スライドユニット)
👉 柔軟性が求められるため、ポリウレタンチューブを使用
📌 エア供給の幹線(例:コンプレッサから装置まで)
👉 長距離かつ耐圧が必要なので、ナイロンチューブが適する
📌 高温環境(例:ヒーター付近)
👉 ナイロンチューブの方が耐熱性に優れていて安心
📌 配管ミスを防ぎたいとき(例:複数ライン)
👉 色分けしやすいポリウレタンチューブが便利
よくあるトラブルと対策
トラブル例 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
チューブが折れる・割れる | 曲げ半径超過や経年劣化 | 柔軟なPUに変更・適正曲げ配管 |
エア漏れが発生 | チューブ接続不良 | チューブカット面の確認・継手再挿入 |
熱でチューブが変形 | 耐熱不足 | ナイロンチューブに切替 |
ポリウレタン・ナイロン以外の材質の特徴と使い分け
エア配管における主流チューブは「ポリウレタン(PU)」と「ナイロン(PA)」ですが、実はそれ以外にも特定の用途や環境に適した材質のエアーチューブが存在します。
本項では、ポリエチレン(PE)チューブ、フッ素樹脂(PTFE・PFA)チューブ、ソフトPVCチューブなどの特徴と使い分けについて解説します。
ポリエチレン(PE)チューブ
▶ 特徴
項目 | 内容 |
---|---|
硬さ | ナイロンより柔らかめだがPUより硬め |
耐薬品性 | ○(酸・アルカリに比較的強い) |
重量 | 非常に軽量 |
耐熱性 | △(60℃程度) |
透明度 | 半透明(内容物が見える) |
✅ メリット
- 軽量で長距離配管にも向いている
- 耐薬品性が高めで、一部薬品を使用する環境でも使用可能
- コストが安価
🚫 デメリット
- 曲げに弱く、割れやすい
- 耐熱性は低めで高温環境には不向き
🔍 向いている用途
- 軽量でシンプルな設備配管
- 薬品を使用する簡易洗浄ライン
フッ素樹脂チューブ(PTFE・PFA)
▶ 特徴
項目 | 内容 |
---|---|
耐薬品性 | ◎(ほぼすべての薬品に耐える) |
耐熱性 | ◎(200℃以上にも耐える) |
滑り性 | ◎(内部抵抗が非常に小さい) |
硬さ | 非常に硬く、取り回しにくい |
色 | 乳白透明〜半透明が多い |
✅ メリット
- 超耐薬品性・高耐熱性を兼ね備えている
- 内面が滑らかで流体抵抗が少ない
🚫 デメリット
- 高価
- 曲げ作業が非常にしづらい
- チューブ継手に対応しない場合もある(専用継手が必要)
🔍 向いている用途
- クリーンルームや医薬・食品装置など厳しい環境
- 強酸・強アルカリなどを含む特殊な薬液ライン
- 高温ガスライン
ソフトPVC(塩化ビニル)チューブ
▶ 特徴
項目 | 内容 |
---|---|
柔軟性 | ◎ 非常に柔らかい |
透明性 | ◎ 内容物がよく見える |
耐圧性 | △ あまり高くない |
耐熱性 | △(60〜70℃程度) |
コスト | ◎ 非常に安価 |
✅ メリット
- 非常に柔軟で取り回しが良い
- 透明で中の流体が見えるため監視性が高い
- コストが非常に安い
🚫 デメリット
- 経年劣化しやすい(硬化・ひび割れ)
- 耐圧・耐熱性がやや劣る
🔍 向いている用途
- 低圧・簡易的なエアライン
- 検査用の一時的な配管
- 飲料や水など低圧透明ライン
シリコンチューブ(エア用としては特殊)
▶ 特徴
項目 | 内容 |
---|---|
柔軟性 | ◎ 極めて柔らかい |
耐熱性 | ◎(200℃前後まで可) |
無毒性 | ◎ 食品・医療用途で多用 |
耐圧性 | △ 非常に低い(圧縮空気には不向き) |
✅ メリット
- 極めて柔らかく、取り回しに最適
- 高温・無菌環境に対応
- 人体や食品に安全
🚫 デメリット
- 耐圧が低く、通常のエア配管には使用しづらい
- 価格が高い
🔍 向いている用途
- 食品機械や医療機器の内部配管(低圧のみ)
- 検査・計測用途の一時的な配管
チューブ材質別まとめ表
材質 | 柔軟性 | 耐圧性 | 耐熱性 | 耐薬品性 | コスト | 用途例 |
---|---|---|---|---|---|---|
ポリエチレン (PE) | ○ | △ | △ | ○ | ◎ | 軽量ライン、簡易薬品配管 |
フッ素樹脂(PTFE/PFA) | × | ◎ | ◎ | ◎ | × | 高温・薬品・クリーンルーム |
ソフトPVC | ◎ | △ | △ | △ | ◎ | 低圧・一時配管 |
シリコン | ◎ | × | ◎ | ○ | × | 医療・食品の低圧ライン |
ポリウレタンやナイロン以外のチューブにも、それぞれ独自の長所と用途があります。
選定において重要なのは、使用環境に応じて以下の要素を見極めることです。
✅耐熱性(高温になる場所か?)
✅耐薬品性(薬液やオイルが飛ぶか?)
✅柔軟性(取り回しが必要か?)
✅耐圧性(高圧の空気を使うか?)
✅安全性や衛生性(食品・医療機器か?)

これらのポイントを押さえることで、チューブの破損やエア漏れなどのトラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
エアーチューブの選定では、「柔軟性」を重視するならポリウレタンチューブ、「耐圧性・耐久性」を重視するならナイロンチューブを選ぶのが基本です。
配管場所の条件や使用環境に合わせて、適材適所で使い分けることが装置トラブル防止のカギになります。初心者の方も、この記事を参考にして正しいチューブ選定を行ってください!
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