【可動部】ケーブルベアの特徴と選定ポイント【ケーブル保護】

動力選定

機械設計において、ロボットや工作機械などの可動部には
電気ケーブルやエアホース、油圧ホースなどが必要になります。

しかし、それらを適切に配線しないと断線や損傷が発生し、
装置の故障や生産停止の原因になりかねません。

そこで活躍するのがケーブルベア(ケーブルキャリアとも呼ばれる)です。

本記事では、ケーブルベアの特徴選定ポイントについて詳しく解説します。


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ケーブルベア(ケーブルキャリア)とは?

ケーブルベアは、ケーブルやホースを保護しながら、
可動部に沿ってスムーズに移動させるための機械要素です。

主に、以下のような目的で使用されます。

  • 可動部のケーブル・ホースの保護
    • 曲げやねじれによる損傷を防ぐ
  • ケーブルの整理
    • 配線をまとめ、機械の動作を妨げないようにする
  • 安全性の向上
    • ケーブルの絡まりや摩耗による故障を防ぐ

主に樹脂製と金属製の2種類があり、それぞれ特徴があります。

種類特徴主な用途
樹脂製ケーブルベア軽量で耐腐食性が高い。
価格が比較的安い。
一般的な産業機械
ロボットアーム
金属製ケーブルベア高耐久・高剛性で、
強い力がかかる環境に適している。
工作機械
高負荷の設備

ケーブルベアの選定ポイント

ケーブルベアを選定する際には、
以下のポイントを考慮する必要があります。

使用環境

ケーブルベアを使用する環境によって、適切な材質や構造を選ぶ必要があります。

  • 屋外・高温環境
    • 耐候性や耐熱性のある樹脂製または金属製を選択
  • 粉塵や切削油が多い環境
    • 密閉型のケーブルベアを使用し、異物の侵入を防ぐ
  • クリーンルーム環境
    • 低発塵タイプの樹脂製ケーブルベアが適している

可動範囲と曲げ半径

ケーブルベアは、設計時に必要な可動範囲と曲げ半径を考慮することが重要です。

曲げ半径(R)は、ケーブルやホースの
最小曲げ半径より大きくする。

ストローク長(可動距離)が長い場合、
支持部を設置する。

無理な曲げを避けることで、ケーブルの寿命を延ばせます!

搭載するケーブル・ホースの種類と本数

ケーブルベアに収納するケーブルやホースの種類、
本数、直径を考慮してサイズを決定します。

  • ケーブルが擦れないよう、適切な間隔を確保する
  • 重いケーブルが多い場合、剛性の高いケーブルベアを選ぶ

ケーブルの配置方法

ケーブルベア内では、ケーブル同士が絡まないように配置する必要があります。

  • 仕切り板を使用して、ケーブルごとに独立したスペースを確保
  • 太いケーブルやホースは中央付近に配置するとバランスが良い

取付方法と固定部の強度

ケーブルベアは、両端を機械装置にしっかりと固定する必要があります。

  • 固定部が弱いと、ケーブルベアがズレて破損の原因になる
  • 必要に応じて、ガイドレールやサポートローラーを使用する

ケーブルベアのメンテナンス

ケーブルベアを長期間安全に使用するためには、
定期的なメンテナンスが重要です。

🔧 メンテナンスのポイント

  1. 摩耗やひび割れがないか点検(特に樹脂製)
  2. ケーブルの摩耗や断線の兆候をチェック
  3. 異物が挟まっていないか確認(粉塵や金属くずなど)
  4. スムーズに可動するか確認(引っ掛かりがないか)

定期的なメンテナンスを行うことで、
装置のトラブルを防ぎ、ケーブルベアの寿命を延ばせます。


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可動部にケーブルベアを使わない場合の問題点

機械装置の可動部には、電気ケーブルやエアホース、油圧ホースなどが不可欠です。

しかし、これらを適切に管理せずにケーブルベアを使用しない場合
さまざまな問題が発生する可能性があります。

本項では、可動部にケーブルベアを使わないことによる問題点
を詳しく解説し、なぜケーブルベアが必要なのかを考えていきます。


ケーブルの損傷(断線・摩耗)

可動部にケーブルやホースを直接配線すると、
繰り返しの動作によって摩耗やねじれ、折れ曲がりが発生します。

🔴 発生する問題

  • ケーブルの被覆が摩耗し、内部の導線が露出
    ショートや火災のリスク
  • 何度も曲げられることで導線が断線
    信号エラーや動作不良
  • ホースの摩耗
    エア漏れや油漏れの原因

ケーブルベアを使用すれば…
ケーブルを適切な曲げ半径で整理でき、摩耗や断線のリスクを低減できます。


ケーブルの絡まり・引っ掛かり

ケーブルが無造作に配置されていると、機械の動作中に絡まったり、
可動部に巻き込まれたりすることがあります。

🔴 発生する問題

  • ケーブル同士が絡まり、動作不良や機械の停止を引き起こす
  • 可動部の部品と干渉し、ケーブルの破損や機械の故障につながる
  • 配線の乱れによってメンテナンス性が悪化

ケーブルベアを使用すれば…
ケーブルを整理し、一定の動作範囲内でスムーズに可動させることができます。


安全性の低下(作業者へのリスク)

ケーブルが乱雑に配置されていると、
作業者がケーブルに引っかかる危険性が高まります。

🔴 発生する問題

  • 作業者が足を引っ掛けて転倒するリスク
  • ケーブルに強い力が加わり、コネクタ部分が破損する
  • 不意なケーブルの動きによる装置トラブル

ケーブルベアを使用すれば…
可動部の配線を整理することで、作業者の安全性が向上します。


メンテナンス性の悪化

ケーブルが乱雑に配置されていると、保守・点検作業が困難になります。

🔴 発生する問題

  • 配線がどの経路を通っているのか分かりにくい
    トラブル発生時の対応が遅れる
  • 摩耗や断線のチェックが難しくなる
    → 早期発見ができず、装置停止につながる
  • 交換作業が大変になり、
    ダウンタイム(稼働停止時間)が長くなる

ケーブルベアを使用すれば…
ケーブルの配置が整理され、点検・交換作業が容易になります


機械の寿命・信頼性の低下

ケーブルの損傷や絡まりによって、
機械全体の信頼性が低下する可能性があります。

🔴 発生する問題

  • ケーブルの不具合で装置が誤動作し、生産ラインに影響を及ぼす
  • 断線や摩耗によるトラブルで、設備の寿命が短くなる
  • 修理・交換が頻繁に発生し、ランニングコストが増加

ケーブルベアを使用すれば…
ケーブルのトラブルを防ぎ、装置の長寿命化と安定稼働が可能になります。


可動部にケーブルベアを使わないと、
ケーブルの損傷や絡まり、安全性の低下、
メンテナンスのしにくさ、機械の信頼性低下といった問題が発生します。

これらのトラブルを未然に防ぐために、
適切なケーブルベアを選定し、適切な配線を行うことが重要です。

最後にチェック!

  • ケーブルの摩耗や断線を防ぐため、適切な曲げ半径を確保しているか?
  • 配線が絡まないように、整理されているか
  • 作業者の安全を確保するために、ケーブルが露出していないか
  • トラブル発生時に迅速にメンテナンスできる設計になっているか?

ケーブルベアを適切に導入し、
安全で信頼性の高い機械設計を実現しましょう!


ケーブルベアとロボットケーブルの併用と設計のコツを解説!

機械設計や装置設計において、可動部の配線はとても重要なポイントです。

配線が断線したり、絡まったりすれば、
いくら機構がしっかりしていても装置は動きません

そんなときによく使われるのが、

  • ケーブルベア(ケーブルキャリア)
  • ロボットケーブル

この2つです。

実はこの2つ、組み合わせて使う(併用する)ことで、
より信頼性の高い可動配線が実現できます。

本記事では、初心者の方でも理解できるように、

▶ それぞれの役割
▶ なぜ併用するのか?
▶ 設計時の注意点
▶ 具体的な設計例

についてわかりやすく解説していきます。


ケーブルベアとロボットケーブル、それぞれの役割をおさらい

まずは簡単におさらいしておきましょう。

ケーブルベア(ケーブルキャリア)とは?

ケーブルベアは、可動するケーブルや
チューブをまとめてガイド・保護するための樹脂製チェーンです。

主に「直線的な往復動作」をする箇所に使用されます。

  • ケーブルの動きを制限して摩耗を減らす
  • 配線をすっきりまとめられる
  • 決まった曲げ半径で動くので断線しにくい

という利点があります。

ロボットケーブルとは?

ロボットケーブルは、高い柔軟性と耐久性をもつ可動専用ケーブルです。

特に多関節ロボットのような複雑な動き(曲げ+ねじれ+引張り)に耐えられるように作られています。

  • 超多芯でも柔らかく動く
  • 1,000万回以上の屈曲に耐える製品も
  • 摩耗や油に強い外皮

という特徴があります。


なぜ「併用」が有効なのか?

結論からいうと、それぞれの長所を活かして短所をカバーできるからです。

ケーブルベア+一般可動ケーブルだけでは不安…

ケーブルベア内に一般的な可動ケーブル(いわゆる「耐屈曲ケーブル」)を使う場合、
想定より早く断線することがあります

その原因は以下のようなものです。

  • 屈曲回数の限界を超えてしまった
  • ベア内で微妙にケーブルが「ねじれる」
  • ベア内のケーブル同士が擦れて摩耗する

これらはベアに入れていても避けられないリスクです。

そこでロボットケーブルをベアに通す!

ロボットケーブルはもともと過酷な動作環境に
対応できるよう設計されているので、

  • ベア内の動作にも強い
  • ねじれや微振動でも劣化しにくい
  • 長期間使ってもトラブルが少ない

という利点があります。

つまり、ロボットケーブルをケーブルベアに通して使うことで、
配線全体の耐久性を飛躍的に向上できるのです。


ケーブルベア×ロボットケーブルの活用シーン

実際の装置設計では、以下のような場面でよく併用されます。

🔍 搬送装置のX軸・Y軸移動部

ケーブルベアにロボットケーブルを通すことで、
長距離移動でも安定動作。

🔍 多関節ロボットのベース部〜アーム基部

アーム基部まではベア配線、
それ以降はフリー配線(ねじれ対応)に切り替え。

🔍 工作機械のスライドテーブル

切粉・油の影響を受けるので、ベアで保護しつつ、
耐油性のあるロボットケーブルを使用。


設計時の注意点

併用する際には、いくつか気をつけるポイントがあります。

ケーブルの最小曲げ半径に注意!

ロボットケーブルといえど、
曲げ半径には限界があります

ベアの曲げ半径が小さすぎると、
内部で無理な曲げが発生し、早期劣化につながります。

メーカー仕様に記載された「許容最小曲げ半径R」よりも
大きなベアを選定しましょう。


ケーブル同士の摩耗対策

ベアの中では複数本のケーブルが動くため、
接触による摩耗や絡まりが発生することがあります

  • 仕切り板や分離板を使って、ケーブルを整列配置するようにしましょう。
  • ベアの「中仕切り付きタイプ」を選ぶのも有効です。

ケーブルの余長設計

可動範囲いっぱいまで伸びると、
ケーブルが引っ張られて断線する恐れがあります。

ケーブルは常に少し余裕を持った長さで配置し、
S字形やループを作ることで無理のない動きを実現します。


併用は「最強タッグ」。信頼性の高い装置設計には欠かせない!

✅ ケーブルベアは配線の動きをガイド・保護
✅ ロボットケーブルは高耐久・高柔軟のプロケーブル
✅ 併用することで、それぞれの短所を補完できる
✅ 特に高頻度可動長期連続運転装置におすすめ!

はじめ
はじめ

装置設計の信頼性は、
ケーブルまわりで決まるといっても過言ではありません。

ぜひ、ケーブルベアとロボットケーブルの併用を検討して、
トラブルの少ない可動配線設計を目指してみてください!

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まとめ

ケーブルベアは、機械の可動部におけるケ
ーブルやホースの保護に欠かせない機械要素です。

適切な種類・サイズを選定し、
正しい配置と固定方法を採用することで、
ケーブルの損傷を防ぎ、機械の信頼性を向上させることができます。

最後に、ケーブルベアを選定する際のチェックポイントをまとめます。

使用環境に適した材質を選ぶ(樹脂製 or 金属製)
曲げ半径を適切に設定する(ケーブルの最小曲げ半径以上)
搭載するケーブル・ホースの本数と配置を考慮する
固定部の強度を確認し、ガイドレールなどを活用する
定期的なメンテナンスを実施する

ケーブルベアを適切に活用することで、
機械の長寿命化と安定稼働が実現できます。

ぜひ、設計時にしっかりと選定しましょう!


はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。

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