機械設計において、空圧機器やコンプレッサーを使用する際、
排気処理は作業環境の静音化や清浄化に重要な役割を果たします。
代表的な排気処理装置としてサイレンサー(消音器)と
エキゾーストクリーナー(排気清浄装置)があります。
それぞれの特徴と使い分けについて解説します。
サイレンサー(消音器)の特徴と用途
サイレンサーの特徴
サイレンサーは、空圧機器からの排気音を低減するための装置です。
排気口に取り付けることで、空気が排出される際に
発生する騒音を吸収・拡散し、作業環境を改善します。
コンパクトで、ほとんどの空圧機器に簡単に取り付け可能
用途
- エアシリンダーや電磁弁の排気音を抑える
- 作業現場の騒音対策
- オフィスやクリーンルームなどの静音環境での使用
エキゾーストクリーナー(排気清浄装置)の特徴と用途
エキゾーストクリーナーの特徴
エキゾーストクリーナーは、
排気に含まれる油分やミストを除去するための装置です。
空圧機器の排気には、潤滑油や微細な異物が含まれることがあり、
そのまま排出すると作業環境の汚染につながります。
エキゾーストクリーナーを使用することで、
空気中の油ミストを除去し、環境の清潔性を向上させます。
用途
- 食品工場やクリーンルームなどの清潔な環境を求める現場
- エアブローや空圧シリンダーの排気の油分除去
- 作業者の健康被害を防ぐための環境対策
エキゾーストクリーナーの消音効果とその活用
空圧機器を使用する際、排気音の大きさは作業環境に大きく影響します。
特に、エアシリンダーや電磁弁の排気音は騒音源となり、
長時間の作業では作業者の負担にもなります。
こうした問題を解決するために、
エキゾーストクリーナーが排気の清浄化だけでなく、
消音効果も持っていることはあまり知られていません。
本記事では、エキゾーストクリーナーの消音効果とその活用について詳しく解説します。
エキゾーストクリーナーの基本構造と消音の仕組み
エキゾーストクリーナーは、空圧機器の排気に含まれる
オイルミストや異物を除去する装置ですが、
その構造上、排気音を低減する役割も果たします。
エキゾーストクリーナーの構造
消音の仕組み
排気音は、圧縮空気が急激に大気へ放出される際の衝撃波が原因です。
エキゾーストクリーナーは、以下の仕組みによって消音を実現します。
- 排気の減圧
- 内部のフィルターを通過することで、
排気の勢いを弱め、急激な空気の放出を抑える
- 内部のフィルターを通過することで、
- 音の拡散と吸収
- フィルターや多孔質構造が、
音波を吸収・拡散し、騒音レベルを低減
- フィルターや多孔質構造が、
- 低周波成分の抑制
- 排気音の中でも耳障りな
低周波音(ブワーッという音)を効果的に低減
- 排気音の中でも耳障りな
エキゾーストクリーナーの消音効果の実例
エキゾーストクリーナーの消音効果は、
一般的なサイレンサーと比較しても高い場合があります。
以下のような現場で特に効果を発揮します。
工場の静音化
工場の生産ラインでエアシリンダーを多用する場合、
複数の排気音が合わさり大きな騒音となる
エキゾーストクリーナーを取り付けることで、
平均10〜20dBの騒音低減が可能
結果として、作業者の負担軽減や職場環境の改善につながる
クリーンルームや精密作業環境
クリーンルームでは、
排気の清浄化だけでなく騒音対策も求められる
精密作業エリアでは、音による振動が
製品の品質に影響するため、消音効果が重要
近隣環境への影響軽減
排気音が屋外に漏れると、近隣住民や他の作業者への迷惑となる
エキゾーストクリーナーを使用することで、
周囲環境への騒音影響を軽減
エキゾーストクリーナーとサイレンサーの使い分け
エキゾーストクリーナーとサイレンサーは、
どちらも消音効果を持ちますが、目的と効果範囲が異なります。
| 比較項目 | エキゾーストクリーナー | サイレンサー(消音器) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 排気中の油ミスト除去 & 消音 | 排気音の低減 |
| 消音効果 | 10〜20dB程度低減 | 10〜30dB低減 |
| 使用場所 | クリーンルーム、工場、環境対策が必要な現場 | 一般的な工場 作業現場 |
| メンテナンス | 定期的なフィルター交換が必要 | ほぼ不要 |
| 取り付け | 排気系統のスペースが必要 | 直接装着が可能 |
➡ サイレンサーは「音だけを抑える」装置として使われることが多いですが、
➡ エキゾーストクリーナーは「排気のクリーン化と消音を同時に行う」点が大きなメリットです。
エキゾーストクリーナーの選定ポイント
エキゾーストクリーナーを選定する際には、
以下のポイントを考慮すると適切な製品を選べます。
排気音の低減がどの程度必要か?
騒音が問題になる環境なら、消音効果の高いモデルを選定
排気の清浄度がどこまで求められるか?
食品工場やクリーンルームなら高性能フィルター搭載モデルを選ぶ
メンテナンスのしやすさ
フィルターの交換が容易なものを選ぶと、維持管理が楽
既存の設備との適合性
エアシリンダーや電磁弁の排気口サイズに合わせたモデルを選定
エキゾーストクリーナーで快適な作業環境を実現
エキゾーストクリーナーは、排気の清浄化と消音の両方を兼ね備えた装置です。
特に、騒音と排気汚染が同時に問題となる現場では、
エキゾーストクリーナーの導入が有効です。
作業環境の改善に向けて、適切な製品を選定し、
快適で安全な空圧システムを構築しましょう!
排気処理の注意点:排気量低下と効率低下の影響

空圧機器の運用では、排気処理が重要な役割を果たします。
特に、サイレンサーやエキゾーストクリーナーを使用することで
騒音や排気汚染を抑えることができますが、
これらを適切に選定しないと排気量が低下し、
機械の効率が落ちるという問題が発生します。
本項では、排気量低下が空圧システムに与える影響や、
それを防ぐための適切な選定・対策について詳しく解説します。
排気量低下が機械の動作に与える影響
サイレンサーやエキゾーストクリーナーは、
空圧システムの排気口に取り付けることで、排気音を低減したり、
排気中のオイルミストや異物を除去したりします。
しかし、これらを取り付けることで以下のような影響が発生します。
排気抵抗の増加
サイレンサーやエキゾーストクリーナーには、
排気を制御するための内部構造(多孔質のフィルターや流路)があるため、
排気の流れが妨げられます。
その結果、排気に対する抵抗(バックプレッシャー)が増加し、
空気の流れがスムーズでなくなります。
シリンダーやアクチュエータの動作遅延
排気がスムーズに行われないと、
シリンダーやエアモーターなどの動作が遅くなります。
これは、排気が十分に抜ける前に次の動作が開始されるため、
作動速度が低下することが原因です。
例:シリンダーの動作
圧力損失による消費エネルギーの増加
排気口での抵抗が増えると、システム全体の圧力損失が大きくなります。
その結果、所定の動作を維持するために余分なエネルギーが必要になり、
エアコンプレッサーの負荷増大 → エネルギー消費の増加につながります。
排気の詰まりによる機械トラブル
特にエキゾーストクリーナーでは、フィルターが目詰まりを起こすと、
排気がほとんど流れなくなることがあります。
これにより、以下のようなトラブルが発生します。
サイレンサーとエキゾーストクリーナーの排気量低下の具体例
サイレンサーによる影響
サイレンサーは主に消音を目的としていますが、
内部の構造によっては排気抵抗が大きくなり、
以下のような影響が出ます。
| サイレンサーの種類 | 特徴 | 排気量低下のリスク |
|---|---|---|
| 多孔質サイレンサー | 内部が細かい孔で構成され、 消音効果が高い | 排気が詰まりやすく、 抵抗が大きくなる |
| スリット式サイレンサー | スリット状の開口部を持ち、 排気の流れを確保 | 比較的排気量が確保されるが、 詰まりやすい |
| 大口径サイレンサー | 排気量を確保しつつ 消音する構造 | 排気の流れが比較的スムーズ |
特に、多孔質サイレンサーは長期間使用すると内部が詰まりやすく、
排気量が低下しやすいため、定期的な清掃や交換が必要です。
エキゾーストクリーナーによる影響
エキゾーストクリーナーは、オイルミストや異物を取り除くために
フィルターを通過させる構造になっています。
そのため、フィルターの目詰まりが排気量低下の原因になります。
| タイプ | 特徴 | 排気量低下のリスク |
|---|---|---|
| 標準タイプ | 一般的な排気清浄用 | 定期交換しないと目詰まりしやすい |
| 大容量タイプ | 排気量の多い設備向け | 排気量は確保しやすいが、サイズが大きい |
| 自動排出タイプ | ミストを自動で排出 | 目詰まりしにくいが、高価 |
特に標準タイプのフィルターは、定期的なメンテナンスを怠ると、
急激に排気量が低下するため、注意が必要です。
排気量低下を防ぐための対策
排気処理を適切に行いながら、
排気量低下を防ぐためには以下の対策が有効です。
適切なサイズのサイレンサー・エキゾーストクリーナーを選定する
メンテナンスを定期的に行う
排気の流れを考慮したレイアウトにする
排気処理のバランスが機械効率を左右する
サイレンサーやエキゾーストクリーナーを適切に活用することで、
騒音対策や排気清浄化が可能ですが、
排気量低下による機械効率の低下には注意が必要です。
🔹 排気量低下が発生すると、機械の動作遅延・エネルギー消費増加・トラブルが発生する
🔹 適切な製品選定と定期的なメンテナンスを行うことで、排気量低下を防げる
🔹 排気の流れを考慮した設計が、効率的な空圧システムの構築につながる
機械の性能を最大限に発揮するために、
排気処理と機械効率のバランスを考えた設計を心がけましょう!
まとめ
機械設計における排気処理には、
サイレンサー(消音器)とエキゾーストクリーナー(排気清浄装置)の
2つの選択肢があります。
▶ 騒音低減を目的とする場合はサイレンサーを使用
▶ 排気の清浄化や油ミスト除去が必要な場合はエキゾーストクリーナーを選定
▶ 用途や環境に応じて排気処理を選定し、作業環境の快適性や安全性を向上させることが重要
適切な排気処理を行うことで、作業環境の快適性、
設備の長寿命化、従業員の健康維持につながります。

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。




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