機械設計をする際、意外と見落としがちなのが、
完成後の検査や組立のしやすさです。
「ちゃんと図面通りに加工してもらえば大丈夫でしょ?」
と思うかもしれませんが、
検査しにくい設計や組み立てにくい部品構成は、
トラブルやムダな工数の原因になります。
この記事では、切削加工における「検査性」と「組立性」の観点から、
設計時に考慮すべき工夫を初心者にもわかりやすく解説します。
組立性とは?なぜ重要?
組立性とは、加工された部品が
「スムーズに組み立てられるように設計されているか」という視点です。
どんなに寸法通りに作られた部品でも、
組み付けにくい構造では工数がかかり、傷や不良のリスクが高まります。
組立性を高める設計の工夫7選
① 面取り(ガイド)形状をつける
穴にシャフトを入れる、ねじを通す、ピンを差す——
これらをスムーズに行うために、角に面取りやテーパ形状を設けましょう。
✅ 特に嵌合部や差し込み部には必須!
② 左右対称・上下対称の部品はあえて非対称にする
見た目が左右対称だと、組み間違いが起きやすくなります。
それを防ぐため、一部だけ形状を変える(ノックアウト)などの工夫が有効です。
③ ねじ締めがしやすい向き・位置にする
ドライバーや電動工具が入らない場所にねじを配置してしまうと、
締め付けに無理が出て不具合の原因になります。
④ ねじ長さや工具サイズを統一する
部品ごとにねじの長さや呼び径が異なると、
組立現場でのねじ間違いや工具交換の手間が増えます。
⑤ 一方向から組立できる構造にする
「上から順番に組めば完成!」という単方向組立が理想です。
部品の抜け止めや順番ミスを防ぐことができます。
⑥ 組立用の位置決めピンやインローを設ける
部品同士のズレや位置ズレを防ぐために、
ダウエルピン穴や位置決めのインローを用意すると良いです。
⑦ 組立ミスを未然に防ぐ“ポカヨケ設計”を取り入れる
例えば、「逆にしか入らない」ように形状を工夫すれば、人的ミスを未然に防げます。
検査性とは?なぜ重要?
検査性とは、加工後の部品が「正しくできているかどうか」を
確認しやすい設計になっているか、という視点です。
例えば…
こういったものは、検査ができずに不良が見逃される可能性があります。
検査性を高める設計の工夫7選
① 測定しやすい場所に寸法を配置する
ノギスやマイクロメータ、三次元測定機などがアクセスしやすい場所に、
重要な寸法や穴を配置するのが鉄則です。
🔍 たとえば、、、
② 基準面・基準穴を明確に設定する
検査では「どこから何mmあるか」が重要になります。
設計時に測定の起点(基準)をしっかり決めておくことで、
測定ミスや不具合を防げます。
③ ノギスやプローブが入る逃げを作る
例えば、奥まった穴や隅の寸法は、測定工具が入らないことがあります。
そこで、検査用の“測定逃げ”を設けると便利です。
④ 面粗さや公差の指定は必要最小限に
「一応すべてRa3.2にしておこう」「公差±0.01なら安心でしょ」などは、
検査工程の負担を大きくします。
必要な場所だけに明確な根拠で指定することが大切です。
⑤ 三次元測定機を想定した設計も有効
複雑な形状や曲面は、三次元測定機でしか測れないことがあります。
その際、設置や固定がしやすいような面構成や基準位置を考えて設計するのもポイントです。
⑥ 検査治具の作りやすさを意識する
治具(じぐ)とは、部品を固定して正確に測るための台座のようなものです。
形状や穴位置が複雑すぎると、
治具設計が大変になり、検査が後回しになりがちです。
⑦ 検査記録を想定した寸法指示にする
検査結果は記録として残すことが多く、
項目数が多すぎる図面は敬遠されます。
寸法数や重要項目を絞ることで、
検査者にやさしい図面になります。
組立性・検査性を意識すると、何が変わる?
| 効果 | コンテンツ |
|---|---|
| コストダウン | 検査や組立にかかる時間が減り、工数が下がる |
| 品質向上 | 測定しやすく、組立しやすいことで不良品が減る |
| 納期短縮 | 検査や組立でのトラブルが減り、スムーズに製品化できる |
| 現場からの信頼 | 加工や組立を担当する人から「設計がわかってる!」と喜ばれる |
まとめ
切削加工の設計では、図面どおりに削るだけでなく、
「その後どう測るか?」「どう組み立てるか?」まで考えることが大切です。
初心者のうちは見落としがちですが、
検査性と組立性を意識した設計ができるようになると、
一気に“現場目線の設計者”へと成長できます。
✅ 設計時に自問してみよう!

こうした小さな配慮が、品質・納期・コストの改善につながります。
ぜひ次回の設計から、取り入れてみてください。


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