機械設計において「図面を書くこと」と同じくらい重要なのが、「図面を検図すること」です。
どんなに経験豊富な設計者でも、図面ミスは必ず発生します。
このミスを未然に防ぐために、第三者が冷静に図面をチェックする作業=「検図(けんず)」が必要不可欠です。
この記事では、
✔ 検図の目的
✔ 検図で見るべき具体的なポイント
✔ 検図を効率化するコツ などを、たっぷり解説していきます!
検図とは何か?その目的
検図とは、作成した図面を第三者または本人がチェックし、誤りを発見・是正する作業のことです。
検図の目的は大きく分けて3つあります。
目的 | 内容 |
---|---|
図面ミスを防止する | 寸法間違い、材料ミス、穴位置ズレなどを発見する |
製造・組立ミスを防ぐ | 現場での手戻り、加工ミス、組立不能を防ぐ |
製品品質とコストを守る | 不良品や無駄な加工コストの発生を防止 |

検図は単なる「ダブルチェック」ではなく、「製品の完成度を上げるための最後の砦」だと考えましょう!
検図のタイミング
図面検図は、以下のタイミングで行うのが基本です。
✅ 図面完成後すぐ
✅ 発注・製造前
✅ 設計変更後
特に注意すべきは「設計変更後」です。
一部を直したつもりでも、他の関連部分に影響を及ぼしているケースが多々あるからです。
検図でチェックすべきポイント【一覧表】
ここでは、実際の検図で見るべき項目を具体的に整理します。
チェック項目 | チェック内容 | ポイント |
---|---|---|
寸法関係 | 全体寸法・部分寸法が整合しているか | 寸法公差も忘れずに |
部品干渉 | 組立後、干渉しないか | 動作クリアランスも確認 |
材質・表面処理 | 指示漏れ・誤記載がないか | 熱処理・表面処理も重要 |
ねじ仕様 | ネジ径・ピッチ・深さが正しいか | 特にタップ指示の深さ注意 |
投影法・表現法 | 第三角法・線種が正しいか | 投影方向マークの有無も |
加工方法の適正 | 加工困難な形状になっていないか | 極端な深穴、薄肉など注意 |
公差設定 | 必要な場所に適切な公差が入っているか | 不要な高精度指定に注意 |
記号・注記 | 幾何公差、溶接記号、表面粗さ記号の記載 | 記号の意味も正確に |
図面表題欄 | 品名、材質、数量、縮尺、設計者名などの記載 | 図番管理ミスに注意 |
関連図面との整合性 | 組立図・部品図間で整合が取れているか | 一箇所変更で整合ズレ注意 |
この表を使って、一つ一つ丁寧に確認していきます。
検図を効率よく進めるコツ
検図は時間も集中力も使うため、効率よく・確実に進めるコツがあります。
コツ①:チェックリストを使う
検図専用のチェックリストを作り、毎回それに沿って確認することで、漏れ防止になります。
コツ②:役割分担する
- 寸法・公差専門
- 干渉チェック専門
- 材質・表面処理専門
など、複数人で役割分担すると、短時間で高精度な検図が可能です。
コツ③:実物イメージを持つ
図面だけを見るのではなく、実際に部品ができたと仮定して想像すると、違和感やミスに気づきやすくなります。
コツ④:紙出力も活用する
最近はCAD画面上だけで検図することが増えていますが、紙に印刷してチェックするとミス発見率が上がります。
検図で見逃しやすいミス【注意点】
初心者・ベテラン問わず、見逃しやすいミスには共通パターンがあります。
ミス例 | 説明 |
---|---|
面取り指示忘れ | 加工しやすくするための面取りが抜けている |
重複寸法記載 | 同じ寸法を2ヶ所以上に記載している |
公差抜け | 重要寸法に公差が入っていない |
特殊形状の加工指示不足 | 曲げ加工、溶接部などの詳細指示が足りない |
隣部品との組立性考慮漏れ | 工具が入らない設計になっている |

「自分は大丈夫」と思わず、意識して見直すことが大切です。
3DCADでの検図とは?ミスを防ぐ効果的なやり方を徹底解説!
機械設計において、3DCAD(3次元CAD)を使うことが当たり前の時代になりました。
立体的にモデルを作成することで、設計ミスを減らせるのが大きなメリットですが、
3Dモデルであっても、検図は必須です。
むしろ、3Dだからこそ見落としやすいミスも存在します。
本項では、
- 3DCAD検図の目的
- 3DCAD特有の検図ポイント
- 効率的な検図のやり方 を詳しく解説していきます!
3DCADで検図をする目的とは?
3DCAD検図の目的は、大きく言うと次の3つです。
目的 | 内容 |
---|---|
モデル形状ミスの防止 | 部品の干渉・不足・寸法違いを発見する |
図面化ミスの防止 | 2D図面への展開時に発生する表現ミスを防ぐ |
製造性・組立性の確認 | 実際に加工・組立できるかを立体的に確認する |
「3Dモデル=正しい」と思い込まず、
しっかりと確認作業を行うことが非常に重要です。
3DCAD検図で特に重要なチェックポイント
3DCAD検図では、以下の点を重点的に確認する必要があります。
モデル形状の整合性
- 寸法ミス(長さ、厚み、穴位置など)
- 面取り・フィレット(角R)の漏れ
- 壁厚・肉厚の過不足
- 抜き勾配忘れ(樹脂成形部品など)
- 穴・ネジ穴の形状、深さ、貫通確認
実体イメージとモデル形状を必ず照らし合わせましょう。
部品間の干渉チェック
3Dモデルなら、「干渉チェック機能」を使うことができます!
- ボルトが他部品に当たっていないか
- 可動部がぶつからないか
- 組立クリアランスが確保されているか
特に、組立工程を想定して動かしてみると、
思わぬ干渉や組立不能に気づくことがあります。
アセンブリミスの検出
3Dモデルは、部品を組み合わせた「アセンブリデータ」で確認できますが…
- 部品の入れ忘れ
- 位置ズレ
- 取り付け角度間違い などが起こりやすいです。
仮組立を想定して順番に組んでみるのが効果的です。
図面化に向けた情報確認
3Dモデルから2D図面を出力する場合も注意!
- モデルに寸法・公差・表面粗さが適切に割り当てられているか
- 部品番号、材料、表面処理などの属性が正しく設定されているか
モデル情報がそのまま図面に反映されるので、
ここで間違っていると、製造現場に大混乱を起こします。
ファイル管理・リビジョン管理
3DCADでは、ファイルが複雑にリンクされています。
- 部品ファイル(.prt、.sldprtなど)
- アセンブリファイル(.asm、.sldasmなど)
- 図面ファイル(.drw、.slddrwなど)
検図時には、
- ファイルリンク切れ
- 古いリビジョンの混在 に注意が必要です。
PLM(製品ライフサイクル管理)システムなどを使って、管理ルールを徹底しましょう。
3DCAD検図を効率化するテクニック
3Dならではの効率的な検図方法もあります。
セクションビュー(断面表示)を活用
モデルを任意の位置で切断し、内部構造をチェックできます。
見えない部分の確認には断面表示が超便利です!
透過表示・ワイヤーフレーム表示を使う
3Dモデルを透明にして、
- 内部パーツの位置
- 配線・配管の取り回し を確認できます。
3D寸法(PMI)を活用する
最近の3DCADでは、モデル上に寸法や公差情報(PMI)を直接付けることができます。
「図面を起こさずに3Dだけで検図」も可能な場合があります!
3Dレビュー会を実施する
一人で検図するのではなく、
チームで3D画面を見ながら検図する「3Dレビュー会」を開くと効果的。
- 設計者
- 製造担当者
- 品質保証担当者 など、立場の違うメンバーで見ることで、見落としを防げます。
3DCAD検図でやりがちな失敗例
失敗例 | 解説 |
---|---|
3Dモデルだけ見て安心してしまう | 寸法間違いや公差不足は3D上では気づきにくい |
干渉チェックだけで終わる | 部品の向き、組立順序までは確認できない |
ファイルバージョン管理ミス | 古いファイルで検図して、最新版でズレが出る |
図面展開時の情報設定漏れ | モデル属性不足で図面に重要情報が載らない |
「モデルがあるから大丈夫」と思わず、
冷静に慎重に確認することが大切です!
3DCAD検図は、2D時代よりも
✔ 立体的に把握できる
✔ 干渉チェックできる
✔ 効率よく検図できる といった大きなメリットがあります。
ただし、油断すると
🚫 寸法ミス
🚫 図面情報不足
🚫 ファイル管理トラブル など、別の落とし穴もあるので注意が必要です。
✅ モデル形状・干渉・アセンブリ・図面情報を徹底確認
✅ セクションビュー、透過表示、PMI、3Dレビュー会を活用
✅ チェックリストを作って漏れを防ぐ

これらを意識して、「ミスゼロの設計」を目指していきましょう!
まとめ
機械設計における図面検図とは、
✔ 製造ミスやコスト超過を未然に防ぐ
✔ 製品品質を守る ために、絶対に欠かせないプロセスです。
▶ 寸法、材質、表面処理、干渉、ねじ仕様、記号などを細かくチェック
▶ チェックリスト・役割分担・紙出力を活用して効率化
▶ 「実物をイメージする」ことが最大のコツ
設計者として、図面を描く技術だけでなく、図面を正しく検図する力を磨くことが、
本当に信頼される技術者への第一歩です!
ぜひ、この記事を参考にして、
「検図力」をどんどんレベルアップさせていきましょう!
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