機械設計で部品を作るとき、「加工が大変そうだな」と思ったことはありませんか?
その悩みの多くは、工数や段取りの多さに原因があります。
この記事では、切削加工において「加工工数」や「段取り替え」を減らすための設計の工夫を、初心者にもわかりやすく10項目に分けて解説します。
1. 片側から加工できる形状にする
加工機に一度セットしたら、裏返さずにすべて加工できる形状が理想です。
裏表がある形状や、横方向にも加工が必要な場合、段取り替え(治具の付け直し)が必要になります。
✅ 工夫ポイント
- 基本的に「片面加工」で完結するような構造にする
- 穴は貫通にして、両面からの加工を避ける
2. ワンチャックで加工できる寸法にする
旋盤やマシニングでは、チャッキング(固定)できる寸法範囲が決まっています。
長すぎたり、大きすぎたりすると、固定を変えて何度も段取りしなければなりません。
✅ 工夫ポイント
- チャック内径や把持長に収まるサイズを意識する
- 分割設計や2ピース構造にして対応する
3. 標準工具だけで加工できるようにする
特殊な形状や深穴、小径すぎる穴などは、特注工具や細いエンドミルが必要になり、工具交換・プログラム変更が増えます。
✅ 工夫ポイント
- 穴径はM6・M8など汎用サイズにする
- 溝や段差も標準エンドミル径で加工できる寸法に設計する
4. 加工面の向きをまとめる
部品の各面に加工が分散していると、加工機を何度も回転・傾ける必要があり、工数が増えます。
✅ 工夫ポイント
- 可能な限り、加工面を同一方向に集約
- 例:上下だけで完結する形状にする
5. 穴ピッチや位置は整数にそろえる
複数穴が等間隔で配置される場合、10mm・50mm単位などの整数ピッチが理想です。
CAD/CAMでの作業効率が上がり、プログラムもシンプルになります。
✅ 工夫ポイント
- ピッチや配置を10mm単位などに統一
- 座標系も原点からわかりやすい数値にする
6. 同一工程内で完結する設計にする
工程を分けなければならないような部品(例:溶接後に仕上げ、後加工が必要な段付き部品)は、段取り回数が増加します。
✅ 工夫ポイント
- 1回のセッティングで全加工が終わるように設計
- 加工後の組立・後処理を最小限に抑える
7. 一体加工ではなく分割構造を活用する
複雑な一体部品を無理に加工しようとすると、5軸加工機や治具変更が必要になることもあります。
それよりも、複数部品に分けて簡単な形状にして組み立てる方が効率的です。
✅ 工夫ポイント
- 難しい部分は別部品としてねじ止め・ピン止めする
- 組立で精度が出せる構造を考える
8. テーパや面取りを標準角度にそろえる
面取りやテーパーを自由な角度にすると、工具変更や特殊工具が必要になります。
✅ 工夫ポイント
- 面取り角度は45°に統一
- テーパーも標準の角度(7°、10°など)に揃える
9. 溶接・焼入れ・表面処理後の追加加工をなくす
表面処理後の穴あけや、焼入れ後の仕上げ加工は、精度が出にくく、段取りも複雑になります。
✅ 工夫ポイント
- できるだけ前加工で完了させる設計
- 焼入れ・メッキは形状の仕上がり後に一括処理できるように
10. 同一部品は同じ形状にそろえる
複数個ある部品で、寸法が微妙に異なると、加工プログラムがすべて別になって手間が増えます。
✅ 工夫ポイント
- 同種部品は、可能な限り同一サイズ・形状にする
- 左右対称部品も、上下反転で同じ加工が使えるように設計する
まとめ:加工者目線で考える設計がカギ!
加工工数や段取りの多さは、コストアップや納期遅延の原因になります。
「加工者だったらどうする?」という視点で図面を見直すだけで、段取り回数や工程数を大きく減らせることもあります。
図面を描くときは、「これは何回セットし直せば加工できるか?」を自問してみてください。
それが、「加工しやすい設計」への第一歩です!
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