機械設計では、部品の選定や構造設計だけでなく、「どのように動かすか」も重要です。機械を適切に動作させるには、モーターやシリンダーなどの動力源を電気制御でコントロールする必要があります。
この電気制御を理解するうえで、ラダー回路(ラダープログラム)は非常に重要な役割を果たします。本記事では、機械設計における電気制御の基本と、ラダー回路を理解するメリットについて、初心者向けに分かりやすく解説します。
動力をどのように制御するかを理解することの重要性
機械は単にモーターやシリンダーを取り付ければ動くわけではありません。どのタイミングで動作させるのか、どの条件で停止するのかを制御する必要があります。
例えば、工場のコンベア装置を考えてみましょう。
✅スタートボタンを押すと動作開始
✅一定の時間が経過すると停止
✅センサーがワークを検出したら、次の工程へ進む
このような動作の流れを決めるのが電気制御です。

適切に制御することで、機械の安全性や効率が向上し、無駄な動作を防ぐことができます。
電気制御と機械設計の関係性
機械設計は、単に部品を組み合わせるだけでなく、どのように動作させるかを考えることも含まれます。特に、以下のような要素は、機械設計と電気制御の両方を理解しているとスムーズに進みます。
✅ モーターのON/OFF制御
スイッチを押したら動作、離したら停止するシンプルな制御から、タイマーやセンサーを使った複雑な制御まで設計可能。
✅ エアシリンダーの動作制御
空気圧を利用したシリンダーの制御では、電磁弁をどう配置するかが設計に影響。
✅ センサーとの連携
物体の有無を検知して動作する機構では、センサーの配置やラダー回路の工夫が必要。
このように、機械設計と電気制御は密接に関係しているため、電気制御の基礎を知っておくことは機械設計者にとって大きなメリットになります。
ラダー図を理解するメリットと、理解していないと困るデメリットとは?
機械設計をするうえで、「ラダー図は電気担当の仕事」と考えがちですが、機械設計者も基本を理解しておくと設計の質が向上します。
特に、動力をどのように制御するかを理解することは、機械の動きをスムーズにし、無駄な部品を減らすために重要です。
本項では、「ラダー図を理解することで得られるメリット」と「理解していないと困るデメリット」を初心者向けにわかりやすく解説します。

ラダー図を理解することで得られるメリット
✅ センサーやスイッチの最適な配置ができる
→ 必要最低限のセンサーで機械を動かせる!
ラダー図を活用すれば、PLC内部のメモリやタイマーを使うことで、センサーの数を減らしながら正確な制御が可能になります。

例えば、「シリンダーの前進完了をセンサーではなくタイマーで判断する」など、工夫できる点が増えます。
✅ 設計段階で制御の流れを考えられる
→ 無駄な配線・部品が減り、スムーズな設計ができる!
機械の動きを想定した設計ができるため、「設計後に制御の変更が必要になる」といったトラブルを減らせます。
✅ 電気担当者との連携がスムーズになる
→ 機械と電気のすり合わせがしやすくなる!
ラダー図を理解していると、電気担当者と「どう制御するか」の会話がスムーズになり、設計の手戻りが減ります。
✅ 機械トラブルの原因を特定しやすくなる
→ トラブル時の対応が早くなる!
機械の動作不良が発生したとき、「センサーの故障か? ラダー回路のロジックミスか?」を素早く判断できるようになります。
✅ 量産設計時にコストを抑えられる
→ 無駄な部品を減らし、コストダウンにつながる!
センサーやスイッチを減らせるため、コスト削減が可能になります。量産設計では1つの部品コストが積み重なるため、大きなメリットになります。
ラダー図を理解していないと困るデメリット
🚫 センサーやスイッチが無駄に増えてしまう
→ コストが上がる&配線が複雑になる!
ラダー図の役割を理解していないと、「とにかくセンサーを増やせば安全」となり、無駄な部品が増えてしまいます。
🚫 機械の動作が想定通りにならないことがある
→ 「設計通りに動かない」と電気担当者から指摘される!
例えば、「シリンダーが戻る前に次の動作に移行してしまう」など、ラダー回路の設計と機械の動きが合わなくなることがあります。
🚫 設計変更が増えて手戻りが多くなる
→ 電気制御を後回しにすると、修正が多くなる!
機械の設計段階でラダー図を考えていないと、後で「この動きには追加のスイッチが必要」となり、再設計が発生します。
🚫 トラブル発生時に機械設計者が対応できない
→ 「機械は正常だけど動かない」トラブルが増える!
機械は正しく作られていても、ラダー図のロジックミスで動かないことがあります。この場合、ラダー図を理解していないとトラブル対応に時間がかかります。
🚫 機械と電気のすり合わせが難しくなる
→ 「設計者の意図が伝わらない」と電気担当者が困る!
ラダー図を考慮せずに設計すると、「どのタイミングで動作するか?」が明確でなく、電気担当者が回路設計しにくくなります。
🔍 ラダー図を理解するメリット
✅ 最適なセンサー配置ができる(無駄な部品を減らせる)
✅ 制御の流れを考えた設計ができる(手戻りが少なくなる)
✅ 電気担当者との連携がスムーズになる(設計変更が減る)
✅ トラブルの特定が早くなる(機械設計者も原因が分かる)
✅コストダウンにつながる(量産時に大きなメリット)
🔍 ラダー図を理解していないと困るデメリット
🚫 無駄なセンサーやスイッチが増える(コストが上がる)
🚫 機械の動作が想定通りにならない(手戻りが多くなる)
🚫 設計変更が増えて時間がかかる(制御後回しのツケが回る)
🚫 トラブル時に原因が分からない(対応が遅れる)
🚫 電気担当者と意思疎通が難しくなる(設計のすり合わせが大変)
ラダー図は、電気制御を担当する人だけでなく、機械設計者も基本的な知識を持っておくことで、より効率的で無駄のない設計ができるようになります。

「ラダー図は難しそう…」と敬遠せず、まずは基本的な記号や動作ロジックを理解するところから始めてみましょう!
ラダー図を理解することで、機械全体の設計がスムーズになる
機械を制御するための回路は、「リレー回路」と「PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)」の2つの方法があります。現在は、PLCを使うことが主流となっており、そのプログラムを視覚的に表現したものが「ラダー図」です。
ラダー回路図は、電気回路をはしご(Ladder)のような形で表現し、リレーの動作を分かりやすく図式化したものです。
🔍 ラダー図を理解するメリット
- 機械の動作をイメージしやすくなる
- ボタンを押したときの動作の流れが明確になる。
- 電気担当者とスムーズにやり取りできる
- 設計者と電気制御担当者が同じ回路図を見ながら打ち合わせができる。
- トラブルシューティングがしやすい
- 機械が動かないとき、どの部分が原因かを特定しやすくなる。
例えば、シンプルなモーターのON/OFF制御をラダー回路で表すと、以下のようになります。

押しボタンがONになると、モーターが回転するシンプルな制御です。さらに、自己保持回路を組み込めば、スイッチを一度押すだけでモーターが動作し続けるようにできます。
まとめ
✅ 機械設計では、動力の制御方法を理解することが重要
✅ 電気制御と機械設計は密接に関係しているため、制御を考慮した設計が求められる
✅ ラダー回路図を理解すると、機械全体の設計やトラブル対応がスムーズになる
機械設計をするうえで、電気制御を全て把握する必要はありませんが、基本的な仕組みを理解しておくことで、より良い設計が可能になります。これを機に、ラダー回路について学んでみてはいかがでしょうか?
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