部品の軽量化やコスト削減のために、よく使われるのが「肉抜き」や「中空形状(中を空洞にする)」の工夫です。
でも、むやみに肉を抜けば良いというわけではありません!
形状のバランスが悪いと、加工しづらくなったり、変形・破損しやすくなったりします。
なぜ肉抜きをするの?
- 部品を軽くしたい
- 見た目や放熱性などを改善したい
👉 こういった目的で、穴を開けたり、中をくり抜いたりすることが「肉抜き」です。
肉抜きの落とし穴
🚫 複雑な形状にすると…
- 加工が難しくなり、コストアップ
- 細かい部分のバリ処理や仕上げが大変
- 工具が入りにくくなり、加工時間が増える
🚫 壁が薄くなりすぎると…
- 加工中に変形しやすくなる
- 強度が足りずに、使用中に破損の原因になる
コツ①:シンプルな形状で肉抜き!
基本は「丸穴」といったシンプルな形状で行うのがベストです。
- 加工しやすい(工具で簡単に削れる)
- 強度のバランスが取りやすい
- 加工時間やコストも抑えられる
コツ②:対称配置でバランスよく!
肉抜きは左右対称・上下対称など、バランスよく配置するのが鉄則です。
悪い例 | 良い例 |
---|---|
片側だけに穴を集中 | 左右に均等に穴を配置 |
壁の厚みが極端に違う | 均一な肉厚になるように設計 |
バランスが悪いと、加工中の振動や変形、完成後の強度不均衡につながるおそれがあります。
応用ポイント:補強リブやコーナーのRも忘れずに!
- 中抜きの形状によっては、補強リブを入れて強度を保つ
- コーナーにR(丸み)をつけて、応力集中を防ぐ
これだけでも、ぐっと安心な設計になります。
肉抜きによる“重心ズレ”が振動の原因に!
部品を軽くするために「肉抜き(中抜き)」を行う設計はよくありますが、バランスの悪い肉抜きは思わぬトラブルの原因になることがあります。
その代表例が、重心のズレによる振動です。
なぜ肉抜きで振動が起きるの?
肉抜きとは、部品の不要な部分を取り除いて軽量化やコスト削減を狙う手法ですが、削る位置が片寄ると重心もズレてしまいます。
特に以下のようなケースでは問題になりやすいです。
- 回転する部品(ローラー、シャフト、フライホイールなど)
- 高速で動く部品
- 部品全体の形状が非対称
重心がずれると、回転中に遠心力が片側に偏り、振動やブレを引き起こします。これが長時間続くと…
🚫 軸受(ベアリング)が早く摩耗する
🚫 ネジや締結部が緩む
🚫 装置全体の寿命が短くなる
といった問題につながることも。
対策①:対称に肉抜きする
一番の基本は、「左右対称や上下対称になるように肉抜きを設計する」ことです。
重心が中心に近づくため、回転バランスが取りやすくなります。
✅ 丸穴を同じピッチで配置する
✅ 左右で同じ形状・寸法で削る
対策②:CADで重心確認する
最近の3D CADでは、部品の重心を表示する機能があります。
設計の段階で重心の位置をチェックして、中心軸と重心が一致しているか確認しておくと安心です。
対策③:バランス調整(バランス取り)
どうしても左右対称にできない場合は、「バランス取り(ダイナミックバランス)」を行うことがあります。
具体的には、
- バランスウエイト(おもり)を追加する
- 回転体の一部を削って質量を調整する
など、重心が中心軸上に来るよう調整します。
肉抜きは軽量化だけでなくバランスも考える
注意点 | 内容 |
---|---|
肉抜きの位置で重心がズレる | 振動・異音・早期破損の原因に |
対称形状を意識する | 左右・上下対称に肉抜きを配置 |
CADやシミュレーションで確認 | 重心を可視化して事前に対策 |

肉抜きは単なる軽量化手段ではなく、バランス設計の一部です。
特に回転する部品では、「振動を出さない肉抜き」が重要です。
中空構造には「角パイプ」「中空シャフト」が便利!
部品の軽量化やコストダウンを考えるときに、有効な方法のひとつが中空構造(中が空洞の構造)です。
その代表例が「角パイプ」や「中空シャフト」。
実はこれら、市販の材料としてすでに軽くて強い構造になっており、効率よく設計できる便利な選択肢です!
なぜ中空構造が良いの?
中を空洞にすることで、以下のようなメリットがあります。
✅ 重量を大きく削減
✅ 材料コストの節約
✅ 応力分布がよく、変形しにくい
✅ 見た目もスッキリ、省スペース化に有効
よく使われる中空部品の例
部品名 | 特長 | 用途例 |
---|---|---|
角パイプ | 四角形の中空断面。 曲げに強く、取り付け面も安定 | フレーム、架台、カバーなど |
中空シャフト(丸パイプ) | 軽くてねじれにも強い | 回転軸、搬送ローラーなど |
ポイント①:角パイプは構造部材に最適!
角パイプは断面が四角形の中空材です。
- 外形はしっかりしていて曲げに強く
- 内部が空洞なので軽量
- 外周がフラットなので部品の取り付けや溶接もしやすい
ミスミや市販材料にも豊富にラインナップがあり、設計の時短にもつながります。
ポイント②:中空シャフトで軽量&高剛性!
回転体や軸部に「中空シャフト」を使えば、中身の無駄な材料を省けて軽量化できます。
しかも、曲げやねじりに対する強度は意外と高く、多くの装置で実績があります。
例:搬送装置のローラー、ロボットアームの関節軸など
肉抜きするより、中空材を使うのが合理的!
もちろん、ブロック材を削って肉抜きしても中空形状は作れますが…
✅ 工数がかかる
✅ 工具が入らず加工しにくい
✅ コストが高くなる

だったら、最初から中空の材料を選ぶ方が早くて安い!
特に量産や装置フレームなどでは、「角パイプで構造設計する」ことが定番です。
ポイント | 内容 |
---|---|
中空構造は軽量&高剛性 | 肉抜きよりスマートに軽くなる |
角パイプは構造材に便利 | フレームや架台に最適 |
中空シャフトは軸に使える | 軽くてねじれにも強い |
加工の手間を減らし、設計もスムーズにするには、はじめから「中空材」を使う発想が重要です。
「削って中空にする」のではなく、「中空材を選んで使う」という考え方を、設計に取り入れてみましょう!
まとめ
ポイント | 内容 |
---|---|
シンプルな形状で | 丸穴が基本 |
バランスよく配置 | 左右対称・上下対称に配置 |
加工性と強度を考慮 | 壁が薄くなりすぎないよう注意 |
肉抜きや中空形状は、見た目や軽さだけではなく、加工のしやすさや強度バランスを意識することが重要です。
初心者の方も、まずは「シンプル・対称・厚み確保」を意識して設計してみましょう!
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