現地据付・試運転とは?納入後の重要ステップをわかりやすく解説!

図面・CAD

機械設計における最終フェーズとして欠かせないのが「現地据付・試運転」です。これは、設計・製作を終えた機械をお客様の現場に設置し、正常に稼働するかどうかを最終確認する作業です。

一見、単純な作業に見えるかもしれませんが、実はトラブルが起こりやすいタイミングでもあります。この記事では、現地据付から試運転までの流れと、初心者が気をつけるべきポイントについてわかりやすく解説していきます。


スポンサーリンク

現地据付・試運転の全体の流れ

現地での作業は、大まかに以下の流れで進められます。

  1. 墨出し(すみだし):設置基準の位置出し
  2. 機械の搬入
  3. 機械の据付(位置決め・アンカーボルト固定・水平出しなど)
  4. 電源・配線の接続
  5. 各部の最終チェック
  6. 試運転(お客様立会い)
  7. 操作説明と取扱説明書の引き渡し

以下で、それぞれの工程について詳しく解説します。


墨出しとは?設置精度を左右するスタート地点

「墨出し」とは、床に設置位置の基準線を引く作業のことです。
建設業や機械設置ではおなじみの工程で、機械の据付位置を正確に決めるための最初の一手です。

墨出しの目的

  • 正確な設置位置の確定
  • 複数台の機械の整列・直角出し
  • アンカー打設や配線の準備

よく使われる道具

  • レーザー墨出し器(視認性と精度が高い)
  • チョークライン・墨つぼ(アナログだが手軽)
  • スケール・水糸(距離と平行の確認用)

墨出しが正確でなければ、後工程すべてにズレが生じてしまいます。
そのため、熟練の作業者は最初の墨出しに最も時間をかけるほど重要視している作業です。

スポンサーリンク

機械の水平出し・設置

概要

搬入された機械は、指定された設置場所に正確に据え付ける必要があります。
その際に重要なのが「水平出し」です。

なぜ水平が重要?

  • 機械が傾いていると、ベアリングやスライド部に偏荷重がかかり、早期故障の原因になります。
  • 自動搬送ラインなどでは、わずかな傾きが製品不良や停止につながることもあります。

作業内容

  • 水準器(レベル)を使って水平を確認。
  • 必要に応じてレベリングパッドやシムで微調整。
  • アンカーボルトで基礎にしっかり固定。

注意点

  • 設置環境の床が完全に水平とは限らないため、調整は現場で柔軟に行う必要があります。
  • レベリングは複数の測定ポイントで行い、全体が水平になっていることを確認します。

電源や配線の接続

概要

次に行うのは、機械と電源・制御盤との接続作業です。設計図面をもとに、モーターやセンサー、シーケンサ(PLC)などの配線を行います。

作業内容

  • 電源ケーブルの接続(3相AC、単相など)
  • アースの接続
  • 制御信号線、センサー類の接続
  • 空気圧・油圧の配管がある場合は、配管接続も行います

注意点

  • 通電前には、絶縁抵抗の確認を必ず実施しましょう。
  • 誤配線は故障や火災の原因になるため、結線チェック表を活用して確認。
  • 接地(アース)は必ず行い、感電やノイズ障害を防止。

スポンサーリンク

各部の最終チェック

概要

配線が完了したら、機械が正常に動作するかを確認するために各部の最終点検を行います。

チェック項目の例

  • 締結部(ボルト・ナット)の緩み確認
  • 配線・配管の接続ミスや接触不良
  • 各センサーやアクチュエーターの動作確認
  • 安全装置(非常停止・セーフティカバー等)の機能確認

注意点

  • 機械設計においては「安全」が最優先です。安全装置の確認は徹底しましょう。
  • 動作確認では、「単動作→連動作→自動運転」のように、段階的に進めるのが基本です。

お客様立会いの試運転

概要

基本的な動作確認が済んだら、お客様立会いのもとで本格的な試運転を行います。
実際の製品やワークを使って連続運転を行い、仕様通りに動くかを検証します。

試運転の目的

  • 図面や仕様書通りの性能が出ているか確認
  • 作業者の動線や操作性の確認
  • お客様が実運用に向けて理解を深める場

注意点

  • 試運転中に予期せぬトラブルが発生することもあります。その場で即対応できるよう、予備部品や工具を準備しておきましょう。
  • 不具合が出た場合は、原因調査と対応方針の説明を丁寧に行うことが信頼につながります。

スポンサーリンク

操作説明・取扱説明書の引き渡し

概要

最終ステップとして、機械の操作方法やメンテナンス方法をお客様に説明します。また、取扱説明書などの書類一式もこのタイミングで引き渡します。

説明のポイント

  • 操作パネルの使い方
  • ワークのセット方法や段取り替えの手順
  • トラブル時の対応方法(エラーリセットなど)
  • 定期メンテナンスの頻度と手順
  • 安全上の注意事項(作業中の禁止事項など)

注意点

  • 操作説明では、作業者のレベルに応じた言葉遣いで説明することが重要です。
  • 安全に関する説明は必ず丁寧に行い、「万が一の対応」も伝えておきましょう。
  • 説明書は可能であればイラストや写真付きでわかりやすく。

まとめ:据付・試運転は「品質」と「信頼」を決める最後のステージ

現地据付・試運転は、機械設計者にとって「最後の関門」とも言える重要な工程です。トラブルが起こりやすいタイミングである一方で、お客様との信頼関係を築く大きなチャンスでもあります。

以下に注意点を再度まとめます。

✔️ 設置の水平出しは、機械寿命に直結する重要作業
✔️ 配線ミスや安全装置の未確認に要注意
✔️ 試運転時にはトラブルが発生しやすいが、柔軟な対応が信頼につながる
✔️ 操作説明は、安全面を中心に丁寧に伝える

据付・試運転を確実に進めることで、機械の真価を最大限に発揮でき、お客様満足度の向上にもつながります。ぜひ設計の一環として据付まで意識し、準備を万全に整えて臨みましょう。


コメント