機械設計における「応力」とは?初心者向け解説!

力学

機械設計を学ぶ上で、「応力(おうりょく)」という言葉はとても重要です。応力とは、物体に外力が加わったとき、材料内部に発生する力のことを指します。適切な設計をするためには、どのような応力が発生するのかを理解することが不可欠です。

本記事では、初心者の方にもわかりやすく、「応力」の基本を解説していきます!


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応力とは?

✅ 応力とは、「物体に力が加わったときに、内部で発生する抵抗の力」です。
✅ イメージとしては、スポンジを両側から引っ張ると、中で力がかかっている状態になります。

この内部の力が「応力」です。

  • 応力の単位は「Pa(パスカル)」または「N/mm²」で表されます。
  • これは1mm²あたりにどれくらいの力が加わっているかを示します。

応力の弾性限界・降伏点・破断をわかりやすく解説

機械設計では、材料がどれくらいの力に耐えられるのかを知ることが重要です。そのために、「弾性限界」「降伏点」「破断」の概念を理解しておく必要があります。

本項では、それぞれの違いや関係性を初心者でもわかるように解説します!


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弾性変形と塑性変形(そせいへんけい)

応力が大きくなると、材料は変形しますが、変形の仕方には元に戻る変形(弾性変形)と、元に戻らない変形(塑性変形)があります。

材料が壊れるまでの流れは、以下のようになります。

1️⃣ 弾性限界(Elastic Limit)
2️⃣ 降伏点(Yield Point)
3️⃣ 破断(Fracture)


弾性限界

弾性限界とは、材料が元に戻れる限界の応力のことです。

🔍 たとえ話

✔ ゴムを軽く引っ張ると、手を離したときに元の形に戻ります。
✔ しかし、強く引っ張りすぎると、伸びたまま戻らなくなります。

この「元に戻れるギリギリのライン」が弾性限界です。

✅ 弾性限界以下の力 → 材料は元に戻る(弾性変形)
✅ 弾性限界を超える力 → 材料は元に戻らなくなる(塑性変形)

📌 設計でのポイント

機械設計では、部品が長期間使われることを考え、通常は弾性限界を超えない範囲で設計します。


降伏点

降伏点とは、材料が一気に変形し始める応力のことです。

🔍 たとえ話

✔ クリップを少し曲げると、手を離せば元に戻ります。
✔ しかし、ある程度以上曲げると、元に戻らずグニャっと変形します。

この「変形が始まるポイント」が降伏点です。

✅ 降伏点以上の力が加わると、材料は元に戻らない。
✅ 降伏点を超えた後は、比較的少ない力でも変形し続ける。

📌 設計でのポイント

降伏点を超えないように設計しないと、部品が変形してしまい、機械としての機能が損なわれる可能性があります。


破断

破断とは、材料が完全に壊れることです。

🔍 たとえ話

✔ クリップを何度も曲げ伸ばしすると、最後にはポキッと折れます。
✔ この「折れる瞬間」が破断です。

✅ 材料には「引張強さ(破断強さ)」があり、それを超えると破断する。
✅ 降伏点を超えて変形が進み、最終的に耐えられなくなると破断する。

📌 設計でのポイント

・通常、材料が破断するような応力がかからないように設計します。
・しかし、安全装置や切断部品など、一部の設計では意図的に破断を利用することもあります。


弾性限界・降伏点・破断の関係まとめ

状態応力の範囲変形の種類変形後の状態
弾性変形弾性限界以下弾性変形元に戻る
塑性変形降伏点以上塑性変形変形したまま
破断引張強さを超える破壊材料が壊れる

🔹 弾性限界 → 材料が元に戻れるギリギリの応力。
🔹 降伏点 → 材料が変形し始めるポイント。
🔹 破断 → 材料が壊れる瞬間。

機械設計では、弾性限界や降伏点を考慮して安全な設計をすることが重要です!

はじめ
はじめ

これらの概念を理解し、適切な材料選定・設計を行いましょう!

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応力の種類

機械設計では、以下の5つの応力が特に重要です。

引張応力(Tensile Stress)

物体を引っ張る力によって発生する応力。

: ワイヤーやボルトが引っ張られるとき
特徴: 材料が伸びて破断する可能性がある


圧縮応力(Compressive Stress)

物体を押しつぶす力によって発生する応力。

: 建物の柱、ボールベアリングの内輪
特徴: 材料が短くなり、座屈(折れ曲がる現象)が発生する可能性


せん断応力(Shear Stress)

物体をずらすような力によって発生する応力。

: はさみで紙を切るとき、ボルトやリベットが受ける力
特徴: 材料が横方向にずれて破壊される


ねじり応力(Torsional Stress)

物体をねじる力によって発生する応力。

: ドライブシャフト、ボルトの締結部
特徴: ねじれによる破壊が起こる可能性


曲げ応力(Bending Stress)

物体を曲げる力によって発生する応力。

: 梁(はり)、スプリング
特徴: 一方は引張、もう一方は圧縮の状態になる


応力の計算方法をわかりやすく解説

機械設計では、「応力(おうりょく)」を計算することがとても重要です。応力を正しく求めることで、部品が壊れず、安全に機能する設計ができます。

本項では、初心者でもわかりやすいように「応力の計算方法」について解説します!

引張応力・圧縮応力の計算式

引張や圧縮の応力は、以下の式で求められます。

\( \displaystyle σ=\frac{F} {A}\)

σ(シグマ) = 応力(N/mm²)
F = 加わる力(N)
A = 力がかかる断面積(mm²)

🔍計算例

直径10mmの円柱に1,000Nの引張力が加わる場合、応力を求めます。

1. 断面積を求める

\( \displaystyle A=\frac{πd^2} {4}=\frac{3.14×10^2} {4}=78.5㎟\)

2. 応力を求める

\( \displaystyleσ=\frac{1000} {78.5}=12.7N/㎟\)


せん断応力の計算式

せん断(横ずれ)の応力は、以下の式で求められます。

\( \displaystyle τ=\frac{F} {A}\)

τ(タウ) = せん断応力(N/mm²)
F = 加わるせん断力(N)
A = せん断が発生する面積(mm²)

🔍計算例

直径8mmのボルトに500Nのせん断力が加わる場合、せん断応力を求めます。

1. 断面積を求める

\( \displaystyle A=\frac{πd^2} {4}=\frac{3.14×8^2} {4}=50.24㎟\)

2. せん断応力を求める

\( \displaystyle σ=\frac{500} {50.24}=9.95N/㎟\)


ねじり応力の計算式

ねじりの応力は、以下の式で求めます。

\( \displaystyle τ=\frac{Tr} {J}\)

τ(タウ) = ねじり応力(N/mm²)
T = ねじりモーメント(N·mm)
r = 半径(mm)
J = 極断面二次モーメント(mm⁴)

Jの計算は形状によって異なりますが、円柱の場合は以下の式を使います。

\( \displaystyle J=\frac{πd^4} {32}\)


曲げ応力の計算式

曲げの応力は、以下の式で求めます。

\( \displaystyle σ=\frac{My} {I}\)

M = 曲げモーメント(N·mm)
y = 中心からの距離(mm)
I = 断面二次モーメント(mm⁴)

Iの計算は形状によって異なりますが、長方形の断面の場合は以下の式を使います。

\( \displaystyle I=\frac{bh^3} {12}\)

b = 幅(mm)
h = 高さ(mm)


応力は、「力 ÷ 面積」で求めるのが基本で、種類ごとに計算式が変わります。
機械設計では、応力を正しく計算し、適切な材料や形状を選ぶことが重要です。

はじめ
はじめ

まずは、引張・圧縮・せん断の基本計算を理解し、ねじりや曲げ応力も少しずつ学んでいきましょう!

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応力を考慮した設計のポイント

材料選びが重要
 👉 材料によって、応力に対する強度が異なります。
(🔍例:鉄は引張強度が高いが、せん断には弱い)

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形状を工夫しよう!
 👉 部品の形状によって、応力の集中を防ぐことができます。
(🔍例:角を丸くすることで応力集中を減らす)

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安全率を考慮する!
 👉 必要な強度よりも余裕を持たせた設計が重要。
(🔍例:突然の衝撃にも耐えられるようにする)

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まとめ

「応力」は機械設計の基礎となる考え方で、強度や耐久性を決める大事な要素です。設計の際には、どのような応力が発生するのかをしっかり理解し、適切な材料や形状を選ぶことが重要になります!

これから機械設計を学ぶ方も、まずは「引張」「圧縮」「せん断」「ねじり」「曲げ」の5つの応力をしっかり押さえておきましょう!


はじめ
はじめ

機械設計の根幹を成す力学の基礎を理解し、強度や動作に関する考え方を学びます。

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