【圧力計】圧力メーターの種類と選定ポイント【ゲージ圧】

動力選定

空圧機器(エア機器)の設計や運用において、圧力メーター(圧力計)は欠かせない重要な要素です。正確な圧力測定ができるかどうかは、機器の効率的な動作や安全性に直結します。本記事では、圧力メーターの種類とそれぞれの特徴、適切な選定ポイントについて解説します。

圧力メーターの役割

圧力メーターは、空気圧システム内の圧力を測定し、視覚的に表示するための機器です。
主な役割は以下の通りです。

  • 圧力の確認: システムが設計された通りの圧力で動作しているかを確認。
  • 異常の検出: 異常な圧力変動や過圧を早期に発見。
  • メンテナンス支援: 定期的な圧力測定で部品の劣化を予測し、適切な保守計画を立てる。

圧力メーターの種類

空圧機器で使用される圧力メーターにはいくつかの種類があり、それぞれ適した用途や特徴があります。

アナログ圧力メーター

針で圧力値を示す一般的な圧力計です。構造がシンプルで価格も安価なため、多くのシステムで利用されています。

  • 特徴:
    • 機械式で信頼性が高い。
    • 電源が不要。
    • 小型・軽量。
  • 用途:
    • 一般的な空圧システム。
    • コスト重視の現場。
  • : ブルドン管式圧力計。

振動対策ではグリセリン入圧力メーターがおすすめ

振動環境での使用に適した圧力メーターとして、グリセリン入り圧力メーターがあります。メーター内部にグリセリン(または他の粘性液体)が充填されており、針の振動を抑えることで安定した圧力表示が可能です。

特徴
  • 振動や衝撃の多い環境で針の動きを抑制し、正確な圧力確認が可能。
  • 機器の寿命を延ばす効果がある(振動による部品摩耗の軽減)。
  • 外部からの汚れや湿気の侵入を防ぐ密閉構造。
用途
  • 工場設備: コンプレッサーやポンプなどの振動が多い装置。
  • 重機・建設現場: 過酷な使用環境での空圧システム。
  • 輸送分野: 振動が大きい車両や船舶の空圧制御。
注意点
  • 極端な温度変化に注意(液体が膨張・収縮する可能性がある)。
  • 長期間の使用で液体が蒸発する場合があるため、定期的な点検が必要。

デジタル圧力メーター

圧力をデジタル表示する計器で、より正確な数値が確認できます。

  • 特徴:
    • 高精度な測定が可能。
    • 設定した圧力の範囲を超えた場合にアラーム機能を備えることも可能。
    • 一部はデータ記録や通信機能を持つ。
  • 用途:
    • 高精度を必要とする空圧システム。
    • 圧力管理が厳密に求められる場合。
  • 注意点: 電源が必要で、コストはアナログ圧力メーターより高め。

真空圧力メーター

真空状態や負圧を測定するための圧力計です。真空ポンプや吸着装置で利用されます。

  • 特徴:
    • 負圧(マイナス圧力)を計測可能。
    • 機器が真空レベルを保っているか確認できる。
  • 用途:
    • 真空包装装置。
    • 真空チャック装置。

差圧計

2点間の圧力差を測定する装置です。フィルターの目詰まりや空圧装置の異常を検出する際に用いられます。

  • 特徴:
    • フィルターや配管の圧力損失を測定。
    • 相対的な圧力差が確認できる。
  • 用途:
    • フィルターユニットの状態管理。
    • 空調装置やクリーンルーム。

圧力メーターの選定ポイント

(1) 使用する圧力範囲

選定時の最も重要なポイントは、計測する圧力範囲に適した圧力メーターを選ぶことです。一般的には、実際の使用圧力の1.5倍~2倍程度の最大圧力レンジの製品を選ぶと良いです。

  • 例: 使用圧力が0.5MPaなら、最大圧力が1.0~1.5MPa程度のメーターを選定。

(2) 精度

精度は測定値の信頼性を決定します。±0.5%~±2%が一般的ですが、高精度を求める場合は±0.1%の製品も検討するべきです。

  • 用途例:
    • 高精度な制御が必要なシステム → ±0.1%の精度。
    • 一般的な圧力確認用途 → ±2%程度。

(3) 表示形式

  • アナログメーター: 簡易的な圧力確認やコスト重視の現場向け。
  • デジタルメーター: 正確な数値確認やアラーム機能が必要な場合。

(4) 材質と耐久性

圧力メーターの素材は、使用環境に適したものを選ぶ必要があります。

  • 一般環境用: SUS304、アルミ製のケース。
  • 腐食性のある環境用: 耐腐食性の高いステンレス製(SUS316など)。

(5) 接続部の規格

配管や機器との接続が適合しているか確認します。一般的には、GネジやPTネジ(テーパーネジ)を選定。


圧力メーターの使用時の注意点

  1. 振動環境への対応
    • 振動が大きい現場では、振動耐性のある圧力メーターを使用する。
    • ダンパー付きのメーターを検討。
  2. メンテナンスの確保
    • 定期的に校正を行い、精度を保つ。
    • フィルターを通して計測し、汚れや異物の混入を防ぐ。
  3. 過圧の防止
    • 計測範囲を超える圧力がかかるとメーターが破損するため、安全弁や圧力スイッチを併用する。

ゲージ圧と絶対圧の違いを理解しよう

空圧機器を扱う際、圧力メーター(圧力計)は非常に重要な役割を果たします。この圧力メーターには「ゲージ圧(Gauge Pressure)」と「絶対圧(Absolute Pressure)」という2つの異なる測定基準があります。この違いを正しく理解することで、より正確な設計や運用が可能になります。本項では、ゲージ圧と絶対圧の違い、それぞれの特性、使い分けのポイントについて解説します。


圧力の基本的な概念

絶対圧(Absolute Pressure)

絶対圧は、「完全な真空状態(ゼロ圧)」を基準とした圧力のことです。

  • 基準点:完全真空(0 Pa)。
  • 計算式
    絶対圧 = ゲージ圧 + 大気圧
  • 特徴
    • 大気圧の変動に影響されない。
    • 真空度や高度が重要な場面で使用。

ゲージ圧(Gauge Pressure)

ゲージ圧は、「大気圧」を基準とした圧力のことです。圧力メーターに表示される値の多くはゲージ圧です。

  • 基準点:大気圧(約101.3 kPa)。
  • 計算式
    ゲージ圧 = 絶対圧 - 大気圧
  • 特徴
    • 大気圧を基準にしているため、使い慣れた操作環境ではわかりやすい。
    • 大気圧が変動する環境では誤差が生じることも。

ゲージ圧と絶対圧の使い分け

ゲージ圧を使用する場面

  • 日常的な空圧機器の操作
    例:エアシリンダ、エアコンプレッサの設定値。
    • 大気圧との差を測定することで、機器の動作状態を簡単に把握可能。
  • 現場での直感的な操作が求められる場合
    大気圧を基準にしているため、実際の運用での利便性が高い。

絶対圧を使用する場面

  • 高度や真空環境の影響を受ける場合
    例:航空宇宙工学や真空チャンバー内の圧力測定。
  • 正確なエネルギー計算が必要な場合
    絶対圧を基準にすることで、エネルギー計算や流体解析が正確になる。

圧力の表示と注意点

負圧表示の注意点

ゲージ圧の場合、真空に近づくと圧力が負の値で表示されます。これは、圧力が大気圧より低いことを示しており、絶対圧では正の値になります。


  • ゲージ圧:-0.5 MPa(真空度)
    絶対圧:0.5 MPa

単位の確認

  • 圧力の単位としては、「MPa(メガパスカル)」や「bar」、「psi」などが使用されます。
  • 設計時には、測定器と仕様書で単位を統一することが重要です。

ゲージ圧と絶対圧の違いを意識した設計例

ケース1:エアコンプレッサの動作圧力

  • 設定値:ゲージ圧で0.6 MPa
  • 絶対圧換算
    0.6 MPa(ゲージ圧) + 0.101 MPa(大気圧) ≈ 0.701 MPa

ケース2:高度10,000 mの航空機内の圧力

  • 大気圧:0.265 MPa(標準大気)
  • ゲージ圧:1.0 MPa(地上と同等の作動圧力)
  • 絶対圧:1.0 MPa + 0.265 MPa ≈ 1.265 MPa

ゲージ圧と絶対圧は圧力を測定する基準が異なりますが、どちらも用途に応じて適切に使い分けることが求められます。空圧機器の設計や運用において、使用環境や測定目的を考慮し、どの基準が適切かを選択することで、より正確な制御と安全性が実現できます。

圧力センサを組み合わせたシステムの活用

近年では、従来の圧力メーターに加えて、圧力センサを組み合わせたシステムを採用するケースが増えています。圧力センサは、アナログやデジタル信号を用いてリアルタイムで圧力データを取得し、制御装置やモニタリングシステムに送信します。

圧力センサを組み合わせるメリット

  1. リアルタイムモニタリング:
    • 圧力センサを利用することで、遠隔地や見えにくい箇所の圧力をモニター可能。
    • 特に自動化設備では、センサから得たデータで制御システムが自動的に対応を行う。
  2. 高精度な測定:
    • 圧力メーターでは難しい微細な圧力変化や振動の影響も正確に計測可能。
    • 精密な制御が求められる場面で活躍。
  3. 異常検知・トラブル防止:
    • センサのデータをもとに、圧力の異常変化を即座に検出し、システムの緊急停止やアラート発信が可能。
    • 予知保全としても有効で、機器トラブルやダウンタイムの低減に寄与。
  4. データの蓄積と解析:
    • 圧力センサのデータは記録や解析に利用可能。長期間のデータを分析することで、効率的な運用やトラブル予防策を立案できる。

圧力メーターと圧力センサの組み合わせ

圧力メーターと圧力センサを併用することで、それぞれの特長を活かしたシステムを構築できます。

  • 圧力メーター: 現場作業者が目視で簡単に確認できる。
  • 圧力センサ: 精密なデータ取得と遠隔制御・監視を実現。

圧力メーターと圧力センサを組み合わせることで、現場の即時確認から高度な制御まで対応できる柔軟なシステムを構築できます。特に振動環境や高精度を求められる場面では、この組み合わせが信頼性と効率性を大幅に向上させるでしょう。


まとめ

圧力メーターの選定は、使用圧力範囲、精度、表示形式、材質、接続規格などを考慮して行う必要があります。また、適切なメンテナンスや使用環境への配慮が、機器の長期的な信頼性を確保するために重要です。

適切な圧力メーターを選ぶことで、空圧機器の安全性や効率性を向上させ、トラブルを未然に防ぐことが可能になります。設計段階から慎重に選定し、運用中の点検や管理を徹底することが成功の鍵です。


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