機械設計において、寸法や強度計算が
正しいだけでは「良い設計」とは言えません。
特に初心者の設計で多いのが、
理論上は成立しているが、
現場では加工しにくい設計です。
図面上では問題なく見えても、
実際に加工現場に持ち込むと、
▶ 工具が入らない
▶ 加工順が成立しない
▶ 特殊で高コストな加工が必要になる
といった問題が発覚するケースは少なくありません。
この記事では、「加工を理解した設計」の重要性と、
設計中に意識すべきポイントをわかりやすく解説します。
理論的に正しくても「作れない設計」は失敗
設計初心者がやりがちなのが、
寸法も合っているし、強度的にも問題ない
という理由だけで設計を完結させてしまうことです。
しかし、現場では次のような声がよく上がります。
これらはすべて、加工を想定していない設計が原因です。
加工現場には「当たり前の制約」がある
加工には、設計図には表れにくい現実的な制約があります。
工具が入るか
エンドミルやドリルには長さ・太さの限界があります。
形状的に「届くはず」と思っても、
実際にはホルダーや機械の干渉で加工できないこともあります。
加工順が成立するか
加工は基本的に「できるところから順番に」行います。
後加工が不可能になる形状を先に作ってしまうと、
その時点で不良確定です。
特殊加工になっていないか
5軸加工、放電加工、特注治具が必要になる設計は、
コスト・納期・再現性すべてに悪影響を与えます。
図面上では「成立している」ことが、実は一番危険
加工できない設計でも、図面上では問題が見えません。
これが、設計トラブルをややこしくしている最大の要因です。
図面を見返してみると、
一見すると「何も問題がない図面」に見えます。
そのため、設計段階では誰も止められずに流れてしまうのです。
なぜ「組んでみるまで」問題が出ないのか
設計図は、あくまで完成形の理想状態を表したものです。
一方、加工現場では、
といった「途中工程」が必ず存在します。
図面は完成形しか示さないため、
途中で加工できるかどうかまでは表現されません。
その結果、
図面上では成立
↓
加工現場で初めて「これ無理じゃない?」
という流れが起きてしまいます。
見落とされがちな「普通に作れるか?」という視点
多くのトラブル設計に共通して欠けているのが、この視点です。

「これ、普通の切削・板金で作れるか?」
寸法・公差・干渉チェックだけでは、
加工の難易度や現実性は判断できません。
たとえば、
こうした問題は、図面を“加工目線”で見ない限り気づけないのです。
このズレが設計と現場のトラブルを生む
設計者は「図面通りに作ってほしい」と考え、
現場は「そもそも作れない」と感じる。
この認識のズレが、
につながります。
しかも厄介なのは、
どちらも間違っていないことです。
図面は成立している。
しかし、現場では成立しない。
設計段階でできる、たった一つの対策
対策はシンプルです。
設計中に一度、手を止めてこう考えてみてください。
「この形状、加工途中の状態を想像できるか?」
完成形だけでなく、
をイメージするだけで、
設計と現場のズレは大きく減ります。
「図面上OK」は「現場OK」とは限らない
図面上で成立していることは、
設計のスタートラインに立っただけです。
本当に良い設計とは、
- 図面上で成立している
- 現場でも無理なく加工できる
この両方を満たすものです。
「図面では問題ない」という安心感こそ、
一度疑ってみる。
それが、
設計者として一段レベルアップするための重要な視点です。
設計中に立ち止まるべき、たった一つの質問
設計の現実性を高めるために、
ぜひ設計中にこの一言を自分に投げかけてください。
「これ、普通の加工方法で本当に作れるかな?」
たったこれだけで、
といった効果があります。
まとめ|「加工できるか?」を考えることが良い設計につながる
機械設計において重要なのは、
理論的に正しいことと現実に作れることの両立です。
特に初心者ほど、
▶ 加工方法を想像する
▶ 現場の制約を意識する
▶ シンプルで再現性の高い形状を選ぶ
これらを意識するだけで、設計の質は大きく向上します。
「図面が描ける設計者」から
「現場で喜ばれる設計者」へ。
その第一歩が、
「本当に加工できるか?」と立ち止まることです。



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