機械設計において「力」にはさまざまな種類があります。その中でも「せん断力(せん断応力)」は、材料の強度設計で非常に重要な力の一つです。本記事では、せん断力の基本をわかりやすく解説します。
せん断力とは?
✅ せん断力とは、材料の面に対して平行に作用する力のことを指します。
✅ この力が大きくなると、材料が滑るように変形し、最終的には破断することがあります。
例えば、ハサミで紙を切る動作は、まさに「せん断力」が働いている状態です。ハサミの刃が紙に平行な力を加えることで、紙が二つに切断されます。
せん断力が発生する場面
せん断力は、機械設計のさまざまな場面で発生します。以下のような例があります。
✅ ボルトやリベットのせん断
- ボルトやリベットは、構造物の部品を固定するために使われます。
- 大きな荷重がかかると、せん断力によって破断することがあります。
✅ シャフト(軸)のねじれ
- シャフトが回転トルクを受けると、その内部にはせん断応力が発生します。
- 適切な強度設計をしないと、シャフトが破断してしまうことがあります。
✅ ギアの歯面の応力
- ギア同士がかみ合う際、歯面にはせん断応力がかかります。
- 耐久性を高めるために、材料選定や熱処理が重要になります。
せん断力に対する強度設計
せん断力に対する強度を考慮する際、一般的に以下のような計算式が用いられます。
せん断応力の計算式
\( \displaystyle τ=\frac{F} {A}\)
- τ(タウ):せん断応力(N/mm²)
- F:作用する力(N)
- A:せん断面積(mm²)
例えば、直径10mmのボルトに1000Nのせん断力が加わる場合、断面積は以下のように計算できます。
\( \displaystyle A=\frac{π} {4}×D^2=78.5㎟\)
せん断応力は、
\( \displaystyle τ=\frac{1000} {78.5}=12.7N/㎟\)
この値がボルトの許容せん断応力を超えないように設計することが重要です。
せん断力・圧縮力・引張力の関係をわかりやすく解説!
機械設計では、材料にかかる力を正しく理解することが非常に重要です。その中でも 「せん断力」「圧縮力」「引張力」 は、基本となる3つの力です。これらの力がどのように作用し、どのような影響を与えるのかをわかりやすく解説します!
せん断力・圧縮力・引張力とは?
✅ せん断力 → 材料を「すべらせる」ようにずらす力
✅ 圧縮力 → 材料を「押しつぶす」力
✅ 引張力 → 材料を「引っ張る」力
例えば、次のようなイメージを持つと分かりやすいです。
- せん断力 → ハサミで紙を切る力(紙の繊維が横方向にずれる)
- 圧縮力 → 消しゴムを指で押しつぶす力
- 引張力 → ゴムを両側から引っ張る力
せん断力・圧縮力・引張力の関係
機械部品には、これらの力が単独で作用することもありますが、実際には複数の力が同時にかかることが多い です。
✅ ボルトにかかる力の例
ボルトは、せん断力・圧縮力・引張力が組み合わさって働くことが多い部品の一つです。
- 引張力 → ボルトが軸方向に引っ張られる
- 圧縮力 → 締め付けられた部品同士が押し合う
- せん断力 → ボルトが横方向にずれるような力を受ける
ボルトの破断を防ぐためには、これらの力を計算し、適切な材質や太さを選定する必要があります。
✅ ギアの歯にかかる力の例
ギアの歯がかみ合う部分では、次のような力が発生します。
- 引張力 → ギアの回転によって歯が引っ張られる
- 圧縮力 → かみ合った歯が押し合う
- せん断力 → ギアの歯同士がずれるような力がかかる
適切な材料や熱処理を施さないと、ギアの歯がすり減ったり折れたりしてしまいます。
せん断力・圧縮力・引張力の強さを考慮した設計
材料には、それぞれ 「せん断強さ」「圧縮強さ」「引張強さ」 があります。
一般的に、材料の強さは次の関係が成り立ちます。
\( \displaystyle 引張強さ>圧縮強さ>せん断強さ\)
つまり、同じ材料なら「引張」には強いけれど、「せん断」には比較的弱い ということです。
✅ せん断力は「ずらす」力、圧縮力は「押す」力、引張力は「引っ張る」力
✅ ボルトやギアなど、実際の部品には複数の力が同時に作用する
✅ 材料には、せん断強さ・圧縮強さ・引張強さがあり、それぞれの特性を考慮して設計する
✅ 一般的に、引張強さ > 圧縮強さ > せん断強さ という関係が成り立つ

これらの力の関係を理解することで、より安全で耐久性の高い機械設計が可能になります!
まとめ
✅ せん断力とは、材料の面に平行に作用する力のこと。
✅ ハサミで紙を切る動作が、せん断力の代表的な例。
✅ ボルトやシャフト、ギアなど、さまざまな機械要素でせん断力が発生する。
✅ せん断応力の計算式を使って、強度設計を行うことが重要。
せん断力を正しく理解し、適切な材料選定や設計を行うことで、安全で信頼性の高い機械を作ることができます。
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