「円形支柱」と「六角支柱」の違いと使い分けをわかりやすく解説【強度と作業性】

力学

機械設計において、装置のフレームやユニットの支柱としてよく使われるのが「円形支柱」と「六角支柱」です。見た目の形状は違いますが、実はそれぞれに明確なメリットと使いどころがあります。

初心者の方の中には、「どっちを選べばいいの?」「見た目以外に何が違うの?」と迷うことも多いかと思います。

この記事では、形状による強度の違いや、作業性・設計上の工夫ポイントについて、図解や例を交えてわかりやすく解説します。機械設計の現場で迷わず部品を選べるようになるための基礎知識として、ぜひ参考にしてください。


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円形支柱(丸支柱)とは?

📌 特徴

  • 外形が円柱形状の支柱
  • 一般的には、外径Φ6〜Φ10mm程度のサイズが多い
  • 両端にねじが切られているか、ねじ穴が空いている

メリット

  • 外観がスッキリしていて見た目がスマート
  • 丸棒からの加工がしやすく、コストが低い
  • 手で回すことが前提でない場合に最適

🚫 デメリット

  • 工具で回すのが難しく、取り付け時に滑りやすい
  • 締結時に回り止めの工夫が必要になることがある

六角支柱(六角スタンドオフ)とは?

📌 特徴

  • 外形が六角形(六角ナットと同じ形状)になっている支柱
  • 外形サイズは「対辺寸法」で表記(例:対辺6mm、8mmなど)

メリット

  • スパナやレンチでしっかり保持できるので組み立てが簡単
  • 自動組立やトルク管理がしやすい
  • 回り止め効果あり(手でねじ込んでも支柱が空回りしない)

🚫 デメリット

  • 外形が目立つため、見た目がゴツくなる
  • 六角形加工のため、加工コストがやや高い
  • 面当たりがある分、干渉に注意が必要な場合も

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用途別の使い分けポイント

使用シーンおすすめの支柱理由
デザイン性重視の筐体(見える位置)円形支柱見た目がスマート、主張が少ない
作業性重視(現場で組み立てる)六角支柱工具で締めやすく、回転防止しやすい
精密機器の内部、狭いスペース円形支柱干渉しにくく、コンパクト
トルクをかけてしっかり締結したい六角支柱スパナで保持できるため安心
自動機による組み立て六角支柱自動機工具がしっかり保持できる

実際の使用例

円形支柱の例

  • 精密機器内部の基板スペーサー
  • 小型センサの取り付け支柱
  • 製品外観に露出する部品の固定用

六角支柱の例

  • 制御盤のDINレール固定部
  • ロボットアームの接続部
  • カバー・プレートを何度も開閉する部分

補足:材質にも注意しよう!

支柱の形状だけでなく、材質も選定ポイントです。

材質特徴
アルミ軽量、耐食性〇、加工しやすい(見た目も◎)
ステンレス(SUS)強度・耐久性〇、コストやや高め
真鍮(ニッケルメッキ)電子部品に多用、導電性あり
樹脂(ナイロンなど)絶縁・軽量・コスト安
材質選定についての関連記事はこちら
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円形 or 六角?見た目・作業性・用途で選ぼう!

比較項目円形支柱六角支柱
見た目◎(スマート)△(ゴツい)
組み立て作業性△(滑る)◎(工具で保持)
コスト◎(加工しやすい)△(六角加工必要)
回り止め△(別途工夫必要)◎(スパナで対応)

デザイン重視なら「円形支柱」
作業性や組立性を優先するなら「六角支柱」


支柱は単純な部品に見えますが、機械の使いやすさやメンテナンス性を左右する重要な要素です。

はじめ
はじめ

形状の違いを理解して、設計現場でベストな選択ができるようにしましょう!


円形支柱 vs 六角支柱 ― 断面積が同じならどちらが強いの?

機械設計においてよく使われる「円形支柱」と「六角支柱」。

上記では「作業性」や「見た目」の違いについて解説しましたが、今回はもう一歩踏み込んで、

同じ断面積なら、どちらが強度的に優れているの?

という疑問に答えていきます!

強度設計の観点から「断面形状の違い」がどう影響するのか、わかりやすく解説していきます。


前提条件:「断面積が同じ」とは?

まずここで言う「断面積が同じ」とは、次のような意味です。

  • 円形支柱 → 外径ΦDの円柱
  • 六角支柱 → 対辺Wの正六角形

このとき、断面積(部品の切断面の面積)が等しいように、寸法DとWを調整した場合を比較します。

つまり、同じ体積・同じ材料量の支柱を比較して、どちらが「曲げ強度」や「ねじれ強度」に優れているかを考えるということです。


強度に影響するのは「断面二次モーメント」と「ねじり定数」

曲げ強度に関係するのは?

👉 断面二次モーメント(I)

これは、曲げに対する「しなりにくさ(剛性)」を表す指標です。

数値が大きいほど、曲げに強くなります。

ねじれ強度に関係するのは?

👉 ねじり定数(J)

これは、ねじれに対する抵抗の大きさを示す値で、やはり大きいほど強くなります。


円形 vs 六角形 ― 数値で比較!

断面積が等しいように設計しても、形状が違えば断面特性も違ってきます

円形断面の特性(半径R)

  • 面積:A = πR²
  • 断面二次モーメント(I)= (π/4) × R⁴
  • ねじり定数(J)= (π/2) × R⁴

正六角形断面の特性(1辺a)

  • 面積:A = (3√3 / 2) × a²
  • 断面二次モーメント(I)≒ (5√3 / 16) × a⁴(軸中心)
  • ねじり定数(J)≒ 0.208 × a⁴(近似値)

結論:断面積が同じなら「円形支柱」の方が強い!

なぜ円形の方が強いの?

  • 円形は断面の全方向に均等な距離で材料が配置されている
  • 曲げやねじれに対して、最も効率的に材料を配置できる形状
  • 特に「ねじり」に対する強さは、六角形に比べて圧倒的に有利

📈 実際の比較(例)

同じ断面積(=材料量)で支柱を作った場合

比較項目円形支柱六角支柱
曲げ強度(剛性)◎(Iが大きい)○(やや劣る)
ねじり強度◎(Jが大きい)△(かなり劣る)
形状の方向依存性なし(全方向均等)あり(方向により弱点が出やすい)

じゃあ六角支柱はダメなの?

👉 いいえ、六角支柱にもメリットはあります!

  • 工具で保持しやすい(作業性◎)
  • 回り止めになる
  • 自動組立機に対応しやすい
はじめ
はじめ

つまり、強度より「組み立てやすさ」や「実用性」を重視するときに選ばれるのが六角支柱です。


強度だけ見るなら円形、でも設計はバランスが大事!

比較軸円形支柱六角支柱
曲げ・ねじりに強い
材料の配置効率
工具での作業性
実用強度(取り付け含む)○〜◎(場合による)

👉 構造的な強度が最優先 → 円形支柱
👉 作業性や回り止めなど現場ニーズ重視 → 六角支柱

強度計算では円形が理想ですが、実際の設計では“使いやすさ”とのバランスが重要です。


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まとめ

円形支柱と六角支柱は、どちらも機械の支えとして重要な役割を果たしますが、それぞれに設計者が知っておくべき特徴があります。

円形支柱は、全方向に均等な強度を持ち、特に曲げやねじれに対して高い剛性を発揮します。
六角支柱は、作業性や位置決め性に優れるため、組み立て効率を重視する場面に最適です。

用途や設計条件に応じて、適切な支柱形状を選ぶことで、強度と効率を両立したスマートな設計が実現できます。

どちらを選ぶべきか悩んだときは、この記事のポイントを振り返ってみてください。今後の設計判断にきっと役立つはずです!


はじめ
はじめ

機械設計の根幹を成す力学の基礎を理解し、強度や動作に関する考え方を学びます。

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