圧縮コイルばね(スプリング)は、
機械設計で最もよく使われる要素のひとつです。
荷重を受けて縮むことでエネルギーを蓄え、
外力がなくなると元に戻る――
そんな単純な部品ですが、
正しく設計しないと性能を発揮できず、
破損や変形の原因になることもあります。
特に初心者がやりがちなミスが、
スプリングを「自由長(ばねが無荷重状態の長さ)」のまま使う設計です。
この記事では、その理由と正しい設計の考え方をわかりやすく解説します。
圧縮コイルばねの「自由長」とは?
まず基本用語をおさらいしておきましょう。
つまり「自由長」はばねが何もしていない状態。
見た目は元気そうでも、この状態では荷重を受け止める準備ができていません。
なぜ「自由長」で使ってはいけないのか?
圧縮コイルばねを自由長のまま取り付けて使うと、
以下のような問題が発生します。
① ガタつき・振動が発生する
自由長状態では、ばねには初期荷重(プリロード)がかかっていません。
そのため、装置が動作する際にばねが「動き出すまでの遊び」が発生します。
このガタつきは、振動や異音、位置ずれの原因となり、
装置の精度や安定性を低下させる要因になります。
② ばねの寿命が短くなる
自由長で使うと、スプリングが「衝撃的に」荷重を受ける瞬間が増えます。
つまり、いきなり圧縮されてショックを受けやすく、
材料の疲労や座屈(曲がり)を起こしやすくなります。
特に細長いスプリングやストロークが大きい設計では注意が必要です。
③ 想定した荷重が得られない
設計時に「ある力を発生させたい」と考えても、
自由長から縮み始める状態では、荷重が立ち上がるまでにタイムラグが発生します。
このため、応答性が悪くなり、力の制御が難しくなることがあります。
正しい使い方:「初期荷重(プリロード)」を持たせて取り付けよう
圧縮コイルばね(スプリング)を設計するときに、
最も大切なポイントのひとつが
「初期荷重(プリロード)」を持たせて取り付けることです。
初期荷重(プリロード)とは?
ばねを少しだけ縮ませた状態で取り付けることを
「プリロード(予圧)」といいます。
つまり、ばねがまったく縮んでいない“自由長”の状態ではなく、
最初から軽く押し込まれた状態で組み込む、ということです。
この「軽く圧縮された状態」で使うことで、
ばねはより安定した性能を発揮することができます。
なぜプリロードが必要なのか?
自由長のまま使うと、ばねに荷重がかかるまでに遊び(ガタつき)が生じたり、
装置が動作するときに振動や衝撃が発生することがあります。
一方、プリロードをかけておくと、常にばねが力を発生している状態になるため、
装置の動作が安定し、寿命も延びるのです。
プリロードをかける4つのメリット
| 効果 | 説明 |
|---|---|
| ① ガタつき防止 | 部品間に隙間ができず、振動や異音の発生を防ぐ |
| ② 応答性の向上 | 動作開始時から力が発生するため、スムーズに動作 |
| ③ 耐久性アップ | 衝撃をやわらげ、疲労破壊や座屈を防止できる |
| ④ 安定した荷重特性 | 設計通りのばね定数(k値)で動作し、性能を安定させる |
設計の目安
プリロード量(初期たわみ量)は、
全たわみ量の5〜15%程度を目安に設計するのが一般的です。
たとえば、
- 自由長:50mm
- 最大たわみ:10mm
の場合、初期圧縮量を1〜1.5mm程度に設定します。
圧縮コイルは“押しつけて使う”のが基本!
圧縮コイルばねは、自由長のままでは正しい働きをしません。
必ず「軽く圧縮された状態」で取り付け、
ガタつきをなくし、安定した力を発揮できるようにすることが大切です。

スプリングは“縮ませて使う”のが正しい設計。
初期荷重を持たせることで、安定性・精度・寿命がすべて向上します。
正しい使い方:「初期荷重」を持たせて取り付ける
圧縮コイルばねは、軽く圧縮された状態(初期荷重あり)で取り付けるのが基本です。
これを「プリロード(予圧)」と呼びます。
プリロードをかけることで、次のようなメリットがあります。
プリロードをかけるメリット
| 効果 | 説明 |
|---|---|
| ガタつき防止 | 部品間に隙間ができず、振動や異音を防ぐ |
| 応答性向上 | 動作開始時から力が立ち上がる |
| 耐久性アップ | 衝撃をやわらげ、疲労破壊を防止 |
| 安定した荷重 | 設計通りのばね定数(k)で動作する |
設計時の目安
プリロード量(初期たわみ量)は、
全ストロークの5〜15%程度を目安に設定するのが一般的です。
例えば、
- 自由長:50mm
- 最大たわみ量:10mm
の場合、初期圧縮量を1〜1.5mm(10〜15%)程度設けて設計します。
設計例:自由長で使う vs プリロードあり
| 項目 | 自由長で使用 | プリロードあり |
|---|---|---|
| 初期荷重 | 0N | 10N(例) |
| 作動安定性 | ガタつく | 安定 |
| 振動対策 | 不十分 | 効果あり |
| 応答性 | 遅い | 速い |
| 寿命 | 短い | 長い |
このように、自由長で使うと全体の性能が下がることが分かります。
設計の初期段階で「プリロードを持たせる構造」にすることが重要です。

圧縮コイルばねは「縮ませてこそ性能を発揮する」部品。
自由長ではなく、常に少し押し込んだ状態で使うのが設計の鉄則です。
まとめ:スプリングは“押しつけて使う”のが正解!
| 設計ポイント | 解説 |
|---|---|
| 自由長で使わない | ガタつき・破損の原因になる |
| 初期荷重を持たせる | 安定性・応答性・寿命が向上 |
| プリロード量は5〜15% | ストロークや荷重に応じて調整 |
| 長寿命化には座面の平行・芯ずれ防止も重要 | 偏荷重を避ける |
圧縮コイルばねは「自由長で使う」と性能を十分に発揮できず、
ガタつきや振動、さらには寿命低下の原因になります。
設計段階でプリロード(初期荷重)を持たせる構造にすることで、
ばねは安定して力を発揮し、装置全体の信頼性も向上します。
つまり、圧縮コイルばねを正しく使うポイントは「初期荷重を持たせて設計すること」。
自由長ではなく“常に少し押し込まれた状態”で使うことが、
安定した動作と長寿命を実現するコツです。



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