エアシリンダやエアツールを使っていると、
「配管から水が出てきた」「ドレンが溜まるのが早い」
といったトラブルを経験したことはありませんか?
実は、これは空圧システムではよくある現象で、
主な原因は「圧縮空気の性質」にあります。
圧縮された空気には必ず水分(湿気)が含まれており、
冷却や圧縮の過程で結露して水となるのです。
放置すると、シリンダやバルブ内部が錆びたり、
動作不良を引き起こすこともあります。
この記事では、
▶ なぜエア配管から水分が出てくるのか(原因)
▶ どうすれば防げるのか(対策)
を、初心者にもわかりやすく解説します。
エア配管から水分が出てくる原因
① 圧縮空気に含まれる水分(湿気)
空気中には常に水蒸気が含まれています。
コンプレッサーで空気を圧縮すると、
体積が小さくなる分、水蒸気の濃度が高くなり、
やがて飽和状態になります。
このとき、冷却や配管内の温度差によって
水分が凝縮(結露)し、液体の水となって現れます。
② 配管やタンク内での冷却
圧縮空気はコンプレッサーから出た直後は高温ですが、
配管を通るうちに温度が下がり、冷たい配管内で水が結露します。
特に冬場や湿度の高い夏場は、
温度差が大きいため結露が増えます。
③ ドレン排出装置の詰まりや故障
エアタンクやエアドライヤにはドレン排出装置(オートドレン)がついています。
これが詰まったり動作不良を起こすと、
水分が抜けずに配管側へ流れ込み、装置内部にまで侵入します。
④ ドライヤやフィルタの能力不足
コンプレッサーの後段に設置される「エアドライヤ」や「フィルタ」は、
空気中の水分を除去する役割があります。
しかし、能力が不足していたり、
古くなっていると十分に除湿できず、水分が配管内に残ります。
エア配管の水分対策
1. エアドライヤを設置する
最も効果的な方法は、エアドライヤ(除湿装置)を設置することです。
主に以下の2種類があります。
用途や湿度環境に応じて選定します。
2. レシーバータンクを設ける
コンプレッサーからの空気を一度タンクに貯めることで、
圧力変動の吸収と水分の沈降分離ができます。
タンク底部のドレンコックから定期的に水を抜くことが大切です。
3. 配管ルートを工夫する
空圧配管の内部に水分が溜まることを防ぐために、
配管はわずかな傾斜を持たせて設置するのが望ましいです。
配管内に溜まった水分が自然に排出されるようにします。
低い位置に「ドレンポイント」を設け、排水できる構造にする
これだけでも水分トラブルを大幅に減らせます。
4. エアフィルタを適切に配置する
装置直前にミストセパレータ付きフィルタを設置することで、
最終的に残った水分や油分を取り除くことができます。
5. 定期メンテナンスを忘れずに
これらを定期的に行うことで、トラブルを未然に防げます。
現場でよくある質問(Q&A)
Q1:少量の水なら問題ない?
一見すると「ほんの少しの水だから大丈夫」と思うかもしれません。
しかし、空圧機器にとって水分は大敵です。
放置するとどうなる?
たとえ数滴の水でも、長期間放置すると確実に劣化が進みます。
特に、停止時間が長い装置ほど錆びやすいため注意が必要です。
対策ポイント
Q2:ドライヤを付けても水が出るのはなぜ?
「ドライヤを設置しているのに、エア配管から水が出る…」
これは多くの現場で見られる悩みです。
実は、ドライヤが原因とは限りません。
水が出る理由は、ドライヤ以降の配管で再結露しているケースが多いのです。
なぜ再結露するの?
対策ポイント
| 現象 | 主な原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 少量の水が出る | 残留水分・メンテ不足 | ドレン抜き・フィルタ設置 |
| ドライヤを付けても水が出る | 冷却後の再結露 | 断熱対策・ドレンポイント追加 |
水分トラブルは“空気の温度変化”で起きる!
空圧配管の水は、単なる漏れではなく“空気の物理現象”です。

定期的なドレンチェックと、環境に合った配管設計を行うことで、
トラブルを未然に防ぐことができます。
【空圧トラブル対策】再結露を防ぐための配管ルート設計のコツ
なぜ再結露は起きるのか?
空圧機器を使っていると、
ドライヤを通して乾燥させたはずの空気なのに、水が出てくる…
というトラブルをよく聞きます。
この原因の多くは、「再結露」です。
ドライヤ出口の空気は乾燥していますが、
温度が下がると空気中の水蒸気が再び水滴に変わるため、
配管内に水が発生してしまうのです。
そこで今回は、再結露を防ぐための
配管ルート設計の基本ポイントを解説します。
再結露を防ぐための基本原則
再結露は「冷却」と「滞留」によって起こります。
そのため、設計のポイントは次の2つです。
- 空気を冷やさない(温度差をつくらない)
- 水が溜まらないルートにする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 配管の勾配をつける(排水ルートを確保)
再結露で発生した水は、重力によって下に溜まります。
もし配管が水平のままだと、水が滞留しやすく、
最終的にエア機器内へ流れ込む危険があります。
設計ポイント
✅ ポイント:配管の“最低部”にドレンを設置!
水が自然に集まる場所を意識して設計しましょう。
② エアの主配管と支配管の取り出し方に注意
配管ルートの取り方でも、結露対策の効果は大きく変わります。
NG例:下側からエアを取る
水分が溜まる下側からエアを取ると、
水がそのまま機器へ流入します。
OK例:上側からエアを取る
主配管の上面から支管を立ち上げて分岐することで、
水分混入を防止できます。
さらに、支管の根元にはドレン抜き用の分岐を設けておくと、
トラブルを未然に防げます。
③ 配管を冷やさない工夫(断熱・ルート設計)
ドライヤ出口の空気は温かいため、
冷たい環境に触れると結露が発生します。
特に、冬場の屋外配管や、
エアコンの効いた室内では注意が必要です。
対策ポイント
配管内温度の変化を最小限にすることが、再結露防止のカギ!
④ 定期ドレン抜き+自動ドレンの活用
どれだけルート設計を工夫しても、
わずかな水分は必ず発生します。
そのため、定期的にドレン抜きを行う設計が重要です。
対策方法
💡 特に長期運転の装置では、自動ドレンの設置が効果的です。
配管ルートで「空気の流れ」と「水の流れ」を両立させよう
| 対策項目 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 配管勾配 | 1/100程度の下りを設ける | 水の滞留防止 |
| 支管の取り出し位置 | 主配管の上から取る | 水分混入防止 |
| 断熱対策 | 屋外・冷所部分を保温 | 再結露防止 |
| ドレン設置 | 最低部に排出口を配置 | 水の自動排出 |
再結露は目に見えにくいトラブルですが、
空圧機器の寿命を縮める大きな原因です。
配管ルートを「空気の流れ」と「水の流れ」の
両方を意識して設計することで、
安定した空圧システムを長期間維持することができます。
まとめ
エア配管から水分が出てくる原因は、
主に圧縮空気中の湿気が結露することによるものです。
▶ エアドライヤやフィルタで除湿する
▶ レシーバータンクやドレンで水を逃がす
▶ 配管ルートを見直す
これらを組み合わせることで、水分トラブルは大幅に減らせます。
水分対策は、空圧装置の寿命と信頼性を守る基本中の基本。
もしエアラインに水が見えたら、
「ドレン・配管・ドライヤ」をすぐチェックしましょう。

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