シールの劣化はエア漏れや動作不良の始まり!
エアシリンダは、圧縮空気を利用して直線運動を行う装置です。
その中でもシール部(パッキンやOリング)は、
空気の漏れを防ぐ重要な部品です。
しかし、長期間使用すると摩耗や硬化が進み、
エア漏れ・速度低下・動作不良といったトラブルの原因になります。
この記事では、エアシリンダのシール部メンテナンスの基本手順と、
交換時期・注意点をわかりやすく解説します。
エアシリンダのシール部とは?
エアシリンダの内部には、空気圧を保持しながら
スムーズにピストンを動かすための各種シールが使用されています。
主なシールの種類と役割
| シール名称 | 取付位置 | 主な役割 |
|---|---|---|
| ピストンシール | ピストン外周部 | エア漏れ防止、推進力の保持 |
| ロッドシール | ロッド出口部 | 外部へのエア漏れ防止 |
| ダストシール | ロッド先端 | 外部からの異物侵入防止 |
| バッファシール | ピストン端部 | 衝撃吸収、シール保護 |
これらのシールが正常に機能していないと、エア漏れやロッドの動作不良が発生します。
SMCシリンダ用「パッキンセット検索」ページの活用法
機械設計や保全の現場では、長く使われてきたシリンダの
シール部品を交換することも少なくありません。
そんなときに頼りになるのが、
SMCが提供する 「パッキンセット検索」ページ。
機種・シリーズごとに適合するシールキット(パッキンセット)を簡単に探せるので、
メンテナンスをスムーズに進めるための必須ツールです。
活用のポイント
機種を特定できるよう、シリンダ型式を事前に確認しておくこと。
シール部交換時には、シリーズ名だけでなく
「チューブ径」「ロッド片ロッド/両ロッド」などの仕様も確認。
適合部品検索後、キット番号を控え、手配・在庫確認に活用しましょう。
SMCの「パッキンセット検索」ページを使えば、
メンテナンスに必要なシールキットを簡単に特定できます。
型式・シリーズ・仕様を把握しておくことで、
シール部の交換がスムーズに行え、
シリンダの信頼性維持・ダウンタイム削減につながります。
メンテナンス時には、ぜひこの検索サイトを活用してみてください。
シール劣化の主な原因
シールは消耗部品であり、使用環境や条件によって寿命が大きく変わります。
代表的な劣化原因を以下に示します。
① 摩耗
② 硬化・ひび割れ
③ 異物侵入
④ 潤滑不足
劣化のサインを見逃さない!
シールの状態は内部にあるため見えませんが、
以下のような症状が出たら交換のサインです。
| 症状 | 想定される原因 |
|---|---|
| 動作速度が遅くなった | エア漏れ、摩擦増大 |
| ロッド周辺に油膜や気泡 | ロッドシールの劣化 |
| シリンダからシューッという音 | ピストンシールまたはロッドシールのエア漏れ |
| スムーズに動かない/停止位置が不安定 | 潤滑不足・摩耗・異物侵入 |
目視できるエア漏れや油にじみは早期点検が必要!
シール部メンテナンスの基本手順
シール部のメンテナンスは、「清掃」「点検」「交換」「潤滑」の順で行います。
① 清掃
② 分解・点検
③ 交換
④ 組立・動作確認
シールの寿命を延ばすメンテナンス習慣
定期点検に加え、次のような予防メンテナンスを行うことで寿命を大幅に延ばせます。
| メンテナンス項目 | 推奨頻度 | 内容 |
|---|---|---|
| エアフィルタ清掃 | 月1回 | ゴミ・水分除去で異物混入を防止 |
| 潤滑状態の確認 | 月1回 | 給油式の場合、油量チェック |
| シリンダ外観点検 | 月1回 | ロッドの傷、油膜、エア漏れ確認 |
| 定期シール交換 | 1~2年目安 | 稼働時間・環境により調整 |
無給油タイプでも、初期グリスが切れないよう定期確認が重要!
シール交換時の注意点
- 異物を混入させない
(クリーンな作業環境で実施) - 工具で金属面を傷つけない
(Oリングピックなどを使用) - 材質を確認して交換
(NBR、FKMなど用途に合わせて選定) - 再組立時にトルク管理を行う
(メーカー推奨値を確認)
シール管理でシリンダ寿命が決まる!
| チェック項目 | 目的 | メリット |
|---|---|---|
| シール状態の点検 | エア漏れ・動作不良の防止 | 安定稼働を維持 |
| 定期交換 | 摩耗・硬化対策 | 予防保全でコスト削減 |
| 潤滑管理 | 摩擦・摩耗防止 | シール寿命の延長 |
【見落とし注意】エアシリンダのエア漏れは継手部も要チェック!
エア漏れの原因はシリンダ本体だけじゃない!
エアシリンダの動作が遅い、力が弱い、
または「シューッ」という音がする…。
そんなとき、「ピストンシールやロッドシールの劣化」と考える方が多いですが、
実は継手(エア配管の接続部)からのエア漏れも非常に多い原因です。
エア漏れを放置すると、エア消費量の増加・圧力低下・
装置全体の動作不良を招くことになります。
継手部のエア漏れの原因・確認方法・対策をわかりやすく解説します。
エアシリンダでエア漏れが起きる主な箇所
エアシリンダまわりで漏れが発生しやすいのは以下の部分です。
| 漏れ箇所 | 原因の例 |
|---|---|
| ピストンシール部 | シール摩耗・硬化 |
| ロッドシール部 | 異物侵入・潤滑不足 |
| 継手部(ねじ部・チューブ接続部) | 締付不足・シールテープ劣化・チューブ抜け |
| チューブ破損 | 折れ・老化・摩擦による損傷 |
特に、継手部からの微小な漏れは見逃されやすく、
長期間にわたって圧力低下を引き起こすケースも少なくありません。
継手部のエア漏れが起こる主な原因
① ネジ部のシール不良
継手をシリンダにねじ込む部分では、
気密を保つためにシールテープ(シール剤)が使用されます。
しかし、次のような状態になると漏れが発生します。
💡 対策
新品のシールテープを正しい方向(ねじ方向に沿って)で2~3回巻くのが基本です。
② チューブの差し込み不足・緩み
ワンタッチ継手(ワンタッチジョイント)では、
チューブの差し込みが浅いと、隙間からエアが漏れます。
💡 対策
チューブはまっすぐにカットし、
しっかりと「カチッ」と奥まで差し込むこと。
抜け止めリングがしっかりかかっているかも確認しましょう。
③ チューブや継手の老化
長期間使用すると、チューブや継手の樹脂部が硬化・変形します。
特に高温環境や油ミストの多い環境では劣化が早く進みます。
💡 対策
簡単にできるエア漏れチェック方法
方法1:石けん水(泡)テスト
石けん水を継手部に塗り、泡が出る箇所を確認する方法。
簡単かつ確実に漏れ箇所を特定できます。
方法2:圧力比較で確認
エア入力側とシリンダ出力側の圧力を比べ、
大きな差がある場合は継手や配管で
漏れが発生している可能性があります。
方法3:耳と手でチェック
小さな漏れ音や空気の流れを手で感じることで
判断できる場合もあります。
ただし、圧力が高い場合は安全に注意しましょう。
継手部のエア漏れを防ぐ設計とメンテナンスのコツ
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 継手を過剰に締めない | ネジ山やシールを傷める原因になる |
| シールテープを正しく巻く | テープの端をねじ山にかからないように注意 |
| チューブを正確にカット | 専用カッターを使用して直角に切断 |
| 定期的に交換 | 継手・チューブは消耗品と考える |
| エアドライヤ設置 | 水分が混入するとシール劣化が早まる |
シリンダのエア漏れは「継手」も疑え!
エアシリンダのエア漏れというと、
つい内部シールばかり注目しがちです。
しかし実際には、継手部やチューブの接続部が
原因となるケースも非常に多く見られます。
継手部を点検・清掃・交換することで、
圧力低下や動作不安定のトラブルを防ぎ、
エアシリンダを長寿命化できます。
👉 ポイント
エアシリンダのエア漏れ対策では、
継手部の点検とメンテナンスが欠かせません。
シールの劣化やチューブの緩みは、目に見えない圧力損失を引き起こします。
正しい締付け・接続・定期交換を行うことで、
空圧システム全体の信頼性と効率を大きく向上させることができます。
まとめ
エアシリンダのシール部は、
わずかな劣化でも性能に大きく影響します。
定期的な清掃・点検・交換を行うことで、
エア漏れや動作不良を未然に防ぎ、
シリンダ全体の寿命を大幅に延ばすことが可能です。
特に、摩耗・硬化・潤滑不足はトラブルの三大要因。
シールキットの定期交換をルール化し、潤滑管理を徹底することで、
信頼性の高い空圧システムを長期間維持できます。

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。



コメント