機械設計の図面では、小さな寸法が大量に並ぶと図面が読みにくくなり、
製造ミスや検査漏れの原因にもなります。特に、等間隔の穴や連続形状がある場合、
一本ずつ寸法を入れてしまうと図面が“寸法だらけ”になってしまいがちです。
そこで有効なのが パターン寸法(まとめ寸法) です。
「P20×5」のように、ピッチとピッチ数でまとめて表現する方法を使えば、
図面がすっきり整理され、製造者にも意図が正確に伝わります。
この記事では、パターン寸法を使いこなすための考え方と、
使い方のコツを分かりやすく解説します。
パターン寸法とは?——繰り返し形状を“まとめて”表す寸法記法
パターン寸法とは、同じ寸法の繰り返し形状を、ひとつの式でまとめる表記方法です。
🔍 例)
5×P20=100
これは、20mmピッチの穴が5個並んでいるという意味になります。
パターン寸法を使う3つのメリットを徹底解説
図面を描くとき、等間隔の穴や溝など、同じ形状が並ぶ場面は多くあります。
しかし、これを一本ずつ寸法で指示してしまうと、
図面がゴチャゴチャして読みづらくなったり、
製造側で誤解が起きやすくなったりします。
そこで役に立つのが パターン寸法(ピッチ寸法+個数のまとめ表記) です。
この記事では、なぜパターン寸法が便利なのか、
3つの理由をわかりやすく解説します。
① 図面が圧倒的に読みやすくなる
等間隔の穴や溝に対して、一本ずつ寸法線を描いてしまうと……
という問題が発生します。
たとえば、「20mm間隔で5個の穴」がある場合、1つずつ寸法を入れると
図面中に寸法線が“5本”も増えてしまいます。
パターン寸法なら一行で完結!
P20×5=100
たったこれだけで、
- ピッチ(20mm)
- ピッチの数(5個)
が一目で分かり、図面が一気にスッキリします。
② 寸法間違いが起こりにくい
1つ1つの穴に寸法を付けた場合、次のようなミスが起きがちです。
細かい寸法が多いほど、こうした“部分的ミス”は発生しやすくなります。
パターン寸法ならミスを根本から防止!
ピッチ × ピッチ数で表記すれば、
寸法抜けの心配がほぼゼロになります。
さらに、加工者側が「規則性」を理解できるため、
誤った解釈をされる可能性も低くなります。
③ 加工者が形状を理解しやすく、作業効率も上がる
加工現場では、「ピッチ」と「ピッチ数」は非常に重要な情報です。
なぜなら、
など、“規則性”をもとに作業を組み立てることが多いからです。
パターン寸法は加工者にとって最も扱いやすい表記
ピッチ指示は、加工者にとって作業工程を組みやすく、
加工誤差・手順ミスの抑制にもつながります。
パターン寸法を使うと“図面の質”が一気に上がる
パターン寸法は、ただの“省略表記”ではありません。
図面の品質を高め、誤解やミスを防ぐためのとても重要な技術です。
パターン寸法を使うメリット
等間隔の穴があるとき、連続形状が続くとき、円周等分の配置など、
規則性のある形状では積極的にパターン寸法を使うことで、
読みやすく、伝わりやすい、高品質な図面に仕上がります。
パターン寸法の基本例
1. 等間隔の穴列

意味
中心間25mmで6個の⌀10穴が並ぶ。
2. スリットや溝などの連続パターン

意味
30ピッチで幅10の溝加工
3. ラジアル配置(円周等分)

意味
円周を6等分し、⌀6穴がある。
パターン寸法を使うときの注意点
① 「開始位置」の基準を明確にする
を図示する必要があります。
🔍 例)
最初の穴位置は端面から15mm → その先が P25×5
② “合計長さ”が必要な場合は別途指示する
ピッチ×個数だけでは合計距離が分からない場合があります。
🔍 例)
20mmピッチ × 5個 → 全長は80mm(間の距離が4区間)
必要に応じて、全長寸法も入れましょう。
③ 角度方向のパターンでは中心軸を明確化
円周等分のときは、
を示すことで誤解を防ぎます。
実務で役立つパターン寸法の書き分け
| 内容 | 書き方例 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 等間隔の穴 | P20 × 5 =100 | プレート、ブラケット等 |
| 同じ形状の連続配置 | 溝幅4 P=8 × 12列 | 放熱板など |
| 円周等分 | ⌀8 8等分 | 円板、フランジ |
| 格子状パターン | P=20×30(X×Y) | メッシュ、固定プレート |
まとめ|パターン寸法を使えば図面が読みやすく、ミスも減る
パターン寸法は、
“細かい寸法を効率よくまとめて、
図面を分かりやすくする”ための強力な手法です。
✅ パターン寸法のメリット
▶ 図面がすっきりする
▶ 寸法抜けを防止できる
▶ 加工者が理解しやすい
▶ ミスや誤解が減る
✔ 押さえておくべきポイント
▶ 開始位置・基準を明確にする
▶ ピッチと個数を正しく書く
▶ 必要に応じて全長や角度基準も示す
パターン寸法をうまく使えば、
「見やすい・間違えにくい・作りやすい」
三拍子そろった良い図面に近づきます。



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