【ロールピン】スプリングピンの特徴と選定ポイント【弾性による固定】

機械要素

スプリングピンは、機械設計において非常に汎用性の高い締結要素の一つです。

スプリングピンは主に、部品同士を固定するために使用されますが、
その柔軟な特性から衝撃吸収や振動緩和の効果も期待できるため、
さまざまな分野で使用されています。

この記事では、スプリングピンの機能、特長、種類、
そして選定ポイントについて解説します。

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スプリングピンの特徴

スプリングピンは、主に弾性を持つ材質で作られた筒状のピンです。

以下にその特徴を説明します。

弾性による固定

スプリングピンは、弾性を利用して穴の内側に圧力をかけ、
しっかりと固定されます。

ピンの外径は取付穴の内径よりもわずかに大きく作られており、
挿入時にピンが縮むことで強い固定力を発揮します。

衝撃吸収と振動緩和

スプリングピンの弾性構造により、
機械的な衝撃や振動を緩和することができます。

このため、部品が衝撃にさらされる場面や、
振動が問題になる場合に適しています。

高い挿入および取り外しの容易さ

スプリングピンは、挿入や取り外しが比較的容易です。

特に、再利用可能なタイプも多く、
メンテナンスや調整が必要な設計においても重宝されます。

スプリングピンの種類

スプリングピンには、いくつかのタイプがあり、
用途や設計によって適切なものを選定する必要があります。

ストレート形スプリングピン


  • ピンにストレート形のスリット(切れ込み)が入っている。
  • 挿入時にスリットが圧縮されることで穴の内側に力を加えて固定されます。
  • ストレートのスリットの為、抜き差しが比較的しやすい。
  • 一般的に使用されるスプリングピンであり、幅広い用途に対応可能です。

波形スプリングピン


  • 固定した際は、波形の山と谷が交互にたわみスキマ形状が波形になります。
  • ヒンジ等の回転する部分に使用した場合、円周全体に接するため滑らかに回転できます。
  • 衝撃がかかる場所では切り欠きに応力が集中し破損しやすい為、注意が必要です。

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スプリングピンの用途

スプリングピンは、その弾性と固定力を利用してさまざまな用途に使用されます。

🔍 部品の固定

機械の部品をしっかりと固定するために使用されます。
特に、振動がある環境下での部品のずれや緩みを防ぐために効果的です。

🔍 繰り返し取り外す位置決め

取り付けや取り外しが容易なため、保守性も高いです。
主に組み立てや分解が頻繁に行われる部品に使用されます。

ただし、位置決め精度はノックピンやテーパピンに劣ります。

🔍 ヒンジの軸として使用

✅ スプリングピンは、ヒンジの軸としても使用されることがあります。
✅ 弾性を利用してヒンジの回転をスムーズにしつつ、しっかりと固定します。
✅ 波形スプリングピンが適しています。


スプリングピンの入れ方と抜き方

スプリングピン(別名: ロールピン)は、
部品の固定や位置決めに広く使われる機械要素です。

その柔軟性と強度、簡単な取り扱いが魅力ですが、
入れる際や抜く際には適切な手順と道具が必要です。

この記事では、スプリングピンの基本的な入れ方と抜き方、
そして注意点について解説します。


スプリングピンの入れ方

穴の確認

ピンを挿入する穴の直径が、スプリングピンの外径に適しているか確認します。
通常、スプリングピンは穴径より少し大きい外径を持つよう設計されています。

 ▶ 標準公差: H12の公差が一般的。(ピンの呼び径と同等のキリ穴で可
 ▶ 穴の形状: バリがないように面取りがされていること。

工具の準備

  • ハンマー: 軟質材のプラスチックハンマーやゴムハンマーを推奨。
  • ピンドライバー: スプリングピン専用の工具が理想。

挿入手順

  1. ピンを正しく配置
    • ピンのスリット部分が挿入方向に対して直角になるようにします。
    • スリットが負荷に対して適切に位置することで、ピンの変形を防ぎます。
  2. ピンドライバーを使用
    • スプリングピンの頭部にピンドライバーを当てます。
    • ピンドライバーを使うことで、ピンが曲がったり、
      穴を傷つけたりするリスクを低減します。
  3. 軽く叩きながら挿入
    • ハンマーを使って、ピンドライバーを軽く叩きます。
    • ピンが均等に縮みながら穴に入るように、力を分散させます。
  4. 完全に挿入
    • ピンの両端が穴の外に均等に出るまで押し込みます。
    • 片側だけが飛び出ていると、
      荷重が偏って破損する可能性があります。

🚫 注意点

  • ピンを過剰に叩かないこと。
  • 強く叩きすぎるとピンや部品が破損する恐れがあります。
  • ピンが穴に対して適切にまっすぐ入っているか確認してください。

スプリングピンの抜き方

ピンの状態確認

ピンが錆びていたり、穴に固着している場合は潤滑剤を使用します。

  • 推奨潤滑剤: 防錆潤滑剤(例: CRC 5-56)。

工具の準備

  • ピンポンチ: ピンの直径に合ったサイズを使用します。
  • ハンマー: ゴムハンマーまたは小型の金属ハンマー。
  • バイス: 部品をしっかり固定するために使用します。

抜き手順

  1. ピンポンチを使用
    • ピンの露出している端にピンポンチを当てます。
    • ピンポンチは、ピンより少し細い直径のものを選びましょう。
  2. 均等に叩く
    • ハンマーでピンポンチを軽く叩きながら、ピンを穴から押し出します。
    • この際、力を一定にし、ピンがまっすぐに抜けるように注意します。
  3. 手で引き抜く
    • ピンの先端が十分に出たら、ペンチやプライヤーを使ってピンを引き抜きます。

🚫 固着している場合

  • 潤滑剤を使い、数分間浸透させます。
  • それでも抜けない場合は、
    加熱処理(ホットエアガンなど)で穴を少し膨張させ、緩めます。

トラブルシューティング

ピンが曲がった場合

穴が斜めである可能性があります。
一度ピンを取り外し、穴を修正してください。

ピンが抜けない場合

潤滑剤を多めに使用し、再度試してください。

それでも難しい場合は、
穴の周囲を加熱して拡張を試みるか、専門工具を使用してください。

穴が損傷した場合

穴を再加工して正確な寸法に修正します。
場合によっては部品交換が必要です。


スプリングピンの入れ方と抜き方は、
適切な道具と手順を守ることで、効率よく、安全に行うことができます。

以下のポイントを覚えておくと良いでしょう。

入れ方のコツ: ピンドライバーやハンマーを使い、均等な力で挿入する。
抜き方のコツ: ピンポンチや潤滑剤を活用し、固着を防ぎつつ安全に抜く。
🚫 注意点: 部品の破損を防ぐため、工具選定や力加減に注意する。

はじめ
はじめ

スプリングピンはシンプルな部品ながら、
正しい取り扱いでその性能を最大限発揮します。
作業現場での効率と安全を高めるためにも、
この記事を参考にぜひ実践してみてください!

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スプリングピンの選定ポイント

スプリングピンを選定する際には、以下のポイントに注意する必要があります。

使用環境

スプリングピンの材質は、使用する環境に応じて選定する必要があります。
たとえば、腐食のリスクがある環境ではステンレススプリングピンが推奨されます。
高温や低温環境では、その温度範囲での材質の耐性を考慮します。

挿入穴の公差

スプリングピンを使用する際には、挿入する穴の内径公差が重要です。
公差が適切でない場合、ピンが適切に固定されないことがあります。
穴の径が小さすぎると、ピンの挿入が難しくなり、大きすぎると固定力が弱くなります。
一般的に呼び径と同じキリ穴でも使用できます。
穴径公差ではH12という規格があります。

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挿入力と抜去力

スプリングピンは弾性により固定されるため、
挿入力や抜去力を設計に合わせて選定します。

例えば、取り外しが頻繁に必要な場合には、
簡単に抜去できるピンを選ぶことが重要です。

まとめ

スプリングピンは、弾性を活用した優れた固定力と衝撃吸収性能を持つ部品です。

その弾性によって部品のずれや緩みを防ぎ、
振動のある環境や取り外しが頻繁に必要な機械設計において特に有用です。

スプリングピンの種類や選定ポイントを理解し、
適切な材質やタイプを選ぶことで、
機械設計における精度と耐久性を向上させることが可能です。

スプリングピンを適切に選定することで、
メンテナンスの容易さや耐久性、
そして機械全体の効率性を最大限に引き出すことができます。



はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった
基本的な要素部品の機能と選び方を
詳しく紹介します。

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