平ベルトは、産業用機械や各種設備で
動力伝達を行うための重要な部品の一つです。
円滑な動力伝達、静音性、効率的なエネルギー伝達を
求められる場面で広く使用されています。
この記事では、平ベルトの特性と、
選定時に考慮すべきポイントについて詳しく解説します。
平ベルトの特性
伝達トルクと動力
ベルトが伝達できるトルクと動力は、設計の要となります。
過剰なトルクや動力がかかると、ベルトが伸びたり、摩耗が激しくなったりします。
伝達する動力の大きさに応じて、適切な強度を持つベルトを選定することが必要です。
回転速度
高速回転する機械に使用される場合、ベルトの耐久性や剛性が重要になります。
高速回転に適していますが、選定する際には、
ベルトの材質や厚みが十分に耐えられるかを確認することが重要です。
ベルトの幅と長さ
ベルトの幅や長さは、ベルトが伝達できる力や機械の配置に影響します。
機械のレイアウトや設計によって、適切なベルトのサイズを選定する必要があります。
ベルトの幅が広いほど、大きなトルクを伝達できますが、
機械の構造とのバランスを取ることも重要です。
温度や環境への耐性
ベルトが使用される環境の温度や湿度、
油や化学薬品の影響なども考慮する必要があります。
高温や低温、化学的な影響を受ける環境では、
耐熱性や耐薬品性に優れたベルトを選定します。
摩耗とメンテナンス性
ベルトは、長期間使用することで摩耗します。
耐摩耗性の高い材質や、摩耗後に
簡単に交換できる設計を考慮することが重要です。
ベルトのテンション調整や張り具合の調整が
容易であるかも選定時のポイントです。
取り付けのしやすさ
ベルトの交換や取り付けの作業性も重要な要素です。
頻繁にベルト交換が必要な機械では、
取外しや取付が簡単に行えるような設計が求められます。
軽量で柔軟なベルトは、取り扱いが容易で、作業効率が向上します。
コストと供給
ベルトのコストや供給のしやすさも考慮する必要があります。
特殊な材質や形状のベルトは、供給が限定されることがあります。
メンテナンスや部品の調達が容易であるかを確認することが重要です。
平ベルトの具体的な用途例
平ベルトは、多くの産業機械や設備で使用されています。
以下は、平ベルトが使われる代表的な場面です。
🔍 コンベアシステム
▶ 平ベルトは、荷物の搬送や製品の移動に使用される。
▶ コンベアシステムで一般的に使用されています。
▶ 柔軟な動力伝達と静音性が求められるため、平ベルトが最適です。
🔍 包装機械
▶ 包装機や食品加工機など、高速で正確な動作が求められる場面でも使用されます。
▶ 摩耗が少なく、定期的なメンテナンスも簡単なため、長期間の運転が可能です。
🔍 繊維工場の機械
▶ 平ベルトは、糸や織物の処理を行う機械で使われます。
▶ 滑らかな動力伝達と静音性が求められるため、平ベルトの特性が活かされます。
平ベルトの蛇行対策
平ベルトは効率的に動力を伝達できるため、多くの機械設計に採用されています。
しかし、蛇行(ベルトがプーリーの中央から外れる現象)が発生すると
効率低下や部品の損傷を引き起こす可能性があります。
本記事では、平ベルトが蛇行する原因とその対策について解説します。
平ベルトが蛇行する主な原因
プーリーの位置や角度の不整合
プーリーが平行でない場合、ベルトが特定方向に引っ張られ蛇行します。
下記に図.1と図.2の解説をします。

🔍 図.1 平ベルトが張力の弱い方向に移動する理由
平ベルトは、運転中に両端のプーリー間で張力の差が生じた場合、
張力が弱い方向に移動する性質を持っています。
この現象は、ベルトの動きが張力の強い側に引っ張られる一方で、
弱い側では抑え込む力が不足するために発生します。
具体的には以下のような要因が関係しています。
✅ ベルトの摩擦とエネルギーの最小化
ベルトは動作中に摩擦が最小になる経路を自然と選ぼうとします。
この結果、張力が弱い方向へと移動しやすくなります。
✅ 張力差によるベルトの偏り
プーリー間の張力が均等でない場合、
ベルトは張力の弱い側に引っ張られる傾向があります。
これは、張力の強い側でベルトがしっかりと位置を固定される一方で、
弱い側ではベルトが自由に動きやすくなるためです。
✅ プーリーの傾きや不整合
プーリーがわずかに傾いている、または軸が正確に平行でない場合、
ベルトの張力に不均一が生じ、弱い張力の方向にベルトが蛇行しやすくなります。
🔍 図.2 平ベルトはプーリーに対して直角方向に排出される。
平ベルトが蛇行する際の挙動は、プーリー(特にヘッドプーリー)の角度や設置状態に大きく影響されます。ベルトがヘッドプーリーを通過すると、ベルトはプーリーの角度に基づいて直角方向に排出されます。この性質により、プーリーが傾いている場合、その傾き方向にベルトが徐々に移動していく現象が発生します。
📌 原理の詳細
- プーリー通過時の法則
- ベルトがプーリーを過ぎる際、プーリーの接触部分がベルトの進行方向を決定します。
- プーリーが完璧に水平であればベルトは一直線に移動します.
- しかし、プーリーが傾いている場合、ベルトの進路もその傾きに影響されます。
- ベルトの動きの原則
- ベルトは、摩擦や張力の影響でプーリーに沿って移動します。
- ヘッドプーリーでの角度により、ベルトの張力が一方向に偏ります。
- その結果、ベルト全体がプーリーの傾き方向に移動する傾向を示します。
- 蛇行の拡大
- プーリーのわずかな傾きでも、ベルトはその方向に繰り返し移動し続けます。
- この動作が連続することで、蛇行がより顕著になります。
上記のように、ベルトがどちらに寄るかは様々な要因が絡みます。

調整時は一度稼働させてから、どちらに調整するか思慮しましょう。
ベルトの張力不足または不均一な張力
張力が弱い、または不均一だとベルトが安定しません。
摩耗や劣化したベルト
ベルトの片側が摩耗するとバランスが崩れ蛇行が発生します。
ベルト自体の不良
製造時の不均一性や湾曲が原因で蛇行する場合があります。
蛇行対策と設計上の工夫
プーリーに調整機能を付ける
📌 対策内容
プーリーの位置や角度を微調整できる設計にすることで、ベルトの動きを安定させます。
🔍具体例
調整可能なプーリーブラケットを採用し、プーリーの傾きや平行度を簡単に修正。
プーリーにクラウン加工を施す
📌 対策内容
プーリーの中央部分をわずかに高くする「クラウン加工」を行うと、
ベルトが自然にプーリーの中心に戻る効果があります。
✅ メリット
自動的に蛇行を防止するため、メンテナンスの手間を軽減。
🚫 注意点
過剰なクラウン加工は摩耗を早める可能性があるため、適切な設計が必要です。
桟付きベルトを使用する
📌 対策内容
桟(ガイド用の突起)がついたベルトを使用し、蛇行を物理的に防ぎます。
🔍 用途
ベルトが常に一定の位置を保つ必要がある高精度機構で有効。
🚫 注意点
プーリーにも桟用の溝が必要になるため、設計の手間が増します。
その他の補足対策
ベルトの張力を均一にする張力調整機構を設ける。
摩耗や劣化したベルトは定期的に交換する。
ベルト材質を見直し、蛇行しにくいものを選定する。
平ベルトの蛇行は、機械全体の動力伝達に悪影響を及ぼすため、
設計段階から適切な対策を講じることが重要です。
プーリーの調整機能やクラウン加工、桟付きベルトの使用などの
対策を採用することで、蛇行を最小限に抑えられます。
また、定期的な点検やメンテナンスを怠らないことも、
ベルトの安定性を保つために欠かせないポイントです。

適切な平ベルトを選定することで、
動力伝達が円滑に行われ、機械全体の効率が向上します。
主なメーカー
バンドー化学株式会社 メーカーページはこちら
三ツ星ベルト株式会社 メーカーページはこちら
まとめ
平ベルトは、静音性や高い伝達効率、柔軟性など、多くの特性を持ち、
様々な機械に適用可能な動力伝達部品です。
適切な選定を行うことで、
機械の性能や耐久性を最大限に引き出すことが可能です。
選定時には、伝達トルク、回転速度、環境条件、
ベルトの寸法などを慎重に検討し、
最適なベルトを選ぶことが重要です。




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