機械設計を行う際、部品の選定は設計全体のコスト、納期、品質に大きな影響を与えます。特に、「標準品を使用するか、それとも特注品を採用するか」 という判断は、設計の効率や製造コストを大きく左右する重要なポイントです。
本記事では、標準品と特注品の違い、それぞれのメリット・デメリット、そして設計時の考慮ポイント について詳しく解説します。
標準品と特注品の違い
項目 | 標準品 | 特注品 |
---|---|---|
定義 | 市販されている既製品 | オーダーメイドで製作する部品 |
入手性 | すぐに購入可能 | 製造リードタイムが必要 |
コスト | 量産されているため低コスト | 製造コストが高くなる |
設計自由度 | 規格が決まっているため制約がある | 任意の仕様で設計可能 |
品質 | 規格に基づき安定している | 試作・検証が必要な場合がある |
納期 | 即納または短納期 | 設計・製造・検査が必要で長納期 |
標準品を使用するメリット・デメリット
標準品のメリット
✅ コスト削減:大量生産されているため、特注品に比べて単価が安い
✅ 短納期:既に製造されているため、即納または短期間で入手可能
✅ 信頼性が高い:規格品のため、品質が安定している
✅ 設計工数の削減:既存の仕様に合わせることで、設計作業を軽減
標準品のデメリット
🚫 サイズや仕様に制約がある:設計意図に完全に合致しないことがある
🚫 機械の性能に最適でない場合がある:必要な強度や剛性を満たせないことも
🚫 無駄なスペースが生じることがある:既製品のため、ぴったりのサイズがない場合がある
特注品を使用するメリット・デメリット
特注品のメリット
✅ 設計自由度が高い:機械の要求仕様に完全に適合した設計が可能
✅ 最適な性能を実現できる:強度・剛性・耐久性など、理想的な仕様で設計できる
✅ 省スペース化が可能:不要な部分を排除し、コンパクトに設計可能
特注品のデメリット
🚫 コストが高い:1品ずつの製作になるため、単価が高くなる
🚫 納期が長い:設計・製造・検査の工程が必要なため、調達に時間がかかる
🚫 試作・検証が必要:設計ミスや製造不良が発生する可能性があるため、事前の確認が必要
設計時の考慮ポイント(標準品と特注品の選定基準)
可能な限り標準品を活用する
コストや納期を考慮すると、基本的には標準品を優先的に使用 するのが望ましいです。
設計時には、以下の点を確認しましょう。
🔹 JIS規格やISO規格に適合する部品を選ぶ
🔹 市販品の寸法や強度が要求仕様を満たしているか確認
🔹 標準品の組み合わせで対応できるか検討する
例えば、ボルト・ナット・ベアリング・チェーン・リニアガイド・モーターなどは、多くの標準品が市販 されており、適切な選定を行えば特注品を作る必要はありません。
特注品を採用するべきケース
以下のような場合は、特注品の検討が必要になります。
🔸 標準品では要求仕様を満たせない場合
例:特定の形状や強度が必要なシャフトやフレーム
🔸 設計スペースの制約が厳しい場合
例:標準品ではスペースに収まらず、特注部品を作成する方が合理的
🔸 製造コストよりも性能や品質が重要な場合
例:高精度機械の重要部品(特注のギアや精密加工部品など)
例えば、カップリングや特殊な取り付けブラケット などは、標準品が合わない場合に特注品を作成することがあります。
消耗部品や交換部品は標準品を使用することが重要!
機械設計において、消耗部品や交換部品の選定は、機械のメンテナンス性や運用コストに大きく影響 します。特に、標準品を使用するか、それとも特注品を採用するか という選択は、設備の稼働率や維持費を大きく左右します。
本項では、消耗部品や交換部品に標準品を使用する重要性 について、詳しく解説します。
消耗部品・交換部品とは?
まず、消耗部品・交換部品 の定義を確認しましょう。
🔹 消耗部品:使用することで摩耗・劣化し、一定期間ごとに交換が必要な部品
🔹 交換部品:破損・故障した際に交換が可能な部品(消耗品でない場合も含む)
主な消耗部品・交換部品の例
- 軸受(ベアリング)
- Oリング・オイルシール
- Vベルト・タイミングベルト
- チェーン・スプロケット
- ボルト・ナット・ワッシャー
- エアフィルター・オイルフィルター
- リニアブッシュ・ボールねじ
- 摺動面のブッシュ・ガイドレール
消耗部品・交換部品に標準品を使用するメリット
消耗品や交換部品には、特注品ではなく標準品を使用することが推奨 されます。その理由を見ていきましょう。
供給が安定し、短納期で入手できる
✅ 標準品はすぐに調達可能 → 機械のダウンタイムを最小限に抑えられる
✅ 特注品は納期が長く、急な交換時に間に合わない
例えば、特注サイズのOリングを使用している場合、市販のOリングよりも納期が長く、急な交換が必要になったときに機械が停止するリスク があります。
コストを抑えられる
✅ 標準品は量産されているため、低コストで入手可能
✅ 特注品は1点モノの製作となるため、製造コストが高くなる
例えば、ベアリングやボルトなどを特注サイズにすると、1個あたりの単価が何倍にも跳ね上がる ことがあります。また、特注部品は製作費用だけでなく、管理コストや在庫リスクも増加 します。
互換性があり、交換作業がスムーズ
✅ 規格品なら、どのメーカーからでも同じ規格で調達可能
✅ 特注品は製造メーカーが限られ、供給が不安定になる
例えば、JIS規格のボルトやISO規格のベアリング を使用すれば、メーカーが異なっても同じ規格で入手できるため、部品の手配が容易 になります。一方、特注品は同じものを作るのに特定のメーカーに依存 しやすく、製造中止や価格高騰のリスク があります。
メンテナンスの負担を軽減できる
✅ 規格品なら、現場作業者が簡単に交換できる
✅ 特注品は交換手順が複雑になり、専門技術が必要になることも
例えば、市販のベルトやフィルター なら、保守マニュアルに従って簡単に交換可能 ですが、特注品は交換手順が複雑になり、専門知識や専用工具が必要になるケース があります。
特注品を避けられないケースとその対策
標準品の使用が推奨されるとはいえ、どうしても特注品を使用しなければならないケース も存在します。
標準品では性能を満たせない場合
✅ 例:特定の耐熱性・耐薬品性が必要なシール材
✅ 対策:可能な限りJIS規格・ISO規格内で近いものを選ぶ
機械の構造上、特定のサイズが必要な場合
✅ 例:標準ベアリングでは適切なクリアランスが取れない場合
✅ 対策:なるべく標準サイズに設計を合わせる工夫をする
省スペース化のための特殊設計
✅ 例:極薄の摺動ブッシュが必要な場合
✅ 対策:特殊部品を使用する際は、交換方法を事前に考慮しておく
設計時のポイント:できるだけ標準品で対応する工夫
🔹 規格品に合わせた設計を行う(JIS、ISOなど)
🔹 一般流通しているサイズを選定する
🔹 標準品の組み合わせで対応できるように設計を工夫する
🔹 交換がしやすい設計(工具のスペース確保、着脱性向上)を考える
例えば、特殊なOリングサイズを使うのではなく、市販のOリングが使えるように溝寸法を設計する ことで、調達コストやメンテナンス負担を軽減できます。
消耗部品・交換部品には標準品を活用しよう!
✅ 標準品は入手しやすく、コストが低い
✅ 特注品は納期や価格、供給の不安定さがデメリット
✅ 標準品を使うことでメンテナンス性が向上し、機械の稼働率が上がる
✅ どうしても特注品が必要な場合は、交換方法や調達リスクを考慮して設計する

「消耗品や交換部品はなるべく標準品を使用する」 という設計思想を持つことで、長期的に見てコスト削減やメンテナンスの効率化につながります。
設計段階から、「この部品は交換しやすいか?」 を意識し、機械全体の保守性向上を目指しましょう!
まとめ:標準品と特注品の使い分けが重要!
設計において、標準品をうまく活用しながら、必要な部分には特注品を導入する ことで、コスト・納期・品質のバランスを取ることが重要です。
✅ 可能な限り標準品を活用し、コスト・納期を最適化
✅ 標準品の制約を理解し、無理なく設計に組み込む
✅ どうしても必要な場合のみ特注品を採用する
この考え方を取り入れることで、効率的な機械設計 を実現し、スムーズな製造・組立が可能になります。設計時にしっかりと部品の選定を行い、最適な設計を目指しましょう!
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