【空圧機器】ロータリージョイントの特徴と選定ポイント【回転・揺動】

動力選定

ロータリージョイントは、回転する部品に対して流体(空気、油、水、蒸気など)を供給・排出するための継手です。特に空圧機器におけるロータリージョイントは、エアシリンダーやロボットアームなどの回転部に圧縮空気を供給するために使用されます。

本記事では、空圧機器用ロータリージョイントの基本的な特徴、用途、選定時のポイントについて詳しく解説します。


空圧機器用ロータリージョイントとは?

空圧機器用のロータリージョイントは、圧縮空気を回転する機械部品に供給するための回転継手です。

エアチャック(空圧式の把持装置)に圧縮空気を供給する
回転アクチュエーターへエアを送り、動作を制御する
空圧クラッチやブレーキにエアを供給し、トルクを制御する
ロボットアームなどの回転機構に圧縮空気を送る

これらの用途では、エアホースを固定配管にするとねじれや断裂のリスクがあるため、ロータリージョイントが不可欠になります。


空圧機器用ロータリージョイントの特徴

回転しながら空気を供給可能

通常、配管を直接接続すると、回転運動によってホースがねじれてしまいます。しかし、ロータリージョイントを使用することで、回転しながら圧縮空気を安定供給できます。

これにより、
配管のねじれや破損を防止できる
空圧機器の動作がスムーズに行える
ホースの摩耗や断裂を防ぎ、メンテナンスコストを削減できる


複数の空圧ラインを供給可能(マルチポート構造)

空圧機器では、複数のエア回路を制御する必要がある場合があります。そのため、ロータリージョイントには単通路(1ポート)タイプと複数通路(マルチポート)タイプがあります。

単通路(1ポート)タイプ

  • シンプルなエア供給に使用(例:単純なエア駆動機構)

複数通路(マルチポート)タイプ

  • 異なる圧力のエア供給や、複数の空圧アクチュエーターを制御(例:エアチャック+ブレーキの併用)

マルチポートタイプを使用すると、複数のエア回路を1つのロータリージョイントでまとめることができるため、配管をスッキリさせることが可能です。


シール性能が重要(エア漏れ対策)

圧縮空気を使用するため、シール性能が低いとエア漏れが発生し、エネルギーロスや動作不良の原因になります。

テフロン(PTFE)シール:低摩擦で長寿命だが、高圧には弱い
ゴムシール(NBR, FKM):柔軟性が高く耐摩耗性があるが、高速回転には向かない
メカニカルシール:耐久性が高いが、高コスト

使用環境に応じて、適切なシール材を選ぶことが重要です。


高速回転や高圧に対応したタイプがある

空圧機器の使用環境によって、ロータリージョイントにはさまざまな仕様があります。

低速・低圧タイプ(一般的な空圧機器)
   → シンプルな構造で、汎用性が高い

高速回転タイプ(スピンドルエア供給など)
   → 低摩擦シールを採用し、高速回転でも安定供給

高圧タイプ(特殊なエア駆動装置)
→ 耐圧性の高いシールを採用し、エア漏れを最小限に

使用条件に合ったロータリージョイントを選ぶことが重要です。


回転しながら空気を供給できる利点と重要性

機械設計において、回転しながら空気を供給することが求められる場面は多くあります。例えば、エアチャック、ロボットアーム、空圧クラッチ、回転テーブルなどの空圧機器では、配管がねじれたり破損したりせずに安定した圧縮空気を供給することが重要です。

この問題を解決するのが 「ロータリージョイント」 です。ロータリージョイントは、回転しながら空気を供給できる特殊な継手であり、機械の性能向上やメンテナンスコストの削減に大きく貢献します。

本項では、ロータリージョイントがもたらす利点と、その重要性について詳しく解説します。

回転しながら空気を供給できる利点

ロータリージョイントの最大の特徴は、回転しながら安定した空気供給が可能になることです。この機能により、多くのメリットが得られます。

エアホースのねじれ・破損を防止できる

通常、回転機構に直接エアホースを接続すると、回転によりホースがねじれ、劣化や破損の原因になります。

🚫 エアホースのねじれが発生すると…

  • エアの流れが不安定になり、機械の動作が不安定になる
  • ホースの劣化が早まり、交換頻度が増える
  • 断裂した場合、エア漏れや機械の停止を招く

ロータリージョイントを使用すると…

  • ホースが回転せずに固定されるため、ねじれが発生しない
  • ホースの寿命が延び、メンテナンスコストが削減できる
  • 機械の安定稼働が可能になる

機械の動作をスムーズにできる

エア供給がスムーズでないと、動作の遅延や動きの不安定さが発生します。特に、エア駆動のロボットアームやエアチャックでは、空気の流れが安定していないと動作の精度が低下することがあります。

ロータリージョイントを使用すると…

  • エア供給が安定し、機械の動作がスムーズになる
  • エアチャックやシリンダーが素早く動作し、生産効率が向上
  • バキューム機能付きの回転機構でも、安定した吸着力を維持

回転機構の自由度が向上する

ロータリージョイントを使用すると、回転運動の制約がなくなるため、設計の自由度が向上します。

🚫 ロータリージョイントなしの場合…

  • エアホースの取り回しが複雑になり、可動範囲が制限される
  • エアホースを回転防止のためにガイドする必要があり、設計が面倒

ロータリージョイントを使用すると…

  • 配管の制約がなくなり、コンパクトな設計が可能
  • 回転範囲が広がり、機械の自由度が向上
  • ロボットアームなどの回転角度を大きく確保できる

エア漏れのリスクを最小限にできる

ロータリージョイントは、内部に高性能なシール構造を持ち、回転しながらもエア漏れを最小限に抑える設計になっています。

🚫 ホースのねじれや劣化によるエア漏れが発生すると…

  • 空気の供給圧が低下し、機械の性能が低下する
  • エア消費量が増え、エネルギーコストが上昇する

ロータリージョイントを使用すると…

  • 適切なシール構造によりエア漏れを防止
  • エネルギーロスを削減し、エアコンプレッサーの負担を軽減

回転しながらエアを供給することの重要性

ロータリージョイントを使用することは、単にホースを守るだけではなく、機械全体の安定稼働や生産性向上にも大きく貢献します。

生産性向上:機械の停止時間を減らし、作業効率を向上させる
メンテナンスコスト削減:ホースや配管の交換頻度を低減
機械の長寿命化:エア供給が安定することで、アクチュエーターの負担を軽減
安全性向上:ホースのねじれによるトラブルを防ぎ、作業現場の安全を確保

特に、自動化機械やロボットの回転軸において、ロータリージョイントの使用は不可欠です。


空圧機器において、回転しながら空気を供給できることは、機械の安定稼働やメンテナンス性向上に直結する重要なポイントです。

🔍 ロータリージョイントの利点まとめ
エアホースのねじれ・破損を防止し、耐久性向上
スムーズなエア供給で、機械の動作を安定化
回転機構の自由度が向上し、設計の柔軟性が増す
エア漏れを最小限にし、エネルギーコストを削減

空圧機器用ロータリージョイントの主な用途

空圧機器のロータリージョイントは、多くの産業機械で使用されています。

エアチャック・エアグリッパー:回転しながらエア供給
空圧クラッチ・ブレーキ:トルク制御のためのエア供給
ロボットアーム:回転関節部へのエア供給
包装機械・食品加工機械:空圧アクチュエーターの回転駆動
工作機械(スピンドルエア供給):切削加工時のエアブロー

回転機構を持つ機械では、ロータリージョイントなしではスムーズなエア供給が難しいため、重要な機械要素として活用されています。


空圧機器用ロータリージョイントの選定ポイント

供給するエアの圧力と流量

低圧(0.2~0.6MPa):一般的な空圧システム
中圧(0.6~1.0MPa):強いエア駆動が必要な場合
高圧(1.0MPa以上):特殊用途(例:空圧タービンなど)

適切な圧力範囲のロータリージョイントを選定し、エア漏れを最小限に抑えることが重要です。


回転速度(RPM)

低速(100rpm以下):一般的な空圧アクチュエーター
中速(100~500rpm):エアチャックやロボットアーム
高速(500rpm以上):スピンドルや特殊用途

回転速度が高いほど、シールの摩耗やエア漏れのリスクが増加するため、高速対応のモデルを選ぶ必要があります


ポート数(単通路orマルチポート)

単通路:単純なエア供給(1つのエア回路)
マルチポート:複数のアクチュエーターを制御(2~10通路以上)

複数のエア回路が必要な場合は、マルチポートのロータリージョイントが有効です。


メンテナンス性

シール交換が容易なモデルを選ぶ
異物混入を防ぐためのフィルター設置
定期的なグリスアップや潤滑が不要なタイプを選ぶと負担軽減


まとめ

空圧機器用のロータリージョイントは、回転する機械要素へ安定した圧縮空気を供給するために不可欠な部品です。選定時には、圧力、回転速度、ポート数、シール材の耐久性を考慮し、適切なモデルを選ぶことが重要です。

適切なロータリージョイントを選定することで、機械の安定稼働とメンテナンスコストの削減が可能になります。



はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、機械の駆動源に関する基礎知識と選定基準をまとめています。

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