【排気処理】サイレンサーとエキゾーストクリーナーの特徴と使い分け【注意点】

動力選定

機械設計において、空圧機器やコンプレッサーを使用する際、排気処理は作業環境の静音化や清浄化に重要な役割を果たします。代表的な排気処理装置としてサイレンサー(消音器)エキゾーストクリーナー(排気清浄装置)があります。それぞれの特徴と使い分けについて解説します。


サイレンサー(消音器)の特徴と用途

特徴

サイレンサーは、空圧機器からの排気音を低減するための装置です。排気口に取り付けることで、空気が排出される際に発生する騒音を吸収・拡散し、作業環境を改善します。

  • 内部構造:多孔質の金属や樹脂フィルターを使用し、排気音を拡散・吸収
  • 騒音低減効果:装置や環境によって異なるが、10〜30dB程度の消音が可能
  • コンパクトで、ほとんどの空圧機器に簡単に取り付け可能

用途

  • エアシリンダーや電磁弁の排気音を抑える
  • 作業現場の騒音対策
  • オフィスやクリーンルームなどの静音環境での使用

エキゾーストクリーナー(排気清浄装置)の特徴と用途

特徴

エキゾーストクリーナーは、排気に含まれる油分やミストを除去するための装置です。空圧機器の排気には、潤滑油や微細な異物が含まれることがあり、そのまま排出すると作業環境の汚染につながります。エキゾーストクリーナーを使用することで、空気中の油ミストを除去し、環境の清潔性を向上させます。

  • 内部構造:特殊フィルターや活性炭を用いて油分・異物をキャッチ
  • 排気のクリーン化:オイルミストを大幅に除去し、作業環境の汚染を防ぐ
  • 定期的なフィルター交換が必要(目詰まりすると排気抵抗が増加)

用途

  • 食品工場やクリーンルームなどの清潔な環境を求める現場
  • エアブローや空圧シリンダーの排気の油分除去
  • 作業者の健康被害を防ぐための環境対策

エキゾーストクリーナーの消音効果とその活用

空圧機器を使用する際、排気音の大きさは作業環境に大きく影響します。特に、エアシリンダーや電磁弁の排気音は騒音源となり、長時間の作業では作業者の負担にもなります。こうした問題を解決するために、エキゾーストクリーナー排気の清浄化だけでなく、消音効果も持っていることはあまり知られていません。本記事では、エキゾーストクリーナーの消音効果とその活用について詳しく解説します。


エキゾーストクリーナーの基本構造と消音の仕組み

エキゾーストクリーナーは、空圧機器の排気に含まれるオイルミストや異物を除去する装置ですが、その構造上、排気音を低減する役割も果たします。

エキゾーストクリーナーの構造

  • 多層フィルター構造:オイルミストや微粒子を除去するために複数のフィルターを通過
  • 減圧構造:排気の速度を落とすことで音の発生を抑制
  • 消音材の使用:一部の製品には消音材が含まれており、音の拡散を防ぐ

消音の仕組み

排気音は、圧縮空気が急激に大気へ放出される際の衝撃波が原因です。エキゾーストクリーナーは、以下の仕組みによって消音を実現します。

  1. 排気の減圧:内部のフィルターを通過することで、排気の勢いを弱め、急激な空気の放出を抑える
  2. 音の拡散と吸収:フィルターや多孔質構造が、音波を吸収・拡散し、騒音レベルを低減
  3. 低周波成分の抑制:排気音の中でも耳障りな低周波音(ブワーッという音)を効果的に低減

エキゾーストクリーナーの消音効果の実例

エキゾーストクリーナーの消音効果は、一般的なサイレンサーと比較しても高い場合があります。以下のような現場で特に効果を発揮します。

工場の静音化

  • 工場の生産ラインでエアシリンダーを多用する場合、複数の排気音が合わさり大きな騒音となる
  • エキゾーストクリーナーを取り付けることで、平均10〜20dBの騒音低減が可能
  • 結果として、作業者の負担軽減職場環境の改善につながる

クリーンルームや精密作業環境

  • クリーンルームでは、排気の清浄化だけでなく騒音対策も求められる
  • 精密作業エリアでは、音による振動が製品の品質に影響するため、消音効果が重要

近隣環境への影響軽減

  • 排気音が屋外に漏れると、近隣住民や他の作業者への迷惑となる
  • エキゾーストクリーナーを使用することで、周囲環境への騒音影響を軽減

エキゾーストクリーナーとサイレンサーの使い分け

エキゾーストクリーナーとサイレンサーは、どちらも消音効果を持ちますが、目的と効果範囲が異なります。

比較項目エキゾーストクリーナーサイレンサー(消音器)
主な目的排気中の油ミスト除去 & 消音排気音の低減
消音効果10〜20dB程度低減10〜30dB低減
使用場所クリーンルーム、工場、環境対策が必要な現場一般的な工場・作業現場
メンテナンス定期的なフィルター交換が必要ほぼ不要
取り付け排気系統のスペースが必要直接装着が可能

➡ サイレンサーは「音だけを抑える」装置として使われることが多いですが、
➡ エキゾーストクリーナーは「排気のクリーン化と消音を同時に行う」点が大きなメリットです。


エキゾーストクリーナーの選定ポイント

エキゾーストクリーナーを選定する際には、以下のポイントを考慮すると適切な製品を選べます。

排気音の低減がどの程度必要か?
→ 騒音が問題になる環境なら、消音効果の高いモデルを選定

排気の清浄度がどこまで求められるか?
食品工場やクリーンルームなら高性能フィルター搭載モデルを選ぶ

メンテナンスのしやすさ
→ フィルターの交換が容易なものを選ぶと、維持管理が楽

既存の設備との適合性
→ エアシリンダーや電磁弁の排気口サイズに合わせたモデルを選定


エキゾーストクリーナーで快適な作業環境を実現

エキゾーストクリーナーは、排気の清浄化消音の両方を兼ね備えた装置です。

  • 排気の勢いを抑えて、排気音の発生を低減
  • 音の拡散・吸収により、10〜20dB程度の騒音をカット
  • クリーンルームや工場環境で、静音化と清潔な空気を確保
  • サイレンサーと異なり、油ミストの排出を抑えることで環境対策にも貢献

特に、騒音と排気汚染が同時に問題となる現場では、エキゾーストクリーナーの導入が有効です。作業環境の改善に向けて、適切な製品を選定し、快適で安全な空圧システムを構築しましょう!

排気処理の注意点:排気量低下と効率低下の影響

空圧機器の運用では、排気処理が重要な役割を果たします。特に、サイレンサーエキゾーストクリーナーを使用することで騒音や排気汚染を抑えることができますが、これらを適切に選定しないと排気量が低下し、機械の効率が落ちるという問題が発生します。

本項では、排気量低下が空圧システムに与える影響や、それを防ぐための適切な選定・対策について詳しく解説します。


排気量低下が機械の動作に与える影響

サイレンサーやエキゾーストクリーナーは、空圧システムの排気口に取り付けることで、排気音を低減したり、排気中のオイルミストや異物を除去したりします。しかし、これらを取り付けることで以下のような影響が発生します。

排気抵抗の増加

サイレンサーやエキゾーストクリーナーには、排気を制御するための内部構造(多孔質のフィルターや流路)があるため、排気の流れが妨げられます。その結果、排気に対する抵抗(バックプレッシャー)が増加し、空気の流れがスムーズでなくなります。

シリンダーやアクチュエータの動作遅延

排気がスムーズに行われないと、シリンダーやエアモーターなどの動作が遅くなります。これは、排気が十分に抜ける前に次の動作が開始されるため、作動速度が低下することが原因です。

例:シリンダーの動作

  • 排気がスムーズな場合:エアシリンダーが素早く伸縮し、設計通りのサイクルタイムを実現
  • 排気が詰まっている場合:排気が残り、戻り速度が低下 → システム全体の効率が低下

圧力損失による消費エネルギーの増加

排気口での抵抗が増えると、システム全体の圧力損失が大きくなります。その結果、所定の動作を維持するために余分なエネルギーが必要になり、エアコンプレッサーの負荷増大 → エネルギー消費の増加につながります。

排気の詰まりによる機械トラブル

特にエキゾーストクリーナーでは、フィルターが目詰まりを起こすと、排気がほとんど流れなくなることがあります。これにより、以下のようなトラブルが発生します。

  • シリンダーやバルブの動作が不安定になる
  • 排気が滞ることで内部圧力が変化し、誤作動が発生
  • 最悪の場合、排気が完全に詰まり、機器が停止する

サイレンサーとエキゾーストクリーナーの排気量低下の具体例

サイレンサーによる影響

サイレンサーは主に消音を目的としていますが、内部の構造によっては排気抵抗が大きくなり、以下のような影響が出ます。

サイレンサーの種類特徴排気量低下のリスク
多孔質サイレンサー内部が細かい孔で構成され、消音効果が高い排気が詰まりやすく、抵抗が大きくなる
スリット式サイレンサースリット状の開口部を持ち、排気の流れを確保比較的排気量が確保されるが、詰まりやすい
大口径サイレンサー排気量を確保しつつ消音する構造排気の流れが比較的スムーズ

特に、多孔質サイレンサーは長期間使用すると内部が詰まりやすく、排気量が低下しやすいため、定期的な清掃や交換が必要です。

エキゾーストクリーナーによる影響

エキゾーストクリーナーは、オイルミストや異物を取り除くためにフィルターを通過させる構造になっています。そのため、フィルターの目詰まりが排気量低下の原因になります。

エキゾーストクリーナーのタイプ特徴排気量低下のリスク
標準タイプ一般的な排気清浄用定期交換しないと目詰まりしやすい
大容量タイプ排気量の多い設備向け排気量は確保しやすいが、サイズが大きい
自動排出タイプミストを自動で排出目詰まりしにくいが、高価

特に標準タイプのフィルターは、定期的なメンテナンスを怠ると、急激に排気量が低下するため、注意が必要です。


排気量低下を防ぐための対策

排気処理を適切に行いながら、排気量低下を防ぐためには以下の対策が有効です。

適切なサイズのサイレンサー・エキゾーストクリーナーを選定する

  • 排気口のサイズに適合した製品を選ぶ
  • 余裕のある流量(排気量)が確保できるモデルを選定
  • メーカーの仕様書で圧力損失の少ないものを確認
エア配管についての詳細記事はこちら

メンテナンスを定期的に行う

  • サイレンサーやエキゾーストクリーナーの詰まりを定期的に点検
  • エキゾーストクリーナーのフィルターは定期交換を徹底
  • フィルター自動排出機能付きのものを使用すると管理が楽

排気の流れを考慮したレイアウトにする

  • 直線的な排気経路を確保し、余計な曲がりを減らす
  • 排気口のすぐ近くにサイレンサーやエキゾーストクリーナーを設置する
  • 排気流量が多い場合は複数の排気口を用意し、圧力損失を分散させる

排気処理のバランスが機械効率を左右する

サイレンサーやエキゾーストクリーナーを適切に活用することで、騒音対策や排気清浄化が可能ですが、排気量低下による機械効率の低下には注意が必要です。

🔹 排気量低下が発生すると、機械の動作遅延・エネルギー消費増加・トラブルが発生する
🔹 適切な製品選定と定期的なメンテナンスを行うことで、排気量低下を防げる
🔹 排気の流れを考慮した設計が、効率的な空圧システムの構築につながる

機械の性能を最大限に発揮するために、排気処理と機械効率のバランスを考えた設計を心がけましょう!

まとめ

機械設計における排気処理には、サイレンサー(消音器)エキゾーストクリーナー(排気清浄装置)の2つの選択肢があります。

騒音低減を目的とする場合はサイレンサーを使用
排気の清浄化や油ミスト除去が必要な場合はエキゾーストクリーナーを選定
用途や環境に応じて排気処理を選定し、作業環境の快適性や安全性を向上させることが重要

適切な排気処理を行うことで、作業環境の快適性、設備の長寿命化、従業員の健康維持につながります。



はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、機械の駆動源に関する基礎知識と選定基準をまとめています。

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