ねじ・ボルトのサイズ(径・長さ)の選定方法とは?【初心者向け解説】

機械要素

機械設計や装置設計で頻繁に使われる「ねじ」ですが、適切なサイズを選ばないと、強度不足や部品破損、作業ミスなどのトラブルに繋がります。
この記事では、ねじの「径」と「長さ」の選定方法について、初心者でもわかりやすく解説します。


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ねじの「径」の選定方法

基本は「使用する部品の強度」と「締付け力」で決まる

ねじ径は、荷重に耐えられる強度があるか十分な締付け力が得られるかを基準に選定します。
主に使われるのは Mねじ(メートルねじ)で、M3、M4、M5、M6、M8…といったように表記されます。

ねじの呼び径(M寸法)一般的な用途例
M3~M4電子機器、精密部品
M5~M6小型機械、アルミフレーム接続
M8~M12中型機械、構造体の固定
M16以上重機や建築用途など大きな荷重を支える場合

材質やねじの等級によっても強度は変わる

たとえば、同じM6でも「ステンレス製(強度区分A2-70)」と「高強度ボルト(強度区分10.9)」では耐荷重が大きく異なります。


強度区分についての関連記事はこちら

ねじの「長さ」の選定方法

ねじ込み長さの目安(おおよそのルール)

ねじの長さは、母材にどれくらいねじ込むかで決まります。
一般的には以下のような目安があります。

材質ねじ込み深さの目安
鉄や鋼材呼び径の1~1.5倍
アルミ材呼び径の2倍以上
樹脂や弱い材料呼び径の2.5~3倍以上

たとえば、M6のねじをアルミ材に使う場合、
ねじ込み長さは12mm(6mm × 2)以上が目安です。


ねじ込み長さについての記事はこちら
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実際の長さ選定で考慮すべきポイント

ねじ(タップ)が貫通するのか or 止まり穴なのか

  • 貫通穴:適切なナットと組み合わせる。ナットの厚み+余長も考慮。
  • 止まり穴:底付きしないように「余裕長さ」をもたせて選定。

ワッシャーや部品の厚みも考慮

ねじ頭下から部品をすべて貫通する必要があるため、 プレート厚 + ワッシャー厚 + ナット厚 + 余裕分を足した長さを選びます。


ねじは想像よりも強い!〜その理由とメカニズムをわかりやすく解説〜

「ねじって、思ったよりも簡単に壊れるんじゃないの?」
そんなふうに思っていませんか?

実は、ねじは非常に強く設計されている部品のひとつです。
本項では、「なぜねじが強いのか?」をメカニズムや設計の考え方、安全率も交えて、初心者でもわかりやすく解説します。


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なぜねじは強いのか?

材料が高強度

ねじには、炭素鋼(S45C)や合金鋼(SCM435)など高強度な材料がよく使われています。
強度等級(例:10.9や12.9)を見ると、引張強さが1000MPa以上あることも珍しくありません。

強度区分引張強さの目安
8.8級約800MPa
10.9級約1000MPa
12.9級約1200MPa

👉 ボルトの等級が高いほど、大きな力に耐えられます。


引張にもせん断にも強い設計

ねじは荷重を「引張」「せん断」「ねじり」など複合的に受けますが、それに対応できるよう断面積と材質が選定されています。

引張強度計算の例(M10ボルトの場合)

断面積 ≒ 58mm²、材質:強度区分10.9(引張強さ 1000MPa)
→ 耐えられる引張荷重:
1000MPa × 58mm² = 約58,000N(≒5.9トン)

👉 M10ボルト1本で車1台を吊るせるほどの強度があります。

ねじの強度計算についての関連記事はこちら

ボルト締結の基本は「引張で押さえる」

ボルト締結では、部品同士を「面で密着させて摩擦力で固定」します。
このとき、ボルトは引張荷重で部品を締めつけているだけ。つまり、

  • ボルトにかかる力 → 一定の引張力のみ
  • 外からの衝撃やせん断力 → 接触面の摩擦で吸収

そのため、ねじ本体に直接大きな荷重がかからない構造になっています。

せん断荷重をかけない工夫についての関連記事はこちら

安全率をかけることも重要

設計の現場では、ねじにかかる荷重に対して安全率を必ず掛けて評価します。

安全率の考え方

  • 計算上の破断荷重:1000kg
  • 使用上の最大荷重:300kg
  • → 安全率 ≒ 3.3倍

👉 万が一の材料バラツキや衝撃荷重、長期使用による劣化を考えて、想定以上の強さをもたせて設計されているんです。

安全率についての関連記事はこちら

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それでも壊れるときはある!

「じゃあ絶対壊れないの?」…そんなことはありません。
以下のような不適切な使い方をすると、想像以上に早く壊れてしまうことも。

ねじが壊れる主な原因

原因説明
締めすぎ(オーバートルク)強度以上に締めるとねじが伸びて破断することがある
ねじ込み不足材料厚さが足りないと、ねじ山がちぎれる
繰り返し荷重疲労破壊につながる(特に振動)
錆び腐食によりねじの断面が減り、強度が低下
過小設計強度を見積もらずに適当に選定すると危険

ねじは想像以上に強い!でも設計と使い方がカギ

✅ ねじは高強度材料+合理的な構造で、非常に強い
✅ 引張やせん断にも耐えるようにしっかり計算された設計
✅ 設計には安全率をかけることが常識
✅ 壊れる原因は「誤使用」や「想定外の荷重」


はじめ
はじめ

「ただのねじ」と侮ることなかれ。
きちんと設計されていれば、ねじ1本で数トンの荷重にも耐える頼もしい機械要素です。


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便利な早見表(例:Mねじ)

呼び径ピッチ(並目)六角ボルト頭対辺推奨下穴径(タップ用)
M30.55.5mm2.5mm
M40.77mm3.3mm
M50.88mm4.2mm
M61.010mm5.0mm
M81.2513mm6.8mm
M101.517mm8.5mm

※ これはあくまで一例です。使用するねじやJIS規格によって変わることがあります。


まとめ:ねじのサイズ選定は「目的」と「素材」に合わせて

ねじの径と長さは、部品の強度、取付対象の材質、使用環境を考慮して慎重に選定することが重要です。

径は強度と締付け力のバランスで選ぶ
長さは「ねじ込み深さ」や「部品の厚み」で決まる
余裕長さや干渉リスクも考えて、寸法はやや多めが安心
高強度が必要な場合は材質やねじの強度等級も確認すること!



はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった基本的な要素部品の機能と選び方を詳しく紹介します

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