~小型・高精度の光検知センサーの特性と選定ポイント~
機械設計や装置設計において、「物の有無」や「位置」、「通過」などを検出するセンサは欠かせない存在です。中でも、小型で高速応答が可能な光センサとして活躍しているのが「マイクロフォトセンサ」です。
マイクロフォトセンサは、発光部と受光部が一体化された構造を持ち、非常にコンパクトで扱いやすいのが特徴です。そのため、電子部品の検出や小型装置の原点検出、カウンタ用途など、限られたスペースでの使用に最適です。
本記事では、このマイクロフォトセンサの基本的な仕組みや特性から、実際の用途例や選定時のポイントまで、初心者の方にも理解しやすいように解説していきます。
「他の光センサとの違いは?」「どんなときに使えばいいの?」といった疑問を解消し、最適なセンサ選定に役立てていただければと思います。
マイクロフォトセンサとは?
マイクロフォトセンサとは、光を使って物体の有無や位置を検出する小型センサーです。
一般的には、送信部と受信部を一体にした反射型や、分離型の透過型(スロットタイプ)などがあります。
その名のとおり、「マイクロ(小型)」で「フォト(光)」を使ったセンサというのが特徴で、
電子機器や小型メカ機構の組み込み用途で非常によく使われます。
マイクロフォトセンサの主な構造と種類
種類 | 概要 |
---|---|
透過型(スロット型) | スリット内に物体が入ると、光が遮られON/OFFを検出 |
反射型 | 物体の表面からの反射光を受光し検知 |
回帰反射型(一部対応) | センサと反射板をセットで使用し、物体による遮光で検知 |
マイクロフォトセンサの特性
小型・軽量
- コンパクト設計のため、狭いスペースや小型装置への実装に最適
- 表面実装タイプ(SMD)なども存在し、基板直付け可能
高速応答性
- 応答速度はμs(マイクロ秒)~ms(ミリ秒)単位と非常に速く、回転体や高速搬送にも対応
非接触で摩耗がない
- 光検知なので、物理的な接触がなく耐久性が高い
- リミットスイッチのような接点摩耗がない
検出距離は短め
- 一般的に数mm~数十mm程度の検出範囲
- 遠距離の検出には不向き(レーザーセンサや光電センサが適)
ノイズ・周囲光にやや弱い
- 環境光(蛍光灯、太陽光など)の影響を受ける場合あり
- 対策:外乱光カット機能付きや遮光ケースの使用
マイクロフォトセンサの選定ポイント
チェック項目 | 解説 |
---|---|
検出方式 | 透過型・反射型・回帰反射型から用途に合わせて選定 |
検出距離 | 数mm単位で確認。対象物の大きさや設置条件に注意 |
検出物体 | 光の反射率や色に影響される。反射型では黒色や透明体は要注意 |
応答速度 | 高速回転体・高速搬送にはμs対応のタイプが必要 |
出力形式 | NPN/PNPオープンコレクタ、アナログ出力など制御方式と合わせる |
耐環境性 | 使用温度範囲、防塵・防水(IPランク)、耐振動性も確認 |
実装形状 | パネル取り付け、基板直付け、コネクタタイプなど装置に合わせて選定 |
マイクロフォトセンサの活用例
エンコーダーの回転検出
👉 スリットディスクと組み合わせて、高分解能の角度検出に活用
小型アクチュエーターの原点検出
👉 ミニリニアガイドや電動スライドの原点出し用センサに最適
カウント装置(コインや部品の通過)
👉 透過型を使って、物体の通過回数を正確にカウント
マイクロフォトセンサの注意点とトラブル対策
問題 | 原因 | 対策 |
---|---|---|
誤検出 | 周囲光(蛍光灯や直射日光) | 遮光ケース使用、ノイズ対策品の選定 |
検出できない | 物体が黒・透明など反射率が低い | 感度調整可能なタイプや反射シール使用 |
検出ずれ | センサ取り付け位置がズレている | マウント位置の微調整 or フィクスチャの工夫 |
ノイズ混入 | 外部からの電磁ノイズ | シールド線、ツイストペア、フィルタ回路の活用 |
マイクロフォトセンサとファイバーセンサの違いと使い分け
~用途に応じた光センサ選定のポイント~
機械設計において、物体の位置・通過・有無を検出するために光センサは非常に重要な要素です。
その中でも特に「マイクロフォトセンサ」と「ファイバーセンサ」は、よく似た機能を持ちますが、構造や性能には大きな違いがあり、適材適所で使い分けることが必要です。
マイクロフォトセンサとは?
特徴
- 送信部と受信部が一体化した光センサ
- 小型で回路一体型のため、そのまま機器に組み込める
- 主に近距離検出(~10~30mm程度)に特化
- 高速応答(μs~ms)、安定したスイッチング
- 主にスロット型(透過型)や反射型
主な用途
- エンコーダーのスリット検出
- 小型機器の原点検出・通過検出
- カウンタ用(コイン、ラベル、部品など)
ファイバーセンサとは?
特徴
- 検出部とアンプ部が分離構造(ファイバーケーブルで接続)
- センサ本体は非常に小型で、狭い・高温・振動環境でも使用可能
- 検出距離が数cm~1m超と広く、反射型・透過型など多種
- アンプ側で感度・応答時間などが細かく調整可能
- 光源はLEDやレーザーを使用するタイプもある
主な用途
- 狭小スペース内での部品検出
- 高温部(近くにヒーター・炉などがある)でのセンサ使用
- 高精度な位置合わせ、微小物体検出(ワーク端面など)
【比較表】 マイクロフォトセンサ vs ファイバーセンサ
項目 | マイクロフォトセンサ | ファイバーセンサ |
---|---|---|
センサ構造 | 一体型(本体に光源と受光器が内蔵) | 分離型(検出部とアンプが別) |
検出距離 | 短距離(~30mm程度) | 中距離~長距離(数cm~1m以上) |
感度調整 | 不可(機種による) | 可(アンプ側で詳細設定可能) |
設置の自由度 | 本体サイズに依存 | ファイバー部が小さいため柔軟 |
環境耐性 | 一般的な工場レベル | 高温・油・粉塵に強いタイプあり |
応答速度 | 非常に速い(μs~ms) | 速い(μs~ms)+応答調整可 |
メリット | 安価・省スペース・組込しやすい | 柔軟・高性能・微小物対応 |
デメリット | 感度固定・距離短い | 本体がやや高価・設置や設定に注意 |
使い分けのポイント
使用シーン | 推奨センサ | 理由 |
---|---|---|
小型装置の組み込み、原点検出 | マイクロフォトセンサ | 小型・一体型で簡単に組み込める |
狭くてセンサ本体が入らない場所 | ファイバーセンサ | ファイバー部が細く、先端のみ挿入可能 |
高温環境・溶接や炉の近く | ファイバーセンサ | ファイバー部が耐熱仕様可 (200℃以上も) |
検出距離を伸ばしたい | ファイバーセンサ | 反射型で最大1m以上も可能 (高反射材併用) |
微小部品の検出 | ファイバーセンサ | スポット径が小さく、微小対象に対応しやすい |
高速回転・搬送体の検出 | 両者可 | 応答性の観点ではどちらも◎。 コストやスペース次第で選定 |
注意点
- マイクロフォトセンサは調整できないことが多く、用途が限定される
- ファイバーセンサは多機能な分、感度調整などに時間がかかることもある
- どちらも「周囲光」や「反射率の低いワーク(黒・透明)」には注意が必要
内容 | マイクロフォトセンサ | ファイバーセンサ |
---|---|---|
特徴 | 小型・高速・省配線 | 柔軟・高機能・広い用途 |
向いている用途 | 組込用、短距離検出 | 高温・微小・長距離・複雑な検出 |
使い分けのコツ | コスト・スペース重視 | 性能重視 |

「まずマイクロフォトセンサで試す → 条件が厳しければファイバーに変更」
という流れで設計を進めると、無駄なくセンサ選定ができます。
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
特徴 | 小型・高速応答・非接触・短距離 |
用途 | 原点検出、カウント、小型装置向けの位置検出 |
選定のポイント | 検出方式、距離、対象物、環境性、応答性、取り付け形式など |
マイクロフォトセンサは、「狭い・速い・繊細」な検出に強い光センサです。
正しい選定と取り付けによって、機械装置の精度や信頼性を大きく高めることができます。
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