可動部の電気ケーブルの注意点と選定ポイント【ロボットケーブル】

動力選定

機械装置の設計では、センサーやモーター、アクチュエーターなどを
動かすために電気ケーブルが使われます。

特に、可動部に接続されるケーブルは、
何度も動かされるため、
通常の固定配線用ケーブルとは異なる配慮が必要です。

今回は、初心者でもわかるように、
可動部で使うケーブルの注意点と選定のポイントを詳しく解説します。


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可動部に使うケーブルとは?

機械の中で「動く」部分、例えばロボットアーム、スライド機構、
リニアガイドなどに電気信号を送るためのケーブルを接続する場合、
ケーブル自体も一緒に曲がったり伸び縮みしたりすることになります。

このような部分に使うケーブルを一般的に
可動ケーブル(可動用ケーブル/フレキシブルケーブル)」と呼びます。


可動部のケーブルで起きやすいトラブル

ケーブル断線

可動によって繰り返し曲げられると、
芯線が金属疲労で折れてしまうことがあります。
これが断線です。

シース破れ

外側の被覆(シース)が擦れて破れ、
中の芯線が露出することでショートや感電の危険があります。

引っ掛かり・ねじれ

設計時にケーブルの動作空間を十分に確保していないと、
部品に引っかかったり、ねじれて絡んだりします。

ノイズによる誤動作

モーターやインバーターの近くを通るケーブルにシールドがないと、
ノイズが乗って誤動作する原因になります。


可動部ケーブルの選定ポイント

耐屈曲性能(フレキシビリティ)

ケーブルは、何百万回もの曲げに耐える構造である必要があります。

一般的な可動ケーブルは、
「曲げ半径」「耐屈曲回数」が仕様として示されています。

  • 曲げ半径
    • ケーブルが無理なく曲がる最小の半径
      (例:10×ケーブル外径)
  • 耐屈曲回数
    • 試験で確認された繰返し動作の耐久回数
      (例:1000万回以上)

リニアモーション用途では「スライド可動用」、
ロボット用途では「ねじれ可動用」が用意されていることもあります。

耐摩耗・耐油・耐熱性

機械装置では、可動部がオイルミスト・クーラント・粉塵・高温環境
さらされることも多いため、環境に応じたシース材を選ぶ必要があります。

  • 耐油性
    • オイルが多い環境
  • 耐摩耗性
    • ケーブル同士が擦れる場所
  • 耐熱性
    • 高温の近く(ヒーター、モーター周辺)

シールドの有無

信号線や通信線の場合、電磁ノイズ(EMI)対策として
シールド付きケーブルが有効です。

特に近くにモーターやインバーターがあるときは必須と考えましょう。

  • 編組シールド
    • 高い遮蔽性能
  • アルミラップシールド
    • 軽量かつコストを抑えたいとき

芯線構成(細線撚り構造)

細い導体を多く撚った構造は、しなやかで断線しにくいです。
例えば、7/0.18mmのように、細い銅線を撚り合わせたものが使われます。

適切な長さと余裕

ケーブルの長さは最短にすればよいというわけではありません

動作中に余裕がなさすぎると、断線や引っかかりの原因になります。
逆に長すぎると、たるんで他の部品に干渉します。

動作範囲 + 安全マージン(10~20%程度)が目安


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配線時の注意点

ケーブルベア(ケーブルキャリア)の使用

ケーブルベアとは、可動部のケーブルを一定の曲げ半径でガイドする装置です。

高速・高頻度で動く部分では必須とも言える装備です。

  • 曲げ半径に応じたサイズ選定
  • ケーブルの本数に応じてスペースを確保
  • ケーブルが中で自由に動きすぎないように仕切りを使う
ケーブルベアについての関連記事はこちら

固定点の設計

ケーブルの両端はしっかりと固定することが重要です。

固定点がないと、振動や動作時に無理な引張りが発生して断線しやすくなります。

ねじれ・よじれの回避

特にロボットアームのような複雑な動きをする装置では、
ケーブルがねじれてしまうことがあります。

トルクリリーフやスリーブ、専用ホルダーを使って、
ねじれを分散・制御することが大切です。


ケーブルの選定例(代表的な種類)

用途ケーブル例特徴
リニア可動部CC-Link可動用、ドラッグチェーンケーブル耐屈曲性に優れる
ロボットアーム可動ねじれケーブル曲げ+ねじれに対応
通信・制御用シールド付きツイストペアケーブルノイズ対策
電源・信号混在マルチコア可動ケーブル空間節約と保守性

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激しい可動部にはロボットケーブルがおすすめ

機械設計において、センサーやモーター、アクチュエーターなどの
可動部には必ずと言っていいほど電気ケーブルが使われます。

しかし、これらの可動部でよくあるトラブルが、ケーブルの断線や被覆の破れです。

その原因の多くは、繰り返し動作による金属疲労やねじれ・引張り
こうした激しい動きのある環境では、
一般的な可動用ケーブルでは耐久性が不足することがあります。

そんなときにおすすめなのが「ロボットケーブル」です。


ロボットケーブルとは?

ロボットケーブルとは、その名のとおり産業用ロボットのアームなど、
複雑で激しい動きをする可動部に対応したケーブルです。

通常の可動ケーブルが「一方向の屈曲」に強いのに対して、ロボットケーブルは

  • 曲げ(屈曲)
  • ねじれ(トルク)
  • 引張りやたわみ

といった多軸方向の動きに対して高い耐久性を発揮します。


なぜロボットケーブルが必要なのか?

例えばロボットアームでは、
「手首のように回転しながら上下左右に動く」という動作が連続して行われます。

このときケーブルには以下のようなストレスがかかります。

動作ケーブルへの影響
回転(ねじれ)導体がよじれて内部断線が起きやすくなる
屈曲(曲げ)同じ箇所が繰り返し曲がって金属疲労になる
伸縮・引張りケーブルの中に応力が集中し、芯線が抜けることも

このような過酷な条件下で、
長期間・安定して使えるように開発されたのがロボットケーブルです。


ロボットケーブルの特長

高耐久の芯線構造(極細撚り線)

ロボットケーブルの導体は、多数の極細銅線(例:0.05mm以下)を
緻密に撚った「超柔軟構造」になっています。これにより、

  • 曲げによる応力分散
  • ねじれに対する追従性

が非常に高くなり、通常の可動ケーブルよりも寿命が大幅に長くなります。

高柔軟な絶縁体とシース

ケーブルの柔軟性を損なわないように、
被覆材にも特殊なエラストマー系樹脂などが使われており、

  • 耐摩耗性
  • 耐油性
  • 耐熱性(80〜105℃)
  • 難燃性(UL・CSA準拠)

など、厳しい環境にもしっかり対応します。

トルクリリーフ性

ケーブルがねじれたときに、そのトルクを吸収・分散する構造になっており、
芯線が引きちぎれるのを防ぎます。

これは、ロボット専用ケーブルならではの特長です。


どんなときにロボットケーブルを使うべき?

以下のような条件がある場合は、通常の可動ケーブルではなくロボットケーブルの使用を強くおすすめします。

  • 多関節ロボット、スカラーロボット、協働ロボットの配線
  • 曲げだけでなく「ねじれ動作」がある箇所
  • 1日に数万回以上の繰返し動作がある
  • ケーブルベアなしで自由可動させる構造
  • 断線による停止が許されない重要機器

ロボットケーブルの選定ポイント

ロボットケーブルといっても、さまざまな種類があり、
選定時には以下の点に注意しましょう。

選定項目チェックポイント
芯線構成細線撚り(高フレキシブルタイプ)か
シールド有無ノイズ環境がある場合は編組シールド付きに
外径と柔軟性スペースやベア内配置に合うか
使用環境耐油・耐熱・難燃などの性能が必要か
規格適合UL、CE、RoHSなど輸出装置には必要なことも

可動部に信頼性を持たせるなら「ロボットケーブル」一択!

可動部でケーブルトラブルが発生すると、
装置の停止や誤動作につながり、
生産性や安全性に大きな影響を及ぼします

特に、ねじれや激しい屈曲を伴う動作には、
通常の可動ケーブルでは対応しきれないことも。

そうした場面では、初期コストが少し高くても
「ロボットケーブル」を選ぶ価値は十分にあります。

はじめ
はじめ

機械設計の段階から「動き」と「ケーブル挙動」を意識し、
ロボットケーブルの特性をうまく活かすことで、
トラブルの少ない堅牢な装置設計が可能になります。

まとめ:可動ケーブル設計は「繰返し」と「環境」を意識!

機械設計における可動部の電気ケーブルは、
静的な配線とは全く違う考え方が必要です。

耐久性や環境への適合、正しい配線方法を押さえることで、
トラブルの少ない安全な機械を作ることができます。

設計段階から動作のイメージを明確にし、
ケーブルの動きをシミュレーションすることが大切です。


はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。

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