【アルミ合金】A2000番代とは?特性・用途・選定ポイントをわかりやすく解説!【ジュラルミン系】

材料選定

機械設計でアルミ材料を選ぶとき、「A5052」「A6061」などの5000番や6000番系がよく使われますが、より高強度を求める場合には「2000番代(A2011・A2017・A2024など)」という選択肢もあります。

この記事では、アルミニウム合金2000番代の特徴・代表的な材質・使い分け・設計での注意点について、初心者にもわかりやすくまとめました。


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アルミニウム合金2000番代とは?

2000番代のアルミ合金は、銅(Cu)を主添加元素としたアルミ合金で、「ジュラルミン系」と呼ばれることもあります。
最大の特長は「高強度」で、強度重視の設計で採用されることが多い材料群です。

主な特徴

特性項目内容
強度アルミ合金中でも最高レベルの強度を誇る
切削性A2011などは非常に良好(機械加工向け)
耐食性やや低く、表面処理が必須
溶接性あまり良くない(ひび割れのリスクあり)

よく使われる2000番代の代表合金と特徴

A2011【切削性特化型】

  • 非常に優れた切削性(フリーカットアルミ)
  • 高速・高精度な自動旋盤加工向き
  • ネジ部品や精密機構部品に多用される

🔍 用途例

精密ネジ、電子機器部品、コネクタ部品など


A2017【機械構造用の万能ジュラルミン】

  • 通称「ジュラルミン」
  • A2024ほどの強度はないが、バランスがよく加工しやすい
  • 切削性良好、冷間加工にも対応

🔍 用途例

航空機部品、自転車部品、構造部材、スポーツ用品など

はじめ
はじめ

A2017は、軽量で強度もそこそこ欲しい場面に重宝されます。
A2024の廉価版として扱われることもあります。


A2024【高強度・高剛性の代表格】

  • 高強度の代表的合金(特にT4、T6処理品)
  • 航空機用途で長年使用されてきた信頼性
  • 加工性良好だが、耐食性はやや低い

🔍 用途例

航空機構造材、自動車部品、機械構造部など


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他のアルミ合金との比較

系列主成分強度耐食性溶接性用途の傾向
1000番純アルミ×装飾・導電用途
2000番×航空・構造・精密部品
5000番Mg板金・筐体・海洋
6000番Mg+Si汎用機械部品・構造材
7000番Zn◎(最強)×超高強度部品

設計上の注意点と選定ポイント

強度重視:A2024

 👉 SS400に匹敵するような引張強さが必要な場合に有効。

バランス型:A2017

 👉 強度・加工性のバランスがよく、機械構造材として扱いやすい。

✅ 切削重視:A2011

 👉 精密加工部品で大量生産が求められるならこれ一択。


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表面処理・溶接に注意

  • 耐食性が低いため、アルマイト処理や塗装が必須です。
  • 溶接性は低く、ひずみや割れが発生しやすいため、機械的接合(ボルト固定など)が推奨されます。

ジェラルミンの誕生とその歴史 〜軽くて強い夢の金属ができるまで〜

第1章:ドイツの工場から始まった物語(1900年代初頭)

1900年代のドイツ。産業が大きく発展し、蒸気機関車や飛行船が空を舞っていた時代。

ドイツの金属工場では、若き技術者アルフレッド・ウィルムが、ある“夢”を追いかけていました。

「鉄のように強く、でもアルミのように軽い金属ができないだろうか…」

当時のアルミニウムは「軽いけど弱い」金属という扱い。鉄のように構造材として使うには、強度が足りなかったのです。


第2章:偶然が導いた発見(1906年)

1906年、ある日ウィルムは試験の合間に、銅を加えたアルミニウムのサンプルを数日間放置してしまいます。すると驚くべきことに…

「ん?数日前よりも、金属が硬くなっている…?」

これは後に「時効硬化(じこうこうか)」と呼ばれる現象。加熱と自然放置によって、金属の中で微細な変化が起き、強度が上がるのです。

これこそが、アルミニウム合金の歴史を変える一歩でした。


第3章:ジェラルミンの誕生(1909年)

その後の研究で、ウィルムはアルミに銅(Cu)・マグネシウム(Mg)・マンガン(Mn)などを加えることで、理想的な強度を得られる配合を発見します。

そして1909年、ついに世界初の高強度アルミ合金が誕生。

その名も「ジュラルミン
名前の由来は、工場のある地名「ジューレン(Düren)」にちなんで付けられたとされています。


第4章:空を飛ぶ材料へと進化(第一次世界大戦〜)

当時の飛行機はまだ木製や布製の機体が主流。でも重くて遅くて壊れやすい…。そこで登場したのがこの新素材、ジュラルミンです。

第一次世界大戦の頃には、ジュラルミン製の飛行機構造材が登場し、航空技術の発展を大きく支えることになりました。

「強くて軽い」

航空機に最適!ということで世界中で注目されていきます。


第5章:日本にもやってきたジュラルミン

日本では、昭和初期に航空機産業の発展とともに、ジュラルミンの使用が広がっていきました。戦後も、自転車部品や精密機械部品など、軽さと強さが求められる分野で活用され続けます。

現代では、A2017という記号で呼ばれ、2000番台アルミ合金の代表格となっています。


第6章:ジェラルミンのその後と今

ジュラルミンはその後も改良が進み、

  • A2024(超ジュラルミン)
  • A7075(超々ジュラルミン)

といったさらに高強度なアルミ合金へと進化していきました。
しかし、元祖ジュラルミン(A2017)は、今でも“ちょうど良い”バランス材として多くのエンジニアに愛されています。


エピローグ:軽くて強い金属の物語は、今も続いている

最初は偶然から始まった発見。
夢を諦めなかった若き技術者ウィルムの情熱が、現代の機械設計や航空産業、スポーツ機器など、さまざまな分野の進化を支えています。

ジュラルミンの物語は、今も私たちの生活の中で続いているのです。


補足:ジュラルミン=A2017

名前種類特徴
ジュラルミンA2017相当機械構造材、加工性と強度のバランスが良い
超ジュラルミンA2024航空機用など、高強度が必要な用途
超々ジュラルミンA7075アルミ合金中で最強レベルの強度

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まとめ|2000番代は「強度・加工性」で選ばれるプロ向きアルミ合金

材質特長適した使い方
A2011切削性最強精密部品・ネジ・コネクタ
A2017バランス型汎用機械部品・構造材
A2024高強度航空・車両・高応力部品

アルミ合金2000番代は、「軽量かつ強度が欲しい」「精密加工に向いた材質が欲しい」といった要求に応える材料群です。

選定時は、強度・加工方法・使用環境(防錆対策)をバランスよく考慮しましょう。
必要に応じて、表面処理の前提や溶接の有無についても事前に検討しておくと安心です。



はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

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