アルミ合金の引張強さランキング!どれが強い?使い分けのポイントも解説【熱処理と加工性】

材料選定

アルミにも“強さ”の違いがある!

アルミと聞くと「軽いけど、あまり強くない金属」というイメージを持っていませんか?
しかし実際には、合金の種類によって強度は大きく異なります。

この記事では、機械設計でよく使われる代表的なアルミ合金を引張強さでランキング化し、強さの順番特徴・使い分けをわかりやすく紹介します!


引張強さとは?

引張強さ(MPa)

材料が引っ張られて破断するまでに耐えられる最大の力のこと。
数値が高いほど「強い」金属と言えます。

引張強さについての関連記事はこちら

アルミ合金 引張強さランキング(代表値)

順位材料名熱処理引張強さ(N/㎟)特徴・用途例
🥇1位A7075T6約 570超々ジュラルミン。強度最優先の構造材。
🥈2位A2024T3,T4約 470-485超ジュラルミン。航空部品、自転車フレームなど。
🥉3位A2017T4約 425ジュラルミン。機械部品、構造材で広く使われる。
4位A2011T3約 380高い被削性で自動旋盤加工に向く。ネジ・軸。
5位A6061T6約 310強度・耐食性・溶接性のバランスが良く万能型。
6位A5056約 290耐食性と強度のバランス良好。ボルト・リベット。
6位A5083約 290高耐食・中強度。船舶や車両部品に最適。
8位A5052約 260耐食性に優れた汎用合金。板金・筐体部品など。
9位A6063T5,T6約 185-240押出成形しやすい。アルミサッシやフレーム材。
10位A3004約 180飲料缶材などに使われる加工性重視の合金。
11位A3003約 110加工性・耐食性に優れるが強度は低め。

※数値は代表的な熱処理などの処理状態におけるおおよその範囲。使用条件や調質により前後します。



スポンサーリンク

アルミ合金の熱処理「T3~T6」をわかりやすく解説!


はじめに:アルミにも「熱処理」があるって知ってた?

鉄や鋼だけでなく、アルミ合金にも熱処理があることをご存知でしょうか?
中でもよく登場するのが、「T3」「T4」「T5」「T6」といった調質記号(T)です。

「T6って何?」「数字が大きいほど強いの?」
そんな疑問にお答えすべく、今回はアルミ合金の熱処理について初心者向けにやさしく解説します!


アルミの熱処理とは?

アルミ合金の中でも、2000番台・6000番台・7000番台などは、熱処理によって強度を高めることができます。
この熱処理を「溶体化処理時効処理」といい、素材内部に微細な粒子を析出させて強度を向上させる方法です。


T3~T6ってなに?調質の意味

アルミ合金では、「T記号」+数字で熱処理の状態を表します。
代表的な「T3~T6」の意味は以下の通りです。

調質意味特徴
T3溶体化処理 → 冷間加工(引張・曲げなど) やや柔らかく加工性が良い。
T4溶体化処理 → 自然時効(時間経過で硬化)中間強度で加工性良好。
T5高温加工(鋳造・押出)→人工時効(焼き戻し)寸法安定性が高い。
T6溶体化処理 → 人工時効(焼き戻し)最も強度が高い

スポンサーリンク

T6はとにかく強い!でも加工しづらい?

たとえば、「A6061-T6」は機械構造材としてとても有名です。
T6にすることで引張強さ300MPa以上と高強度になり、フレームや構造部品に多く使われます。

ただし、T6は硬いので曲げや深絞りなどの加工には不向きです。
その場合、T4やO(焼なまし)状態で加工→あとでT6に熱処理する流れがよく用いられます。


調質の違いによるA6061の例(目安値)

調質引張強さ(MPa)加工性用途例
O(焼なまし)約 125◎ 非常に良い曲げ加工、成形
T4約 240○ 良い中間加工、溶接部
T6約 310△ あまり良くないフレーム、構造材

スポンサーリンク

よく使うアルミ合金と熱処理の組み合わせ例

材料よく使われる調質備考
A6061T6万能合金。構造部品に多い。
A2024T3、T4高強度+加工性。航空部品向け。
A7075T6最強クラス。航空・自転車フレーム。
A6063T5押出形材、サッシやレールに多い。

T記号は性能のカギ!

  • アルミ合金も熱処理で強度が変わる。
  • 「T3〜T6」はその状態を示す記号。
  • T6が最も強いが加工性は低下するため、使い分けが重要。
  • 加工後に熱処理する設計も多い(T4加工→T6熱処理)。

ワンポイントアドバイス

熱処理条件(温度・時間)は合金によって異なります。

はじめ
はじめ

実際の設計では、材料メーカーのカタログや加工業者と相談するのがベストです!

スポンサーリンク

アルミ合金は「強度だけで選ばない」のがコツ!

引張強さは重要な指標ですが、材料選定では以下のような用途ごとのバランスも大切です:

材料強度耐食性溶接性加工性切削性用途例
A7075航空機、強度部品
A2024精密構造材
A2017一般機械構造材
A6061汎用構造材、フレーム
A5083船舶、車両部品
A5052板金、筐体、看板
A3003×内装材、日用品

初心者向け!よくある用途別おすすめ材料

用途おすすめアルミ合金
強度が第一A7075、A2024、A2017
軽くてバランス型A6061、A5052
溶接したいA5083、A3003
板金・カバー用途A5052、A3003
切削性がほしいA2011(ネジ・精密部品)

まとめ|アルミ合金は「強さ」と「使いやすさ」のバランスで選ぼう!

アルミ合金には、高強度タイプから加工性に優れたタイプまでさまざまな種類があります。
今回の引張強さランキングでは、A7075が最も高い強度を持ち、次いでA2024やA6061がそれに続きました。

しかし、強ければ良いというわけではなく、使い方や加工条件に応じて選定することが重要です。

たとえば…

強度重視 → A7075、A2024(航空機・機械部品など)
バランス重視 → A6061(フレームや構造材)
加工性・耐食性重視 → A5052、A3003(板金部品、外装など)

アルミ合金は種類によって熱処理の有無や耐食性、コストも大きく異なるため、設計目的に合わせた材料選びが大切です。

ぜひ今回のランキングを、あなたの材料選定の参考にしてみてください!



はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

コメント