テーパーローラーベアリングの特徴と選定ポイント~高荷重・スラスト荷重に強い理由~

機械要素

ベアリングは機械の回転部分を支える重要な部品です。
その中でも「テーパーローラーベアリング」は、高荷重やスラスト荷重(軸方向の力)に強い特性を持ち、多くの機械で使われています。

この記事では、テーパーローラーベアリングの特徴と選び方のポイントをわかりやすく解説します。


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テーパーローラーベアリングとは?

テーパーローラーベアリングは、名前の通り「テーパー(円すい形)」のローラー(円筒形のころ)が並んでいる軸受けです。

  • 特徴的なのは内輪と外輪の接触面が円すい状になっていること
  • この形状によって、ラジアル荷重(横からの力)とアキシャル荷重(軸方向の力)を同時に受けることができるのが最大の強みです。

テーパーローラーベアリングの特徴

高荷重に強い

ローラーが円すい形であるため、接触面積が広く、荷重を分散して受けられます。そのため、一般的なボールベアリングよりも大きな力に耐えることが可能です。

ラジアル荷重+スラスト荷重を同時に支えられる

普通のボールベアリングは軸方向の力(スラスト荷重)に弱いですが、テーパーローラーベアリングは円すいの角度でスラスト荷重をしっかり受け止めます。

高い剛性(たわみが少ない)

荷重に強いため、機械の回転部分の軸振れやズレを抑え、高精度な動作が可能になります。

取り付け時にプリロードが可能

テーパーローラーベアリングは2個一組で使われることが多く、適切な締め付け(プリロード)で軸のガタつきを無くせます。


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テーパーローラーベアリングはなぜ左右一対(セット)で使うのか?

テーパーローラーベアリングは、高荷重に耐えられる優れた軸受けですが、実は単体で使うことは少なく、必ず左右一対のセットで使われることがほとんどです。

本項では、その理由を初心者の方にもわかりやすく説明します。


テーパーローラーベアリングの構造と荷重の受け方

テーパーローラーベアリングは「円すい形」のころを使っていて、ラジアル荷重(横からの力)とスラスト荷重(軸方向の力)を同時に受けることができます。

しかし、片側だけのベアリングだと、軸方向の力を一方向にしか支えられません。


左右一対(セット)で使う理由

軸方向の力を両方向から支えるため

機械の軸は、前後や左右、様々な方向に力がかかります。
テーパーローラーベアリングを左右対称にセットすることで、軸方向の力を両側からしっかり支えられるようになります。

軸の位置決めを安定させるため

左右一対で取り付けると、軸がガタつかず、正確な位置に固定できます。
これにより機械の精度が上がり、振動や騒音も減ります。

プリロード調整ができるため

左右のベアリングを適切に締め付けることで、「プリロード」と呼ばれる軽い圧力をかけられます。
プリロードにより、ベアリング内のガタつきをなくし、よりスムーズで安定した回転が可能になります。


テーパーローラーベアリングは、単体で使うよりも左右一対(セット)で使うことで、

➤ 軸方向の力を両側から支えられる
➤ 軸の位置を正確に固定できる
➤ ガタつきを減らし、回転を安定させられる

という大きなメリットがあります。

はじめ
はじめ

そのため、機械設計ではセットで使うことが基本です。

与圧をかけられる設計が重要な理由

~ベアリングの性能を最大限引き出すために~

機械の回転部品を支えるベアリングは、「ガタつきがないこと」と「スムーズに回ること」がとても大事です。
そのために使われる調整方法が与圧(プリロード)です。

しかし、与圧は組み立て作業で勝手に掛けるのではなく、最初から設計段階で与圧をかけられる構造を用意しておくことが重要です。


なぜ与圧をかけられる設計が必要なのか

ベアリングは、時間とともに摩耗やなじみが進み、最初の組付け時よりもすき間が大きくなります。
このすき間が放置されると、以下のような不具合が起こります。

  • 軸方向のガタつきによる精度低下
  • 振動や異音の発生
  • 歯車やカップリングのかみ合わせ不良
  • 部品の早期摩耗や破損

与圧をかけられる設計にしておけば、これらの問題を後から調整で解消できます。


与圧をかける設計例

  • 調整ナット方式
    • ベアリングの外側または内側にナットを配置し、回すことで押し付け量を変えられる構造。
      → 精密機械や工作機械の主軸に多い
  • シム(スペーサー)方式
    • ベアリングとハウジングの間に薄い板を挟み、厚みを変えることで与圧を調整。
      → 産業機械や大型設備で一般的
  • ばね押し方式
    • コイルスプリングなどで常に一定の力を与え、温度変化や摩耗によるガタを自動的に補正。
      → 高温や変動荷重のある環境に適用

設計段階での注意点

  • 調整範囲を確保する
    • 後から調整できるよう、ナットやシムの移動量・交換厚みを確保する。
  • 組立・メンテ性を考える
    • 与圧調整に必要な工具や作業スペースを確保しておく。
  • 熱膨張を考慮
    • 温度上昇で部品が膨張すると与圧が変化するため、材料や寸法を設計で工夫する。

✅ 与圧(プリロード)はベアリングの性能維持に欠かせない
✅ 最初から与圧をかけられる構造を設計に組み込むことが重要
✅ 調整ナット、シム、ばね押しなど方式は用途に応じて選択

与圧は「組み立て時の一手間」ではなく、機械を長く安定して動かすための設計思想です。

はじめ
はじめ

設計段階で与圧調整の仕組みを持たせておくことが、
トラブルの少ない機械づくりにつながります。

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テーパーローラーベアリングの選定ポイント

1. 荷重の種類と大きさを確認する

  • ラジアル荷重だけでなく軸方向の力も受ける場合に適しています。
  • 高荷重用途であれば、テーパーローラーベアリングが最適です。

2. 取り付け方法に注意

  • テーパーローラーベアリングは単体ではなく、通常は左右一対(セット)で使います。
  • 取り付け時のプリロード調整が性能に直結するため、専門知識が必要です。

3. 回転速度とのバランス

  • 高荷重に強い反面、ボールベアリングより摩擦が大きいため高速回転には向きません。
  • 使用環境の回転速度に合わせて選びましょう。

4. メンテナンス性

  • 適切なグリースやオイル潤滑が必要です。
  • 潤滑管理を怠ると寿命が大きく短くなるため注意しましょう。

まとめ

テーパーローラーベアリングは、円すい形のころがラジアル荷重とスラスト荷重を同時にしっかり支えられるため、高荷重用途に最適です。

正しく選定・取り付けを行うことで、機械の安定した動作と長寿命化に貢献します。

初心者の方は、使用荷重の種類と大きさ、取り付け方法をしっかり理解し、必要に応じて専門家に相談しながら選ぶのがおすすめです。



はじめ
はじめ

ボルトやナット、軸受け、ギアといった基本的な要素部品の機能と選び方を詳しく紹介します

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