機械設計における銅の種類と特徴と使いどころ

材料選定

銅(Cu)は、電気や熱をよく通し、耐食性にも優れる金属です。
電線や水道管など身近な製品から、機械部品や工業用部材まで幅広く利用されています。

ただし「銅」と一口にいっても、純銅から合金までさまざまな種類があり、用途によって選定が必要です。
ここでは、機械設計でよく使われる銅の種類を整理して紹介します。


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純銅(タフピッチ銅・無酸素銅)

特徴

  • 電気伝導率・熱伝導率が非常に高い
  • 耐食性が高く、加工性も良い
  • 柔らかいため機械的強度は低め

主な種類

  • タフピッチ銅(C1100):酸素を微量含む、最も一般的な純銅。
  • 無酸素銅(C1020):酸素をほとんど含まず、真空や高温環境に安定。

用途例

  • 電線、バスバー(ブスバー)、放熱板、真空装置の部品

黄銅・真鍮

特徴

  • 銅と亜鉛(Zn)の合金
  • 強度・耐食性・加工性のバランスが良い
  • 切削性が高く、精密部品に向く
  • 黄金色で装飾にも利用される

用途例

  • バルブ、ギア、継手、ねじ、楽器

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青銅(すず青銅・りん青銅・アルミニウム青銅)

特徴

  • 銅とスズ(Sn)を主成分とする合金
  • 耐摩耗性・耐食性が高い
  • 機械的強度やばね性を持つ種類もある
  • 鉛入りは「すべり性」に優れ、軸受に適する

用途例

  • ブッシュ、歯車、スプリング

砲金

特徴

  • 青銅の一種で、銅+スズ+亜鉛+鉛の合金
  • 耐摩耗性・耐食性に優れ、鋳造性が良い
  • 摩擦が多い部分で信頼性が高い

用途例

  • バルブ、ポンプ部品、歯車、ブッシュ

👉 機械設計では「耐久性のある摺動部品」としてよく使われます。


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銅ニッケル合金(白銅・キュプロニッケル)

特徴

  • 銅+ニッケル(Ni)
  • 強度が高く、海水に対して優れた耐食性
  • 高温環境でも安定

用途例

  • 船舶用配管、熱交換器、硬貨

ベリリウム銅

特徴

  • 銅+ベリリウム(Be)
  • 高強度かつバネ性がある
  • 電気伝導性は純銅ほどではないが十分
  • 火花が出にくく、安全工具に使われる

用途例

  • 精密スプリング、溶接電極、電気接点、非磁性工具

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クローム銅

特徴

  • 銅+クロム(Cr)
  • 強度と耐熱性が高い
  • 高温下でも硬度が落ちにくい
  • 電気伝導性もそこそこ保持

用途例

  • 溶接電極、金型部品、放熱部材

👉 「高温・高荷重+電気伝導」が必要な用途に使われます。


銅の種類ごとの比較表

種類主成分特徴
純銅銅99%以上電気・熱伝導率が最高、柔らかい
黄銅・真鍮銅+亜鉛強度・加工性バランス良し、切削性良好
青銅銅+スズ耐摩耗性・耐食性、バネ性
砲金銅+Sn+Zn+Pb鋳造性良好、耐摩耗性・耐食性
銅ニッケル合金銅+ニッケル海水耐食性、高温でも安定
ベリリウム銅銅+ベリリウム高強度・バネ性、スパークレス
クローム銅銅+クロム高強度・耐熱性、導電性も保持

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機械設計における銅の使いどころ【初心者向け】

銅(Copper)は「電気や熱をよく通す」「耐食性が高い」といった特徴を持つ金属で、日常生活では電線や水道管に広く利用されています。
しかし、機械設計の現場でも銅や銅合金はさまざまな場面で重要な役割を担っています。

ここでは、機械設計における銅の主な使いどころを整理して紹介します。


1. 電気・熱を効率よく伝えたい部品

銅の最大の特徴は、非常に高い電気伝導率と熱伝導率です。

  • 電気系部品
    • 電線、コネクタ、バスバー
    • 発電機やモーターの巻線
  • 熱系部品
    • 放熱板、ヒートシンク、熱交換器

👉 特にモーターや変圧器では「ロスを減らして効率を上げる」ために銅が必須です。
👉 放熱部品では、アルミに比べて銅は熱をよく通すため、コンパクトにまとめたい場面で選ばれます。


2. 摩耗や摺動に強い部品

銅にスズや鉛を加えた 青銅や砲金 は、耐摩耗性・すべり性 に優れています。

  • 使いどころ
    • ブッシュ、軸受、ギア、ポンプ部品
    • バルブや水道部品(耐食性+摺動性が必要な部分)

👉 鉄や鋼では摩耗しやすい部分でも、青銅や砲金なら長寿命化が期待できます。


3. 耐食性を重視する部品

銅はもともと耐食性に優れていますが、合金化することでさらに環境に強くなります。

  • 銅ニッケル合金(キュプロニッケル)
    • 海水に対する耐食性が非常に高い
    • 船舶の冷却配管や熱交換器に使用
  • 黄銅(真鍮)
    • 水や湿気に強く、加工性も良い
    • 継手、バルブ、装飾部品

👉 水回りや海水環境では、銅合金が「サビにくい材料」として重宝されます。


4. 強度や弾性を活かす部品

一部の銅合金は「高強度」や「バネ性」を活かせるため、特殊用途に使われます。

  • ベリリウム銅(Be-Cu)
    • 高強度かつバネ性あり
    • 電気接点、スプリング、金型部品、溶接電極
    • 火花が出にくいため、防爆工具にも使われる
  • クローム銅(Cr-Cu)
    • 強度と耐熱性が高く、導電性も維持
    • 溶接電極、金型、放熱部品

👉 「強度+導電性」「バネ性+耐摩耗」といった複合的な性能が欲しいときに選ばれる材料です。


5. コストとバランスを考えた部品

純銅は性能が高いものの、柔らかくコストもかかります。
そのため、コストと性能のバランスを取った合金 が実務ではよく選ばれます。

  • 黄銅 → 加工性が良く、安価で大量生産向き
  • 砲金 → 鋳造が容易で耐摩耗性も確保

👉 「必要十分な性能」と「加工性・価格」の両立が重要です。


銅を使うべき場面

銅や銅合金は、

  • 電気・熱を効率的に伝えたいとき(導体・放熱部品)
  • 摩耗や摺動に強い部品が欲しいとき(ブッシュ・軸受)
  • 耐食性を重視する環境(水回り・海水設備)
  • 強度や弾性が必要な特殊用途(バネ材・金型・電極)
    で活躍します。

👉 機械設計では「性能を最大化したいのか」「寿命を伸ばしたいのか」「環境条件に耐えたいのか」によって、銅の種類を選ぶことがポイントです。

まとめ

銅は、

  • 電気・熱伝導に優れた純銅
  • 強度や加工性をバランス良くした黄銅真鍮
  • 耐摩耗性に優れる青銅・砲金
  • 海水や高温環境に強い銅ニッケル合金やクローム銅
  • バネ性や強度が必要なベリリウム銅

といったように、用途によって大きく使い分けられます。

👉 機械設計においては、「導電性を重視するのか」「摩耗に強くしたいのか」「高温環境で使うのか」を考えて、最適な銅材を選ぶことが重要です。


はじめ
はじめ

設計において欠かせない材料の特性や用途を解説しています。
適材適所の選定をサポートします。

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