アルミニウム合金の中でも「6000番代」は、強度・加工性・耐食性のバランスが非常に良いことから、機械設計や構造部品で幅広く使用されているグレードです。
この記事では、6000番代の特徴や代表的な合金、選定時のポイントについて、初心者の方にもわかりやすく解説します!
6000番代アルミ合金とは?
6000番代アルミ合金は、「アルミニウム-マグネシウム-シリコン系合金」に分類されます。
この合金系は、熱処理により強度を向上させる溶体化処理(T処理)が可能で、以下のような特性を持っています。
✅ 中程度の引張強さ
✅ 優れた耐食性
✅ 切削加工性も良好
✅ 熱処理による硬度調整が可能(T5、T6など)
これらのバランスにより、アルミフレーム材・構造部品・建材・自動車部品などに幅広く使われています。
代表的な6000番代合金とその用途
合金番号 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
A6061 | バランス型:強度・耐食性・溶接性に優れる | 各種機械構造材、自動車部品 |
A6063 | 押出性に優れ、美観も良い | 建築材(サッシ・レールなど)、装飾材 |
A6005 | アルミフレームなどで使用される | フレーム材、構造材 |
特にA6061は機械設計で最も汎用的に使われている合金で、「迷ったらこれ」と言われるほどの信頼性があります。
6000番代のT処理とは?
6000番代は、T5やT6などの熱処理によって機械的性質をコントロールできます。
記号 | 処理内容 | 特徴 |
---|---|---|
T5 | 高温加工(鋳造・押出)→人工時効(焼き戻し) | 強度は中程度、加工後の寸法安定性が良い |
T6 | 溶体化処理 → 人工時効(焼き戻し) | 強度が最も高い、機械構造材向き |
強度が必要な部品にはT6、加工性や変形の少なさが重要な部品にはT5を選定すると良いでしょう。
使用上の注意点と選定ポイント
精密加工時は変形に注意!
6000番代は熱処理により内部応力が残っている場合があり、切削加工でわずかに反りが出ることがあります。精密部品には「応力除去焼鈍」や「直角度保持」の工夫が必要です。
強度は7000番代・2000番代に劣るが、使いやすさは上
7000番代(A7075など)や2000番代(A2024など)ほどの強度はありませんが、加工性・コスト・耐食性のトータルバランスは6000番代が上です。
溶接性は良い
他の高強度アルミ合金(例:2000番代や7000番代)は溶接性が悪い傾向がありますが、6000番代は溶接適性が高く、構造体やフレーム用途に最適です。
ただし、5000番代(A5052など)の方が溶接性は優れている。
アルミフレームに6000番代が選ばれる理由
では、なぜ数あるアルミ合金の中でも6000番代がフレームに最適なのでしょうか?
主な理由は以下の通りです。
十分な強度がある(T6処理でさらに強く!)
6000番代は熱処理(T6処理)によって、引張強さ300(N/㎟)程度の強度を得ることができます。
これは軽量かつ強度が必要なフレーム構造にちょうど良い強度で、機械や装置の骨組みに最適です。
耐食性に優れ、長持ちする
屋内・屋外を問わず使われるフレームでは、サビにくさも大切。
6000番代は耐食性が高く、表面処理(アルマイト)とも相性が良いため、長期間きれいに保てます。
溶接や加工がしやすい
設計変更や治具の追加などで、後から穴あけや溶接が必要になることも多いのがフレーム構造。
6000番代は切削加工性・溶接性ともに良好なので、設計や施工の自由度が高く、現場でも扱いやすいのが魅力です。
押出成形に適していてコストが安定している
フレーム材のような長尺材は、「押出(おしだし)成形」で作られます。
6000番代はこの押出性に非常に優れており、複雑な断面形状も安定して製造可能。
しかも流通量が多く、コストも比較的安定しています。
迷ったら6000番代でOK!
アルミフレームに6000番代が使われるのは、以下のように「バランスが非常に良い」からです。
特性 | 評価 |
---|---|
強度 | ◎(T6処理で高強度) |
耐食性 | ◎(錆びにくい) |
加工性・溶接性 | ◎(取り回しやすい) |
コスト | ○(コスパ良好) |
押出性 | ◎(断面形状の自由度) |
アルミフレームを使った構造を検討する際には、まずはA6061やA6063をベースに考えると間違いありません。
まとめ
6000番代アルミ合金は、強度・耐食性・加工性のバランスが非常に優れており、機械設計の現場で非常に重宝されている合金系です。
特に…
✔ A6061:迷ったらコレ!万能選手
✔ A6063:美観・押出成形が必要なら
✔ A6005:アルミフレームなどによく使われている
といった形で使い分けるのがおすすめです。
初めてアルミを設計に使う方でも扱いやすい6000番代。ぜひ用途や強度に応じて、最適なグレードを選んでみてください!
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