【AC】交流モーターの特性と選定ポイント

動力選定

交流モーター(ACモーター)は、産業用機械から日常の電化製品まで、幅広い用途で使用される重要な電動モーターです。機械設計において、交流モーターを選定する際には、モーターの特性や運転条件、用途に応じた適切な選定が必要です。この記事では、ACモーターの基本的な特性と、設計者がモーターを選定する際の重要なポイントについて解説します。

交流モーター(ACモーター)の種類

誘導モーター(インダクションモーター)

交流モーターの中で最も一般的なのが誘導モーターです。誘導モーターは、ステーターコイルに流れる交流電流が回転磁界を生じ、その磁界が回転子に電流を誘導してトルクを発生させる仕組みです。

誘導モーターの特徴

  1. 堅牢性とシンプルな構造:
    • ブラシや整流子がないため、メンテナンスが少なく、長寿命です。
  2. 高効率:
    • 交流モーターの中でも効率が高く、エネルギー消費が少ないのが特徴です。
  3. 定速運転に優れる:
    • 回転速度が負荷の変動に対して安定しており、一定速度での運転に適しています。

同期モーター(PMモーター)

同期モーターは、ステーターの回転磁界と回転子が常に同期して動作します。これにより、正確な回転速度を維持することが可能です。

同期モーターの特徴

  1. 正確な速度制御:
    • 電源周波数に基づいて一定の速度で動作するため、速度が変わることなく安定した動作が可能です。
  2. 効率性:
    • 誘導モーターと比べても高効率で、特に大規模産業や発電機などで使用されます。
  3. 始動が難しい:
    • 同期モーターは始動トルクが小さいため、始動時には補助装置や始動制御が必要になることがあります。

単相モーターと三相モーター

ACモーターには単相モーター三相モーターの2種類があります。

  1. 単相モーター:
    • 主に家庭用や小型の機械で使用され、単相の交流電源で動作します。小型機器や軽負荷での使用に適しています。
  2. 三相モーター:
    • 工場や産業用の大規模な機械で使用され、三相の交流電源を使用します。高効率で大出力を必要とする機械で一般的に採用されています。

交流モーターの選定ポイント

機械設計において、適切なACモーターを選定するためには、使用環境や動作条件を十分に考慮する必要があります。以下に、選定時に重要となるポイントを紹介します。

定格電圧と周波数

モーターを使用する国や地域によって電源の電圧や周波数が異なるため、定格電圧周波数に適合したモーターを選定する必要があります。例えば、日本では50Hzと60Hzの地域が存在し、使用するモーターがその周波数に対応しているかを確認することが重要です。

出力とトルク

モーターを使用する目的に応じて、必要な出力トルクを決定します。モーターのトルク特性は、動作時の負荷条件に大きく影響を与えるため、負荷の大きさや運転の安定性を考慮した上で、最適なモーターを選定します。

  • 起動トルク:
    • モーターが負荷を起動させる際に必要なトルクで、特に大きな負荷を起動する場合は高い起動トルクが求められます。
  • 定格トルク:
    • 定常状態で負荷に応じたトルクを供給できるモーターを選定する必要があります。

環境耐性

モーターを使用する環境に応じて、防塵防水耐腐食性などの環境耐性が求められます。工場などの過酷な環境では、全閉外扇形モーター(TEFC)など、外部環境からモーター内部を保護するタイプのモーターが推奨されます。

  • 防塵・防水性能:
    • IP規格に基づいた防塵・防水等級を確認し、必要なレベルの保護が確保されているモーターを選定します。
  • 耐熱性・耐寒性:
    • モーターが設置される環境温度に応じて、適切な耐熱性や耐寒性を持つモーターを選定します。

冷却方式

モーターの冷却方式も選定の際に考慮するポイントです。特に、連続運転や高出力が要求される場合、適切な冷却が行われることが必要です。

  1. 自然冷却:
    • 小型モーターや軽負荷での使用に適しています。
  2. 外部冷却ファン:
    • 高出力モーターや連続運転を行う場合は、外部ファンで冷却するタイプが一般的です。
  3. 水冷:
    • 非常に高い出力や過酷な条件下で使用される場合、より効果的な冷却が必要となり、水冷式のモーターが使用されることがあります。

速度制御の必要性

負荷に応じた速度制御が必要な場合には、インバータ(周波数変換器)を利用してモーターの回転速度を制御できるタイプを選ぶことが重要です。ACモーターの場合、速度制御が容易にできることから、インバータ駆動のモーターが多くの場面で採用されています。

  • 可変速モーター:
    • 負荷や用途によって回転速度を変える必要がある場合には、可変速のモーターを選定します。
  • 一定速モーター:
    • 一定の回転速度で連続運転を行う場合には、同期モーターが最適です。

効率とコスト

モーターの効率はエネルギー消費に直接影響を与えるため、特に長時間運転する機械では効率の良いモーターを選ぶことがコスト削減に繋がります。モーターの効率は国際基準で定められており、高効率のモーターを使用することで、エネルギーコストの削減と環境負荷の軽減が期待できます。

  • 初期コストとランニングコスト:
    • 高効率モーターは初期コストが高い場合がありますが、長期的なランニングコスト削減を考慮することが重要です。
  • 効率規格:
    • IE2やIE3といった国際効率規格に準拠したモーターを選定することが推奨されます。

主なメーカー

株式会社ニッセイ         メーカーページはこちら

オリエンタルモーター株式会社   メーカーページはこちら

富士電機株式会社         メーカーページはこちら

株式会社日立産機システム     メーカーページはこちら

まとめ

交流モーター(ACモーター)は、様々な機械設計において重要な役割を果たしており、用途や環境に応じた適切な選定が必要です。定格電圧や周波数、出力トルク、冷却方式、環境耐性、速度制御など、設計時に考慮すべき要素を十分に検討することで、効率的で信頼性の高いシステムを構築することができます。モーター選定時には、これらのポイントを総合的に評価し、最適なモーターを選ぶことが機械設計の成功に繋がります。


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