ロータリーアクチュエータは、
空圧機器において回転運動を生み出す重要な要素です。
直線運動をするシリンダーとは異なり、
ロータリーアクチュエータは特定の角度範囲内で回転運動を行います。
この特性から、搬送装置、回転テーブル、工作機械の回転部品など、
回転運動が求められるさまざまな産業用設備で使用されています。
ロータリーアクチュエータの仕組み
ロータリーアクチュエータは、内部にピストンやベーンを持ち、
圧縮空気の力を利用して回転動作を実現します。
圧縮空気を供給することでピストンやベーンが移動し、
その動きを回転運動に変換します。
一般的には90度、180度、270度、360度などの回転角度があり、
特定の角度まで正確に回転させることが可能です。
種類と特徴
ロータリーアクチュエータには主に以下の2種類があります。
ベーン式ロータリーアクチュエータ
ベーン(羽)を利用して回転運動を作り出すタイプです。
シンプルな構造と高効率が特徴ですが、
耐久性に劣る場合があります。
コンパクトでありながら高いトルクを発揮できるため、
限られたスペースでの回転運動に適しています。
ラック&ピニオン式ロータリーアクチュエータ
ピストンの直線運動をラック&ピニオン機構によって
回転運動に変換するタイプです。
高トルクが必要な用途に適しており、
安定した長寿命の性能を発揮します。
ただし、構造が複雑であるため、
ベーン式に比べてサイズが大きくなり
コストも高くなる傾向があります。
ロータリーアクチュエータの用途
産業用設備でのロータリーアクチュエータの使用例としては、
次のようなものが挙げられます。
📌 工作機械の回転テーブル
- 加工物を一定角度で回転させることで、
複数の面を加工する場合に使用されます。
📌 自動組立ラインの回転アーム
- 自動化設備において部品を特定の角度まで回転させ、
次の工程に送り出す機能を果たします。
📌 バルブの操作
- バルブの開閉を遠隔で行う際に、
ロータリーアクチュエータを使用して正確な回転動作を実現します。
📌 コンベアの方向転換
- コンベアシステムにおいて、
物体を一定角度で方向転換させるために使用されます。
ロータリーアクチュエータの選定ポイント
ロータリーアクチュエータを選定する際には、
以下のポイントに注意する必要があります。
回転角度
用途に応じた適切な回転角度を持つアクチュエータを選定します。
90度、180度など、必要な角度範囲に
対応できるものを選ぶことが重要です。
トルク
回転させる対象物の重量や負荷に応じたトルクが必要です。
高トルクを発揮するラック&ピニオン式が必要な場合や、
軽負荷でコンパクトなベーン式を選ぶ場合があります。
応答速度
作業速度やサイクルタイムが重要な場合、
アクチュエータの応答速度も考慮する必要があります。
動作の迅速さが要求される場合は、
空気供給や制御バルブの調整が重要です。
設置スペース
設備内のスペースに合うコンパクトなタイプを選ぶ必要があります。
ベーン式はコンパクトで設置しやすいですが、
トルクが高いラック&ピニオン式はサイズが大きくなるため、
スペースとのバランスを検討します。
耐久性とメンテナンス性
長時間の運用が求められる環境では、耐久性の高いタイプを選び、
メンテナンスが容易な構造かどうかも重要です。
ロータリーアクチュエータの角度調整機能について
空圧機器の一つであるロータリーアクチュエータは、
圧縮空気を動力源とし、回転動作を実現する機械要素です。
特に角度調整機能を備えたロータリーアクチュエータは、
用途や設計の柔軟性を高めるために広く活用されています。
本項では、角度調整機能の概要、利点、設定方法、および注意点について解説します。
角度調整機能の概要
ロータリーアクチュエータの角度調整機能とは、
回転範囲(ストローク角度)を用途に合わせて調整できる機能です。
一般的に次のような機能を持ちます。
角度調整機能の利点
多用途性
1つのロータリーアクチュエータで異なる
作業条件に対応できるため、部品の統一が可能。
精密制御
必要な回転角度を正確に設定できるため、
高精度の動作が要求される場合に適している。
設計自由度の向上
装置全体のレイアウトに合わせたカスタマイズが可能。
角度調整の方法
角度調整機能を活用する際の一般的な手順は以下の通りです。
- 初期設定
- アクチュエータのカタログや仕様書を参照し、
調整可能な角度範囲を確認します。 - 必要な工具(六角レンチなど)を準備します。
- アクチュエータのカタログや仕様書を参照し、
- 調整作業
- アクチュエータ本体に設けられた調整ネジや
ストッパーボルトを使用して、回転角度を変更します。 - 多くの機種では左右それぞれに調整用ネジがあり、
回転範囲を左右独立して設定可能です。
- アクチュエータ本体に設けられた調整ネジや
- 固定と確認
- 設定後、ストッパーボルトをしっかり固定し、
調整が意図した通りであるか確認します。 - 空圧を通して試運転を行い、動作が適正か検証します。
- 設定後、ストッパーボルトをしっかり固定し、
角度調整時の注意点
調整範囲の制限
カタログで指定された調整範囲を超える設定を行うと、
内部構造が損傷する可能性があります。
精度管理
微調整を行う際、ストッパーボルトが緩みやすい場合があるため、
適切な締め付けを行います。
負荷の影響
設定角度に応じて負荷が変わるため、
必要に応じて動力源の圧力や流量も調整します。
活用事例
- 組立装置
- 回転角度を90°に設定し、部品の方向を正確に揃える。
- 搬送装置
- 部品を180°回転させて裏表を切り替える動作を実現。
- 包装機械
- 包装材を任意の角度で折り曲げるために使用。
ロータリーアクチュエータの角度調整機能は、
設計自由度を高め、装置全体の柔軟性を向上させます。
ただし、調整範囲の制限や精度管理などの注意点を考慮しながら、
最適な設定を行うことが重要です。

適切な設定と運用で、
装置の性能を最大限に引き出しましょう。
まとめ
ロータリーアクチュエータは、機械設計において
回転運動を実現するための重要な空圧機器です。
ベーン式やラック&ピニオン式など、
用途や求められる性能に応じて適切な種類を選定することが、
設備の効率向上やトラブルの防止につながります。
機械設計者は、トルク、回転角度、設置スペースなどを考慮し、
最適なアクチュエータを選定することで、
安定した性能を発揮する設備を実現できます。

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。




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