〜安全確保から自動化まで、広範囲を見守る頼れる目〜
機械設計において、人や物の侵入検知や位置確認、安全確保などの用途で活躍するのが「エリアセンサー(光軸アレイ型センサー)」です。
この記事では、エリアセンサーの基本的な特性から選定時のチェックポイントまでを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
エリアセンサーとは?
エリアセンサーは、複数の光軸(赤外線ビーム)を縦または横に並べて設置するセンサーです。
対象物がこの光の壁(エリア)を横切ることでビームが遮断され、検知信号が出力されます。
多くの場合、送信側と受信側の2台1セットで使用し、対象の有無や通過を検知します。安全用では「セーフティライトカーテン」と呼ばれることもあります。
エリアセンサーの主な特性
特性 | 内容 |
---|---|
📏 広範囲検知 | 数十cm〜数mの幅と高さをカバー可能。 |
👤 人や物の検知が可能 | 手・腕・人・部品など、サイズに応じて反応。 |
⚡ 高速応答 | 数msレベルの応答速度で動作を検知。 |
🔧 取り付け自由度が高い | 水平・垂直・斜めなど、取り付け方向を自由に設計可能。 |
🚨 安全確保に最適 | 保護エリアをつくることで危険エリアへの侵入を検知。 |
🔢 ビームピッチ(光軸間隔)が選べる | 検知対象に応じて細かいものも検出可能(例:10mm間隔)。 |
エリアセンサーの用途例
用途 | 内容 |
---|---|
👷♂️ 安全対策 | プレス機などの危険エリアへの人の侵入検知(セーフティライトカーテン) |
🚪 ゲート検知 | ゲート・扉の通過検知や挟み込み防止 |
📦 ワーク検出 | 搬送ラインでの部品・箱の通過や停止検出 |
🤖 ロボット協働 | ロボットの作業空間に人が近づいたときの停止・減速制御 |
エリアセンサー選定のポイント
ビームピッチ(光軸間隔)
- 検出対象のサイズに応じて選定します。
- 例:手の侵入 → 20mmピッチ、指の侵入 → 10mmピッチなど。
- 小さいものを検出するには、ピッチを細かくする必要があるが、検出距離が短くなる傾向があります。
検出距離(有効距離)
- センサー間をどのくらい離して設置できるか。
- 例:最大3m、5m、10mなど。搬送設備や機械サイズに応じて選定。
- 距離が長いほど設置しやすいが、設置精度が求められます。
応答時間
- ワークの通過速度や安全制御との連動に影響します。
- 高速搬送ラインでは応答時間が数ms以下のタイプを選定するのが理想です。
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環境耐性(防塵・防水)
- 設置場所が工場内の粉塵環境や洗浄エリアであれば、IP65やIP67などの保護等級を確認。
- 光学面が汚れると検出ミスが起きやすいため、メンテナンス性も重要。
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取付スペース・形状
- 装置に組み込むスペースが限られている場合は、スリムタイプ(厚さ10mm以下)などが便利。
- 曲面や障害物を避けたい場合は、ミラーを用いたL字配置も選択肢です。
出力仕様・インターフェース
- 接点出力、NPN/PNP、アナログ出力など、使用するPLCや制御機器に合わせて出力形式を選定。
- 最近はIO-Link対応モデルもあり、配線の簡素化や設定情報の管理が可能。
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よくある選定ミスと対策
よくあるミス | 対策 |
---|---|
センサーが対象を検出しない | ビームピッチが粗すぎる、または対象が光を透過している |
誤検出が多い | 光学面の汚れや周囲の光の影響(対策:カバー取り付け、感度調整) |
設置がうまくいかない | センサー間の距離が長すぎてズレが発生(対策:位置調整治具の活用) |
エリアセンサーとセーフティライトカーテンの違いとは?
〜似ているけど用途は違う!正しい使い分けで安全&効率を確保〜
工場の自動化や安全対策でよく耳にする「エリアセンサー」と「セーフティライトカーテン」。
どちらも「人やモノの通過を検出する」センサーですが、機能・性能・使用目的が異なります。
本項では、両者の違いと適切な使い分け方を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
それぞれの役割とは?
項目 | エリアセンサー | セーフティライトカーテン |
---|---|---|
主な用途 | ワーク検出や設備制御 | 作業者の安全確保 |
検出対象 | ワーク、人など | 作業者の身体(指、手、腕、体) |
安全規格対応 | 非対応(※制御用) | 対応(ISO 13849-1など) |
出力 | 一般のセンサ出力(NPN/PNPなど) | 安全出力(OSSD) |
ピッチ | 10mm〜40mm程度 | 14mm/30mm/50mm(用途別) |
安全カテゴリ | 通常の制御用 | セーフティカテゴリ2〜4対応 |
両者の違いをもっと詳しく!
用途の違い
- エリアセンサー
- 搬送ラインのワーク通過検知や、扉の開閉検出など制御用として使用。
- セーフティライトカーテン
- プレス機やロボット周辺など人の安全確保が必要な場所に設置。
安全規格の違い
- エリアセンサー
- 安全規格に基づいていないため、人の保護には使用不可。
- セーフティライトカーテン
- ISO13849-1、IEC61496などの国際安全規格に準拠して設計されています。
出力方式の違い
- エリアセンサー
- 通常の出力信号(ON/OFF)で、PLCなどに信号を送ります。
- セーフティライトカーテン
- OSSD(Output Signal Switching Device)という安全専用出力。
- 誤動作があっても危険な動作を回避できます。
光軸間隔(ピッチ)
- エリアセンサー
- 10〜40mm程度が一般的で、用途に応じて選定。
- セーフティライトカーテン
- 検出する体の部位(指・手・体)ごとに光軸ピッチが決まっており、用途に応じて選びます。
用途 | ピッチ例 |
---|---|
指検出 | 14mm |
手検出 | 30mm |
人体検出 | 50mm以上 |
具体的な使い分け例
使用シーン | 適切なセンサー | 理由 |
---|---|---|
部品の有無検知 | エリアセンサー | 精度や応答性を重視。安全規格は不要。 |
作業者の侵入防止 | セーフティライトカーテン | 国際安全規格準拠が必須。人命保護に直結。 |
ゲートの開閉検知 | エリアセンサー | ゲートを通る物体や人の検出に十分。 |
プレス機の安全対策 | セーフティライトカーテン | 手や腕の検知で機械を停止させるため。 |
注意点:エリアセンサーで安全対策をしてはいけない!
🚫エリアセンサーは安価で手軽に設置できますが、人の保護目的では絶対に使ってはいけません。
🚫事故が発生した際、安全装置として認められないため、企業責任が問われる可能性があります。
エリアセンサーとセーフティライトカーテンの違いのまとめ
比較項目 | エリアセンサー | セーフティライトカーテン |
---|---|---|
用途 | 制御用(物体検出) | 安全用(人の保護) |
規格対応 | 非対応 | 対応(ISO、IEC) |
出力 | 通常出力 | 安全出力(OSSD) |
価格 | 比較的安価 | やや高価(安全設計) |
使用例 | ワーク検出、ゲート開閉 | プレス機、ロボット安全対策 |
ひとことアドバイス
- 制御目的 → エリアセンサー
- 安全目的 → セーフティライトカーテン

はじめ
安さや設置のしやすさだけで判断せず、「何を守るためのセンサーなのか?」を明確にして選定することが大切です!
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
エリアセンサーとは | 複数の光軸で広範囲を検出するセンサー。安全・位置検出に活用。 |
主な用途 | 安全対策、搬送ラインのワーク検出、ゲート制御など。 |
選定ポイント | ビームピッチ、検出距離、応答速度、環境耐性、設置スペースなど。 |
注意点 | 設置ズレ、光学面の汚れ、対象物の材質による誤動作に注意。 |
エリアセンサーは、「人の安全」と「設備の効率化」を同時に実現できる、非常に頼もしい存在です。
選定の際は、機械の動作や人の導線、作業環境をしっかりイメージして、最適な仕様を選びましょう。
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