エア配管の圧力損失とは?原因と対策をわかりやすく解説【空圧設計の基本】

動力選定

空圧機器を設計するとき、つい「供給圧力」ばかりを気にしていませんか?

実は、空気の通り道であるエア配管の圧力損失を見落とすと、
シリンダやバルブが想定通りに動作しない原因になります。

この記事では、エア配管の圧力損失の仕組み・原因・対策方法
初心者にもわかりやすく解説します。

圧力損失を正しく理解すれば、
より安定した空圧システムを設計できるようになります。


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エア配管における「圧力損失」とは?

圧力損失とは、空気が配管を流れる途中で生じる圧力の低下のことです。

空気は流れる際に、配管内壁の摩擦や、
エルボ(曲がり)・分岐などでエネルギーを消費します。

その結果、末端の機器(シリンダやノズルなど)に
届く圧力が低下してしまうのです。

簡単に言えば、
「コンプレッサで0.5MPaに設定しても、末端では0.45MPaしか届かない」
というのが圧力損失です。


圧力損失が発生する主な原因

原因内容対策
配管径が細い流速が上がり
摩擦が増加
配管径を太くする
配管が長い摩擦抵抗が蓄積配管ルートを短くする
曲がり・分岐が多いエルボ・T字継手で
乱流が発生
継手を減らし、スムーズな流路に
継手・バルブの抵抗内径が狭い
段差がある
抵抗の少ない継手を選ぶ
フィルタ・レギュレータの目詰まり流路が塞がれ
圧力低下
定期的な清掃・交換を実施

特に、細い配管や長いルートは要注意。

「圧力が足りない」と感じたら、
まず配管径とルートを見直しましょう。


Q&Aで理解する「圧力損失」

Q1. 圧力損失が大きいと何が問題なの?

シリンダの推力やモーターのトルクが低下し、
動作が遅くなったり不安定になります。

特に高速動作や高精度制御が必要な装置では致命的です。


Q2. 配管を太くすれば解決しますか?

ある程度は改善しますが、
太くしすぎるとコストやスペースが増加します。

設計段階で、流量に見合った
適正配管径を選定することが重要です。


Q3. 配管の長さはどのくらいまで大丈夫?

一概には言えませんが、
5mを超える場合は圧力低下を意識したほうがよいです。

途中にバルブや継手が多い場合は、
より短くすることが望ましいです。


Q4. 圧力損失を簡単に確認する方法は?

実際の装置でエア入力側と出力側の圧力を比較すればOKです。
差が大きい場合、配管径やルートに問題がある可能性があります。


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圧力損失を簡単に確認する方法とは?

エア配管のトラブルを見抜く現場チェックのコツ

エアシリンダやエアモーターが「遅い」「力が弱い」と感じたとき、
まず疑いたいのが配管内の圧力損失です。

圧力損失は、配管内の摩擦や継手抵抗によって、
コンプレッサーから送られる空気圧が途中で下がってしまう現象。

これを放置すると、装置の動作不良やエネルギーロスの原因になります。

そこでおすすめなのが、
「入力側と出力側の圧力を比較して確認する」
という簡単なチェック方法です。

この記事では、その確認方法と得られるメリットについて、
現場目線でわかりやすく解説します。


圧力損失を簡単に確認する方法

圧力損失の確認は、2か所の圧力を比べるだけでOKです。

【確認手順】

  1. コンプレッサーから出た直後(入力側)に圧力計を取り付ける
  2. エアシリンダやエア機器の直前(出力側)にも圧力計を取り付ける
  3. 装置を通常動作させた状態で、両方の圧力を比較する

もし、

入力側:0.6MPa
出力側:0.5MPa

というように0.1MPa以上の差があれば、
圧力損失が発生していると判断できます。

この差が大きいほど、配管径の不足やルートの悪さ、
フィルタ詰まりなどの問題がある可能性が高いです。


圧力損失を確認するメリット

① トラブル原因をすぐ特定できる

エア装置が正常に動かないとき、
原因が「シリンダ」なのか「配管」なのかを判断するのは意外と難しいもの。

圧力を比較するだけで、
問題がどこにあるかを簡単に切り分けできます。


② 無駄な調整や交換を防げる

圧力損失を把握せずに部品交換を行うと、
「結局直らなかった」という無駄なコストや時間が発生します。

圧力比較を行えば、
根本原因を特定して正しい対策ができるため、
メンテナンス効率が向上します。


③ エア消費と電力コストを削減できる

圧力損失が大きいと、装置に必要な圧力を
得るためにコンプレッサーが余分に稼働します。

つまり、電気代とエア漏れリスクが増えるということです。

圧力差を小さく保つことで、

  • コンプレッサーの負荷を減らす
  • 無駄なエア消費を防ぐ
  • 長期的なエネルギーコストを削減する

といった効果が期待できます。


④ 装置の安定動作につながる

圧力損失が安定していない配管では、
シリンダの動作が遅れたり停止したりといった
不具合が発生しやすくなります。

定期的に圧力差を確認することで、
装置の動作安定性を維持できます。


現場で使えるワンポイント

  • 圧力計は「0.1MPa単位」で読めるタイプを使用
  • 点検口やレギュレータ部に圧力計を仮設すると便利
  • シリンダの動作中(エアが流れている状態)で測定するのがポイント

圧力損失の確認は、
「入力側と出力側の圧力を比較する」だけの簡単なチェックで行えます。

この小さな確認を習慣化することで、

  • トラブルの早期発見
  • 無駄な交換作業の防止
  • エネルギーコスト削減
  • 装置の安定稼働

といった大きなメリットが得られます。

「圧力計を2つ取り付けるだけ」でトラブルを未然に防げるのです。

空圧設備の保守・設計では、ぜひこの確認を
ルーチン点検の1つとして取り入れてみましょう。

設計者が押さえるべきポイント

  • 配管径は「流量」に合わせて決める
  • 曲がりは最小限にする
  • 継手・バルブの内径を確認する
  • フィルタやレギュレータのメンテナンスを怠らない

圧力損失は、エア機器の性能を左右する非常に重要な要素です。

いくら高性能なシリンダを使っても、
配管設計が悪ければ本来の性能を発揮できません。

「圧力が足りない=コンプレッサーのせい」ではなく、
「配管設計の見直し」から。
これが空圧設計における基本の考え方です。

圧力損失が大きいとどうなる?

圧力損失を放置すると、次のようなトラブルが起こります。

  • シリンダの推力が不足する
  • 動作速度が遅くなる
  • 電磁弁が正しく切り替わらない
  • コンプレッサが過剰に稼働し、エネルギーコストが上昇

空圧設計では、末端機器で必要な圧力(例:0.5MPa)が確保できるよう、
逆算して配管径やコンプレッサ圧力を設定することが重要です。


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圧力損失を抑える設計のコツ

  1. 配管径は「余裕を持って」選ぶ
    • 小さすぎる配管はトラブルのもと。
    • 少し太めを選定するのが安心です。
  2. エルボやT字継手を減らす
    • 曲がりが増えるほど乱流が発生します。
    • ルートをできるだけ直線的に。
  3. エアフィルタ・レギュレータの定期点検
    • 目詰まりや劣化は圧力損失の原因。
    • 清掃・交換を忘れずに。
  4. 末端圧力を実測する
    • 計算値だけでなく、実際の圧力を
      確認しておくと信頼性が高まります。

まとめ:圧力損失を意識すれば、空圧はもっと安定する!

  • 圧力損失とは、空気が流れる途中で生じる圧力の低下
  • 細い・長い・曲がりの多い配管で発生しやすい
  • 流速は6〜10m/s程度が目安
  • 設計時には「配管径」「配管ルート」「清掃メンテナンス」を意識する

エア配管の圧力損失は、
シリンダの動作安定性やエネルギー効率に大きく影響します。

流量や圧力だけでなく、
「空気の通り道の抵抗」も考慮して設計することで、
トラブルのない快適な空圧システムを実現できます。


はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。

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