エアシリンダーは、空気の力で直線運動をする機械要素です。
でも…「今、どこまで動いたの?」「ちゃんと戻ったの?」
――こんな情報がわからないと、機械の制御はできませんよね?
そんなときに使われるのが 「オートスイッチ」 です。
オートスイッチとは?
オートスイッチとは、エアシリンダーの動作位置を検出するセンサーのことです。
エアシリンダーのピストン部分には磁石が内蔵されており、
ピストンが近づくとオートスイッチが磁力を感知して「今ここにいるよ!」と信号を出します。
この信号を使って…
✅次の動作を開始する
✅安全確認を行う
✅異常停止をする
といった制御ができるようになります。
取付け位置で動作位置を決める
オートスイッチは、シリンダー本体の外側(溝やバンド部)に取付けます。
取付けた位置にピストンが来ると、センサーが反応してONになります。
👉 オートスイッチがONになる=その位置にピストンが来た証拠
これにより「前進完了」「後退完了」「中間位置検出」など、動作タイミングの正確な把握が可能になります。
オートスイッチの信号はどう使う?
オートスイッチの出す信号は、PLC(シーケンサ)やリレー回路などで受け取って、
機械の動作制御に使われます。
🔍例えばこんな感じ

つまり、「今ここだよ!」という合図をもとに、機械は次のアクションを決めているのです。
オートスイッチの種類
エアシリンダーの動作位置を検出するセンサー、「オートスイッチ」には主に 有接点タイプ と 無接点タイプ があります。
本項では、「有接点タイプのオートスイッチ」にフォーカスして、その特徴や注意点をわかりやすく解説します!
有接点タイプとは?
有接点オートスイッチは、内部に機械的な接点(リードスイッチ)を持っており、
ピストン内部の磁石に反応して接点が物理的に開閉することでON/OFF信号を出します。
✅ シンプルな構造で価格が安い
✅ 初期の電気設計でも扱いやすい
✅ 昔から使われている信頼性のある方式
ですが、その構造上、いくつかの特性に注意が必要です。
有接点タイプの寿命
有接点タイプは機械的な接点を動かすため、摩耗による寿命があります。
- 寿命の目安:100万〜500万回程度(使用条件による)
- 負荷の大きい機器(リレー・ランプなど)に直接接続すると寿命が短くなることも
⚠️ 接点が摩耗すると、信号が出たり出なかったりするトラブルにつながります。
有接点タイプの応答時間
有接点タイプは、接点が物理的に開閉するので、応答速度はやや遅めです。
- 応答時間の目安:数ms程度(2ms〜5ms前後)
- 高速で動く機構やタイミングがシビアな制御には不向きな場合があります。
🚫 非常に高速で動作するシリンダ制御では、信号遅延による誤動作のリスクがあるため注意が必要です。
有接点タイプの衝撃耐性
有接点スイッチは繊細な構造をしているため、外部からの衝撃に弱い傾向があります。
- 工場現場でよくある「ぶつけた」「配線を引っ張った」などのダメージで破損しやすい
- 高振動・衝撃のある場所には非接点タイプの使用が望ましい
💡 取り付け時の位置ずれや落下にも注意しましょう!
有接点タイプのチャタリングについて
「チャタリング」とは、接点が一度ONになる瞬間に細かくバタついて何度もON/OFFを繰り返す現象です。
- 有接点タイプでは構造上、どうしてもこの現象が起こりやすい
- PLC側でチャタリング除去機能(フィルタ)を設定するなどの対策が必要です
チャタリングがあると、誤信号や制御タイミングの乱れが起こる可能性があります。
有接点タイプの特徴と使いどころ
項目 | 有接点オートスイッチの特徴 |
---|---|
コスト | 安価で導入しやすい |
寿命 | 接点の摩耗により寿命あり(数十万〜100万回) |
応答時間 | やや遅め(数ms) 高速動作には不向きな場合も |
衝撃耐性 | 構造が繊細なため、振動や衝撃にはやや弱い |
チャタリング | 起こりやすいのでPLC設定や回路で除去が必要 |
有接点タイプはコスト重視で選ぶ場合に有効です。
寿命や動作条件に応じて使い分けるのがポイントです。

高速動作・高耐久性・ノイズ耐性が求められる場合は、非接点タイプを検討しましょう!
非接点タイプとは?
非接点オートスイッチは、リードスイッチを使わず、電子回路(トランジスタ)でON/OFF信号を出すタイプです。
✅ 接点がないため物理的な摩耗がなく、長寿命
✅ 高速応答や高振動環境でも安定動作
✅ 現在では主流のオートスイッチ形式
非接点タイプの寿命について
非接点タイプは機械的な接点がないため、摩耗による寿命がありません。
- 通常は1,000万回以上の動作が可能
- 適切な電源・負荷条件で使用すればほぼメンテナンスフリー
🔋 長期使用やメンテナンスが難しい場所にはとても適しています。
非接点タイプの応答時間
電子回路で動作しているため、応答時間は非常に速いのが特徴です。
- 応答時間は1ms以下のものが多く、高速動作にも対応可能
- シリンダーの高速動作制御やタイミングがシビアな装置に最適
📈 生産性や装置速度を重視する設計では、非接点タイプが有利です。
非接点タイプの衝撃・振動耐性
非接点タイプは内部に可動部がないため、外部の衝撃や振動に強いです。
- 工場内の機械にありがちな衝撃・落下・振動環境でも安定動作
- 可動部がない分、構造的に壊れにくい
🔧 安定した信号検出を必要とする現場では、信頼性の高い選択肢です。
非接点タイプのチャタリングについて
非接点タイプは、構造的にチャタリングが発生しません。
- 機械的なバタつきがないため、信号が非常に安定
- PLC側でフィルタ処理を気にせず使用できるのも大きなメリット
📊 設計やプログラムもシンプルにできます!
非接点タイプの注意点(デメリット)
もちろん非接点タイプにも注意点はあります。
注意点 | 内容 |
---|---|
コスト | 有接点に比べてやや高価(ただし性能を考えると妥当) |
ノイズの影響 | トランジスタ出力なので、ノイズ対策(配線や設置)が重要 |
電流制限 | 一般的に直接リレーやランプを駆動できない (間にPLCやインターフェースが必要) |
非接点タイプの特徴と使いどころ
項目 | 非接点オートスイッチの特徴 |
---|---|
寿命 | 接点がなく超長寿命(1,000万回以上) |
応答時間 | 非常に速く、高速制御に最適 |
衝撃・振動耐性 | 構造が堅牢で外乱に強い |
チャタリング | なし。安定したON/OFF信号を出力 |
コスト | やや高価だが高性能 |
✨ 非接点タイプはどんなときに選ぶ?
✔ 長時間・長期間使用したい
✔ 高速なシリンダー動作を正確に検出したい
✔ 現場の環境が振動や衝撃にさらされやすい
✔ チャタリングがトラブルになりがち

そんなときは非接点タイプ一択!
有接点タイプ vs 非接点タイプ 比較表
項目 | 有接点タイプ | 非接点タイプ |
---|---|---|
動作方式 | 磁石の接近により接点が物理的に動作 | 磁石の接近をトランジスタで検出 |
寿命 | 100万回〜500万回程度 (接点摩耗あり) | 1,000万回以上(摩耗なし) |
応答時間 | やや遅め(数ms〜) | 非常に高速(1ms以下が一般的) |
チャタリング | 発生しやすい | ほぼなし |
衝撃・振動の耐性 | 弱い(接点が動くため) | 強い(構造に可動部なし) |
ノイズ耐性 | 高い(電磁リレー動作) | 弱いことがある(配線・設置に注意) |
コスト | 安価 | やや高価 |
負荷駆動 | 小リレーやランプの直接駆動が可能 | 電流制限あり。PLCなどが必要 |
使用例 | シンプルな装置、低頻度の位置検出 | 高速機構、長寿命要求、精密制御が必要な装置 |
✅ オートスイッチ選定フロー(簡易版)
以下のフローチャートで、装置や使用環境に合ったオートスイッチの種類を選定できます。
① シリンダーの動作頻度は高い?
├─ はい → ②へ
└─ いいえ → ③へ
② 応答速度が重要?(高速動作など)
├─ はい → 非接点タイプ推奨(高速・長寿命)
└─ いいえ → 有接点 or 非接点どちらでもOK
③ 使用環境に振動や衝撃はある?
├─ はい → 非接点タイプ(耐衝撃性◎)
└─ いいえ → ④へ
④ コストを抑えたい?
├─ はい → 有接点タイプ(コスパ重視)
└─ いいえ → 非接点タイプ(性能重視)
✨ 選定のポイントまとめ
✅ PLCなし、ランプ直接駆動など → 有接点タイプが便利
✅ とにかく耐久性と信頼性が必要 → 非接点タイプ
✅ 安価でOK、頻度も少ない → 有接点タイプ
✅ 高速動作 or 微妙なタイミング制御 → 非接点タイプ
出力方式(NPN / PNP)
機械の制御回路に合わせて、NPNかPNP出力のどちらかを選ぶ必要があります。
オートスイッチの活用例
▶シリンダーの前進完了検出
👉 加工機の動作開始
▶ワーク有無を検出
👉 エラーを防止
▶ロボットの位置制御補助
👉 高速で正確なタイミング制御
など、多くの自動機械で使われています。
まとめ
エアシリンダーは単純な構造ですが、正確な制御を行うには「位置情報」が不可欠です。
🔹 オートスイッチは、ピストンの位置を検出するセンサー
🔹 信号をPLCなどに送って制御の合図になる
🔹 正確な動作と安全のために欠かせない存在
オートスイッチがあることで、エアシリンダーは「ただ動くだけ」から「賢く制御できる装置」へと進化します!
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