ボールベアリング(深溝玉軸受)を選定する際、
「密封形(シールド形・ZZ形)」と「開放形」の
どちらを使うべきか迷うことはありませんか?
一見同じように見えるベアリングですが、
潤滑方式や使用環境によって最適なタイプは異なります。
この記事では、初心者の方でも理解できるように、
密封形と開放形の違い・特徴・選定ポイントをわかりやすく解説します。
密封形(シールド形・ZZ形)とは?
密封形ベアリングは、外周に金属カバー(シールド)やゴムシールが付いたタイプです。
これにより、内部のグリースが外へ漏れにくく、
ほこりや切粉などの異物が入りにくい構造になっています。
密封形の特徴
使用例
注意点
開放形ベアリングとは?
開放形は、シールドやシールが付いていないベアリングです。
内部のボールや保持器が見える構造で、
グリースやオイルを外部から注入して使うタイプになります。
開放形の特徴
使用例
注意点
選定の目安(比較表)
項目 | 密封形(ZZ形・LLU形など) | 開放形 |
---|---|---|
潤滑 | 封入グリース式 | 外部給油式 |
メンテナンス | 不要 | 必要 |
異物対策 | 強い | 弱い |
回転抵抗 | やや大きい | 小さい |
環境適性 | 粉塵・水分が多い環境 | クリーン環境・高速用途 |
コスト | やや高い | 安価 |
密封形の「シールド形」と「シール形」の違いと使い分け方を解説!
ボールベアリングを選ぶときに、カタログでよく見かける「ZZ形」や「LLU形」などの表記。
これらはどちらも密封形ベアリングに分類されますが、
実は「シールド形」と「シール形」という構造の違いがあります。
見た目はよく似ていますが、使用環境や目的によって最適なタイプが異なります。
本項では、初心者の方にもわかりやすく、
シールド形とシール形の特徴・違い・使い分けを解説します。
密封形ベアリングとは?
まず前提として、「密封形」とは内部のグリースが外に漏れず、
外部からゴミや水分が入らないようにした構造のことです。
内部に潤滑剤(グリース)が封入されており、
メンテナンスフリーで長期間使用できるのが特徴です。
密封形には主に次の2種類があります。
種類 | 表記例 | 密封構造 | 特徴 |
---|---|---|---|
シールド形 | ZZ, Z | 金属板 | 摩擦が少なく、高速回転向き |
シール形 | LLU, 2RS,DDU など | ゴム製 | 密閉性が高く、防塵・防水性に優れる |

シール形の表記はメーカーにより異なるので、
使用するメーカーのカタログでチェックしましょう。
シールド形(ZZ形)の特徴
シールド形は、金属板(スチール製)で内部を保護する構造です。
ベアリングの内輪と外輪の間にわずかなすき間があり、接触せずにカバーしているのがポイントです。
シールド形のメリット
シールド形の デメリット
適した用途
シール形(LLU形・DDU形)の特徴
シール形は、ゴム製(または合成樹脂製)のカバーで完全に密封されたタイプです。
ゴム部が内輪に接触して密閉しているため、異物の侵入をしっかり防ぎます。
シール形のメリット
シール形のデメリット
適した用途
シールド形とシール形の比較表
項目 | シールド形(ZZ) | シール形(LLU / 2RS) |
---|---|---|
密封構造 | 金属カバー(非接触) | ゴムカバー(接触) |
摩擦抵抗 | 少ない | やや大きい |
回転速度 | 高速向き | 低〜中速向き |
防塵・防水性 | 低い | 高い |
メンテナンス性 | 中 | 高 |
主な用途 | モーター、ファン | 工作機械、屋外装置 |
設計時の使い分けポイント
- 回転性能を優先したい場合 → シールド形(ZZ)
👉 軽快な回転で効率を重視する装置に最適。 - 環境耐性を優先したい場合 → シール形(LLU / DDU)
👉 粉塵・水分がある現場や屋外での使用におすすめ。 - 迷った場合
👉 基本的に屋内装置=シールド形、屋外装置=シール形と覚えると簡単です。
環境と回転条件で選ぶのがポイント!
環境条件 | 推奨タイプ | 理由 |
---|---|---|
クリーン環境・高速回転 | シールド形 | 低摩擦で効率的 |
粉塵・湿気・水分あり | シール形 | 防塵・防水性が高い |
長期メンテナンス不要 | シール形 | グリース保持力が高い |
ベアリングの寿命は「選定の一瞬」で決まります。
密封形を選ぶときは、回転速度と使用環境の2点をチェックして、
「シールド形(ZZ)」か「シール形(LLU)」を正しく使い分けましょう!
密封形と開放形を使い分けるポイントを解説!
ボールベアリングを選定するとき、
見た目が似ていても「密封形(ZZ形・LLU形)」と「開放形」では、
使い方の考え方が大きく異なります。
どちらを選ぶかによって、メンテナンス性・寿命・回転性能に大きな差が出るため、
設計段階でしっかり検討することが大切です。
ここでは、初心者でもすぐに判断できるように、
用途別にわかりやすく設計のポイントを解説します。
メンテナンス頻度を減らしたい場合 → 密封形(ZZ形・LLU形)
「機械をできるだけ触らずに長く使いたい」
「潤滑管理を簡単にしたい」という場合は、
密封形ベアリングが最適です。
密封形は、内部にグリースがあらかじめ封入されており、
金属やゴムのカバーで密閉されています。
そのため、ほこりや水分が入りにくく、グリースが長持ちするのが特徴です。
🔍 代表的な使用例
モーター、ファン、搬送機、屋外装置
✅ メリット
メンテナンス不要・長寿命・安定した動作
一方で、シールドやシールがある分だけわずかに回転抵抗が増えるため、
高速回転を重視する場合は注意が必要です。
高速・高精度回転を重視する場合 → 開放形
「とにかく軽く回したい」「高速で精密に動かしたい」という用途では、
開放形ベアリングがおすすめです。
開放形はシールドがなく、内部のボールや保持器がむき出しの構造をしています。
そのため、摩擦が少なく、スムーズに回転できます。
🔍 代表的な使用例
スピンドル、精密機器、オイル潤滑式装置
✅ メリット
低トルク・高速回転性・精度が高い
ただし、異物が入りやすく、潤滑管理が必須です。
定期的にグリースアップやオイル給油を行える環境で使うのが前提になります。
環境に粉塵・水分がある場合 → 密封形を選ぶ
「工場内で粉塵が舞う」「水滴がかかる可能性がある」といった環境では、
密封形が圧倒的に有利です。
開放形をそのまま使うと、内部にほこりや水が侵入して
ベアリングが早期に摩耗・破損してしまうことがあります。
密封形なら、異物の侵入を防ぎながら潤滑を保持できるため、
過酷な環境でも長寿命化が可能です。
注意点: 高温環境(80℃以上)では、封入グリースの種類も確認すること!
定期給油ができる設計なら → 開放形でもOK
もし装置にオイル給油システムやグリースニップルなどがある場合は、
開放形ベアリングを使う選択もアリです。
開放形は、外部から自由に潤滑を補給できるため、
運転条件に合わせて最適な潤滑状態を維持できます。
特に、高速回転や高温環境では、
密封形よりも熱の逃げが良く、寿命を延ばせる場合もあります。
環境とメンテナンス性で選ぶのが基本!
選定条件 | おすすめタイプ | 理由 |
---|---|---|
メンテナンスを減らしたい | 密封形(ZZ・LLU) | グリース封入済みでメンテ不要 |
高速・高精度回転 | 開放形 | 低トルク・高精度 |
粉塵・水分の多い環境 | 密封形 | 異物の侵入防止 |
給油システムがある | 開放形 | 潤滑制御が可能 |
💡 ポイント
初心者のうちは「迷ったら密封形(ZZ形)を選ぶ」のが基本です。
特に、一般的な産業機械やモーターでは、
密封形が最も扱いやすく、トラブルも少ない傾向にあります。
まとめ
密封形と開放形のどちらを選ぶかは、「環境」と「メンテナンス性」で決まります。
一般的な機械設計では、
粉塵や湿気から保護できる「密封形(ZZ形)」が選ばれることが多いです。
一方で、高速回転やオイル潤滑装置があるような特殊環境では、
「開放形」が適しています。
どちらのタイプを使うにしても、「潤滑と保護」を意識することが、
長寿命でトラブルの少ない設計につながります。
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