【深溝玉軸受】ボールベアリングの特徴と選定ポイント

機械要素

深溝玉軸受けは、内輪、外輪、鋼球(ボール)、保持器から構成されています。この軸受けの名前の由来は、内輪と外輪に深い円形の溝が形成されており、この溝にボールが収まることで、安定した回転が可能になるためです。

特徴

シンプルな構造

他の種類の軸受けと比較して、構造が非常に単純であり、取り付けやメンテナンスが容易です。

低摩擦

回転摩擦が小さく、摩耗が少ないため、長寿命です。また、摩擦損失が少ないため、機械の効率も高まります。

高い速度対応

深溝玉軸受けは、高速回転に適しています。高速で回転する軸に安定した性能を発揮します。

ラジアル荷重とアキシャル荷重の対応

深溝玉軸受けは、主にラジアル荷重(軸に対して直角にかかる力)を支持しますが、一定量のアキシャル荷重(軸方向の力)にも対応可能です。

深溝玉軸受けの用途

深溝玉軸受けは、その汎用性とシンプルな設計から、多くの機械や設備で広く利用されています。代表的な用途として以下が挙げられます。

  1. モーター・発電機
    • モーターや発電機は、回転運動を伴う機械であり、深溝玉軸受はその回転シャフトを支えるために使用されます。
    • これらの機械では、高速回転が求められるため、摩擦を抑え、効率よく回転できる深溝玉軸受が非常に適しています。
  2. コンベア装置
    • コンベア装置は、搬送用ベルトやローラーを回転させて物を運ぶために広く使われています。
    • コンベアローラーのシャフトを支持するために深溝玉軸受が使われ、滑らかな回転運動を実現します。
  3. ファン・送風機
    • 深溝玉軸受は、ファンや送風機などの機器においても活躍しています。
    • これらの機器では、回転運動によって風を送り出すため、スムーズな回転が不可欠です。
    • 深溝玉軸受は、低摩擦で長寿命な回転をサポートするため、ファンの効率向上に寄与します。
  4. ロボットや自動化設備
    • ロボットや自動化機器にも、深溝玉軸受は多用されています。
    • ロボットアームの関節部や、移動系の機構など、高精度で低摩擦な回転が求められる箇所に使用されています。

深溝玉軸受けの選定ポイント

深溝玉軸受けを選定する際には、使用する環境や機械の仕様に合わせて、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。

荷重

  • ラジアル荷重(軸に対して垂直方向にかかる力)が主要な荷重ですが、アキシャル荷重(軸方向にかかる力)も発生する場合は、その負荷に適応できる設計を選ぶことが大切です。
  • 標準的な深溝玉軸受けはアキシャル荷重もある程度対応しますが、荷重が大きい場合は他の軸受け(例えばアンギュラ玉軸受けなど)を検討する必要があります。

回転速度

  • 軸受けの回転速度に対応できる限界があるため、機械の回転数に合わせたものを選定する必要があります。
  • 高速で回転するモーターなどには、高回転仕様の深溝玉軸受けが適しています。

潤滑方法

  • 適切な潤滑がなされていることが、深溝玉軸受けの長寿命を保つために重要です。
  • 自動的に潤滑を供給する機構がある場合は、開放型の軸受けを選定できますが、密閉型やシールド型の軸受けもあり、これらは潤滑剤が封入されており、保守が少なく済むという利点があります。

防塵・防水性能

  • 使用環境が粉塵や水などにさらされる場合、防塵性能や防水性能の高いシールド型または密封型の深溝玉軸受けが推奨されます。
  • これにより、異物の侵入を防ぎ、寿命を延ばすことができます。

温度条件

  • 高温または低温で使用される場合は、軸受けの材料や潤滑剤が温度に耐えられるかどうかを確認する必要があります。
  • 温度範囲を超えると、摩耗や変形が発生し、故障の原因となります。

深溝玉軸受けの種類

深溝玉軸受けにはいくつかのバリエーションがあります。それぞれの特性を理解し、使用目的に応じた選定が求められます。

  1. 開放型
    • 軸受けの内部が見える構造で、潤滑剤の補充や保守が必要な場合に適しています。
  2. シールド型
    • 軸受けの両側にシールドが取り付けられており、粉塵などの異物の侵入を防ぎますが、潤滑剤の補充はできません。
  3. 密封型(シール型)
    • 潤滑剤が密封されており、長寿命で保守が不要な設計です。
    • 水や埃に強いため、厳しい環境下でも使用可能です。

呼び番号の名称の法則を解説

深溝玉軸受け(ボールベアリング)は、機械設計において最も広く使われている軸受けの一つです。使用するベアリングを選定する際には、呼び番号(品番)を理解することが重要です。本記事では、深溝玉軸受けの呼び番号の構成やその意味について、例を挙げながら解説します。


呼び番号とは?

ベアリングの呼び番号は、種類・寸法・構造を示すコードとして、JISやISOなどの規格に基づいて付けられています。これを理解すれば、品番を見るだけでその軸受けの基本的な仕様がわかります。


呼び番号の構成

呼び番号は一般的に次のような形式で構成されています:

[記号例]:
6204ZZ
[構成]:
「6」-「2」-「04」-「ZZ」

部分内容例(6204ZZの場合)
先頭の数字軸受けの種類6(深溝玉軸受け)
次の数字外径と内径の比率(シリーズ番号)2(標準的な薄型)
末尾の数字軸受けの内径04(20mm)
追加記号特殊な構造や特性を示す符号(オプション)ZZ(両側シールド付き)

各部分の詳細

1. 先頭の数字:軸受けの種類

先頭の数字は軸受けの種類を表しています。
主な番号とその意味は次の通りです。

数字軸受けの種類特徴
6深溝玉軸受け最も一般的。ラジアル荷重とアキシアル荷重に対応
7アンギュラ玉軸受け高速回転やアキシアル荷重に強い
1自動調心玉軸受け軸の傾きや不整合を自動で調整できる汎用性の高い軸受け
2自動調心ころ軸受け高い荷重に耐えつつ、軸の傾きやずれを吸収できる軸受け
3円すいころ軸受けラジアル荷重とアキシアル荷重の両方に対応
高い耐荷重性を持つ軸受け
NU円筒ころ軸受け高いラジアル荷重に耐える一方で、アキシアル荷重には非対応の軸受け
NA針状ころ軸受け小径・薄型ながら高荷重を支える、軽量・コンパクト設計の軸受け

2. 次の数字吹シリーズ番号(外径と内径の比率)

シリーズ番号は、軸受けのプロポーションを表します。
数字が小さいほど薄型、大きいほど厚型です。ただし、一部例外があります。

数字プロポーション特徴
0非常に薄い軽量設計向け
2薄い(標準)標準的な用途
3厚い(標準よりも肉厚)耐荷重性能が求められる場合
4非常に厚い(重荷重向け)重荷重や高剛性が必要な用途

3. 末尾の数字:内径(mm)

末尾の2桁は軸受けの内径を示します。ただし、一部例外があります。

  • 基本ルール:数字 × 5 = 内径(mm)
    • 例)04 → 4 × 5 = 20mm
    • 例)12 → 12 × 5 = 60mm
  • 例外:内径が20mm未満の場合は、次の特定の数字が使われます。
数字内径(mm)
0010
0112
0215
0317

4. 追加記号:構造や特性の違い

呼び番号の末尾に付く記号は、軸受けの特殊構造や特性を示します。

記号意味特徴
Z片側シールド軸受け内への異物侵入を防ぐ
ZZ両側シールド両側にシールドを装備、メンテナンス軽減
RS片側シールゴムシールで防塵性・防水性を向上
2RS両側シール両側にゴムシール、異物侵入を完全に防ぐ
C3クリアランスが広い高速回転や温度変化に対応

実際の例

  1. 6204ZZ
    • 6 → 深溝玉軸受け
    • 2 → 薄型(標準)
    • 04 → 内径20mm
    • ZZ → 両側シールド付き
  2. 6306C3
    • 6 → 深溝玉軸受け
    • 3 → 厚型(標準よりも肉厚)
    • 06 → 内径30mm
    • C3 → クリアランスが広い

呼び番号を理解するメリット

適切な選定
呼び番号を理解していれば、用途に合ったベアリングを迅速に選定できます。

トラブルの回避
不適切な選定を防ぎ、軸受けの故障や寿命短縮を回避できます。

在庫管理の効率化
呼び番号を把握することで、在庫品を効率的に管理できます。


深溝玉軸受けの呼び番号は、その仕様や特徴を示す重要な情報です。軸受け選定の際には、この法則を理解しておくことで、設計やメンテナンスの効率を大幅に向上させることができます。呼び番号の構成を把握し、適切な軸受けを選定することで、機械全体の性能や信頼性を向上させましょう。

まとめ

深溝玉軸受けは、機械設計において最も汎用性が高く、低摩擦で効率的な回転を提供する重要な部品です。荷重、回転速度、潤滑方法、環境条件を考慮しながら、適切な選定を行うことで、機械の性能と寿命を最大限に引き出すことができます。


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