ローラーチェーンを使った機械で、
「チェーンが外れやすい」「異音がする」「寿命が短い」
といったトラブルに悩んでいませんか?
その原因の多くは、チェーンのたるみ量(テンション)が適切でないことにあります。
たるみが大きすぎても、小さすぎてもトラブルの原因になります。
この記事では、ローラーチェーンの適正たるみ量の考え方と調整のコツを、
初心者にもわかりやすく解説します。
そもそも「たるみ量」とは?

たるみ量とは、チェーンの下側(弛み側)がどれだけ垂れ下がっているかを表す値です。
一般的には、チェーンの上下のスプロケット間(センタ距離)に対して、
どれくらいの変位があるかで評価します。
たるみ量は、チェーンの動力伝達効率や寿命に直結する重要な要素です。
適正たるみ量の目安
ローラーチェーンのたるみ量は、センタ距離(スプロケット間距離)Lを基準にして決めます。
使用条件 | 推奨たるみ量 | 備考 |
---|---|---|
一般的な水平配置 | センタ距離の 4%程度 | 例:センタ距離 500mm → たるみ 20mm |
垂直配置(下向き駆動) | センタ距離の 2%程度 | チェーンが自重で 垂れるため少なめに |
高速回転・衝撃負荷が大きい場合 | センタ距離の 2%程度 | 過大なたるみは 振動・脱落の原因になる |
つまり、センタ距離が500mmの装置なら、20mm程度のたるみが適正です。
※実際の値は、使用環境・チェーンサイズ・メーカー推奨値に従ってください。
つばき産業の技術資料「ローラチェーンの配置と据付」では、
ローラーチェーンには “適当なたるみ” を持たせて使用することが
重要であると記されています。
引用:つばき産業:技術資料 ドライブチェーン ローラチェーンの取扱
チェーンのたるみは重要!張りすぎ・緩すぎによるトラブルを防ごう
ローラーチェーンを使う際、
「たるみ量(チェーンのゆるみ)」の管理はとても重要です。
適正なたるみを保つことで、スムーズな動力伝達と長寿命化が実現できます。
しかし、たるみが「多すぎる」または「少なすぎる」と、
思わぬトラブルを引き起こす原因になります。
たるみが不適切な場合に起きるトラブル例
状況 | 主なトラブル | 原因 |
---|---|---|
たるみすぎ(緩い) | チェーン外れ スプロケットの歯飛び、異音 | テンション不足 チェーン摩耗の促進 |
張りすぎ(きつい) | ベアリング破損、 軸の曲がり、チェーン伸び | 初期張力が過大 熱膨張の影響を無視 |
特に注意したいのは「張りすぎ」
一見、「緩むよりは少し張っておいた方が安心」と思いがちですが、
実は“張りすぎ”の方が深刻なダメージを与えることが多いです。
適正なたるみ管理が長寿命のカギ
チェーンのたるみは「緩すぎず、張りすぎず」が鉄則です。
一般的には、チェーンスパンの約 4% 程度が目安とされています。
(例:スパン500mmなら約20mm)
もし運転中に異音や振動を感じたら、
たるみ量が適正かどうかをまず確認しましょう。
定期的にチェーンのたるみを点検し、メーカー推奨値を守ることが大切
「チェーンが緩まないように」と思って強く張ると、
軸受やモーターに過大な負荷がかかり、機械全体の寿命を縮めることになります。

たるみ量が不適切だと、外れや摩耗、軸破損などのトラブルを招く
張りすぎは特に危険!軸受やモーターに負担をかける
定期的にチェーンのたるみを点検し、メーカー推奨値を守ることが大切
ローラーチェーンのたるみ量の測り方|初心者でもできる簡単チェック方法
ローラーチェーンを長く安定して使うためには、
「たるみ量(たわみ量)」の確認が欠かせません。
たるみ量が適正でないと、
チェーン外れやスプロケットの摩耗、ベアリング破損といった
トラブルにつながるからです。
ここでは、初心者でも簡単にできるたるみ量のチェック方法をわかりやすく紹介します。
測定前の準備
まず、安全のために次の手順を守りましょう。
- 必ず機械を停止する
- 稼働中のチェーンは非常に危険です。
- 必ず電源を切り、安全を確保してから作業を行いましょう。
- たるみ側を確認する
- ローラーチェーンには「張り側」と「たるみ側」があります。
- 駆動中、張力がかかっていない側(ゆるんでいる側)が「たるみ側」です。
測定はたるみ側中央で行うのが基本です。
たるみ量の測り方(手順)
測定はとてもシンプルです。
- チェーンの弛み側中央を軽く指で押す
- 指やスケールなどで軽く押して、上下にどの程度動くかを確認します。
- 上下方向の変位量を測定する
- 押したときの「上方向」と「下方向」それぞれの変位量を足し算します。
この合計の変位量が“たるみ量”です。
測定例
たとえば以下のような場合
- 上方向に押して 5mm 動く
- 下方向に押して 5mm 動く
このときのたるみ量は「10mm」 になります。
つまり、たるみ量は「片側だけの変位」ではなく、
上下両側の合計値で評価するということです。
ひとことアドバイス
チェック項目 | 内容 |
---|---|
測定箇所 | たるみ側の中央 |
測定方法 | 軽く押して上下変位の合計を測る |
たるみ量の目安 | 中心距離の2~4%程度 ※条件による |
注意点 | 機械停止・安全確認を必ず行う |
たるみ量の測定は、定期点検のたびに実施するのがおすすめです。
たるみが増えてきた場合は、チェーンの伸びや摩耗が進行しているサイン。

早めの張り調整や交換を行うことで、
スプロケットや軸受の寿命を大きく延ばすことができます。
正しい張り方・調整のコツ
① 初期伸びを考慮する
チェーンは使用初期に“なじみ”による初期伸びが発生します。
設計時に調整余裕(スライド機構やテンショナー)を持たせておくと安心です。
② 調整後は軽く回して確認する
張りすぎや偏りを防ぐために、調整後はチェーンを数回転させ、
全体のテンションが均一になっているかを確認しましょう。
③ テンショナーを活用する
振動が多い機械や長時間運転する装置では、
スプリング式テンショナーや自動調整式を導入することで、
常に適正たるみを維持できます。
たるみ・張り調整を考慮した設計のコツ
ローラーチェーンを使った伝達機構は、シンプルで高効率ですが、
「設計段階でのちょっとした工夫」が、
寿命やメンテナンス性を大きく左右します。
特に、チェーンのたるみ量や張力の調整を考慮せずに設計すると、
組立後に「張りすぎて動かない」「緩くて外れる」
といったトラブルが起こることもあります。
ここでは、設計段階で押さえておくべき3つのポイントをわかりやすく解説します。
① センタ距離の調整余裕を確保する
チェーンの中心距離(スプロケット間の距離)は、
実際の組立時や使用中に微妙に変化します。
原因は以下のようなものです。
そのため、固定寸法でガチガチに設計してしまうのはNG。
少しの誤差でも張りが強くなり、ベアリングや軸に大きな負担がかかります。
👉 対策ポイント
これらを設けておくことで、後からたるみ量を微調整できる設計になります。
② チェーン配置はなるべく水平が理想
ローラーチェーンは、重力の影響を受ける部品です。
そのため、垂直や傾斜配置にすると、下側にチェーンがたるみやすくなり、
均一な張力を保ちにくくなります。
👉 対策ポイント
こうした配慮で、チェーンの外れや異音を防止できます。
③ 使用環境(振動・粉塵・温度変化)を考慮する
チェーン伝達部は、周囲の環境の影響を受けやすい部分でもあります。
特に、振動・粉塵・温度変化はたるみ量やテンションに直結します。
👉 対策ポイント
これらの対策によって、長期間安定した駆動と寿命延長が期待できます。
設計者へのアドバイス
設計項目 | 対策ポイント |
---|---|
センタ距離調整 | 長穴やスライド機構で調整余裕を確保 |
チェーン配置 | 水平配置が理想。垂直や傾斜の場合はテンションを強めに |
使用環境 | 振動・粉塵・温度変化を考慮したテンション設計 |
ローラーチェーンの寿命を延ばす最大のコツは、
「組立後に調整できる設計にしておくこと」です。
設計時に余裕を持たせるだけで、
メンテナンス時の作業性も大きく向上します。
最初から完璧な張りを狙うよりも、調整できる設計を前提に考えるのが、
現場で信頼される機械設計者の鉄則です。
まとめ:適正たるみ量で長寿命・安定運転!
ローラーチェーンの性能を最大限に発揮するには、たるみ量の管理がカギです。
この記事のポイントまとめ
▶ 適正たわみ量はセンタ距離の2〜4%が目安
▶ 張りすぎても緩すぎてもNG
▶ 初期伸びを考慮して調整機構を設ける
▶ テンショナーの活用が効果的
たるみを正しく管理することで、
チェーンの寿命はもちろん、機械全体の信頼性も向上します。
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