【カップリング】許容ミスアライメントについて【軸ずれ】

機械要素

カップリングは、機械要素の一つであり、2つの回転軸を接続して動力を伝達します。特に、ミスアライメント(軸のズレ)はカップリング選定において重要な要素です。ミスアライメントが生じると、軸同士がうまく噛み合わず、振動や騒音、異常摩耗、さらには機械の故障に繋がることがあります。ここでは、カップリングにおけるミスアライメントの種類、影響、そしてミスアライメントに対応するカップリングの選定ポイントについて解説します。

ミスアライメントの種類

ミスアライメントは大きく3種類に分類されます。

偏角

  • 2軸の中心線が一定の角度で交わっている状態を指します。
  • 軸の中心が同一平面上にないため、回転中に周期的な負荷が発生します。
  • 角度のズレが大きいほど、トルク伝達に悪影響を及ぼすことがあります。

偏心

  • 軸同士が平行にズレている状態です。
  • 2つの軸の中心線が平行ではあるものの、一定の距離でズレています。
  • 軸同士の偏心は、シールや軸受けなどのコンポーネントに大きな負荷をかけ、摩耗や破損の原因になります。

エンドプレイ

  • 軸同士が軸方向にズレている状態を指します。
  • これにより、軸が伸び縮みするような動きをするため、カップリングや関連する機械要素に大きな負荷がかかります。

ミスアライメントの影響

ミスアライメントが適切に管理されていないと、次のような問題が発生します。

振動と騒音の増加

ミスアライメントは不均一な負荷を生じさせ、回転時に振動や騒音が発生します。これにより、機械の効率が低下し、動作が不安定になります。

摩耗と寿命の低下

軸受けやシール、カップリング自体に不均等な力がかかり、摩耗が加速します。結果として、機械の寿命が短くなります。

異常温度上昇

摩擦や不均衡な力により、部品が異常に発熱し、最悪の場合、システム全体の故障を引き起こします。

動力伝達効率の低下

ミスアライメントによって動力のロスが生じ、効率的な回転伝達ができなくなります。

ミスアライメントに対応するカップリング

カップリングは、ミスアライメントの吸収能力に応じて選定する必要があります。以下は、代表的なカップリングとミスアライメントに対する対応能力です。

  1. オルダムカップリング
    • 偏心や偏角に対応可能。
    • 中央のスライドプレートがズレを吸収する構造を持ちます。
    • トルクはそれほど大きくない場面で使用されます。
  2. ディスクカップリング
    • 高トルクを伝達しつつ、偏角やわずかな偏心を吸収できます。
    • 主に高精度機器で使用されますが、非常に剛性が高く、軽量です。
  3. ジョーカップリング
    • 弾性体を挟み込む構造により、ミスアライメントに対する柔軟性があり、振動や衝撃も吸収します。
    • 特に、偏角や偏心に対しては比較的広い許容範囲を持っています。
  4. スリットカップリング
    • ミスアライメントに対して一定の柔軟性を持ちつつ、トルク伝達効率も高いです。
    • 小型精密機器で使用されることが多いですが、ミスアライメントの吸収範囲は他のカップリングよりも狭いです。

ミスアライメントを考慮したカップリングの選定ポイント

ズレの大きさを把握

使用する機械でどの程度のミスアライメントが発生するのかを確認し、そのズレに対応できるカップリングを選定する必要があります。カタログや仕様書を確認し、許容ミスアライメントを確認しましょう。

トルクと剛性

高トルクの機械であれば、剛性が高くトルク伝達効率の高いカップリングが必要です。ディスクカップリングやリジットカップリングは高トルク向けですが、ミスアライメントには制限があります。

振動と衝撃の吸収

ミスアライメントに加えて振動や衝撃が発生する場合、ジョーカップリングやオルダムカップリングなど、柔軟性を持ったカップリングが適しています。

取り付けスペース

一部のカップリングはサイズが大きく、設置スペースに制限がある場合には選定に注意が必要です。小型の機械や狭い場所にはスリットカップリングなどのコンパクトなものが適しています。

ミスアライメントを極力減らす設計のコツ

カップリングは回転伝達に欠かせない要素であり、特にモーターと負荷を接続する際に重要な役割を果たします。しかし、設計段階でミスアライメント(軸のずれ)が発生すると、カップリングに過剰な負担がかかり、振動や異常摩耗の原因となります。本項では、ミスアライメントを極力減らす設計のコツについて解説します。


1. ミスアライメントの種類と影響

カップリングのミスアライメントには以下の3種類があります。

  1. 軸方向ミスアライメント
    軸の延長線が一致せず、並行にずれている状態。摩耗や振動が増加し、効率が低下します。
  2. 角度ミスアライメント
    接続軸の角度が一致しない状態。主に回転時に大きな振動を引き起こします。
  3. 軸方向の変位
    軸の長さ方向で押し引きが発生する状態。軸受けやカップリングに過剰な負荷を与えます。

2. 設計のコツ

2.1 軸の位置決め精度を高める

ミスアライメントの大部分は、設計段階での軸位置決めの不正確さに起因します。

  • 高精度な加工を施し、軸受け座や取り付け部の位置決めを確実にします。
  • 軸心を確認するためにダイヤルゲージを用いて、取り付け後の軸心合わせを行いましょう。

2.2 フレキシブルカップリングの採用

完全なミスアライメントゼロは難しいため、適切なカップリング選定が重要です。

  • フレキシブルカップリング(ディスクカップリング、ジョーカップリングなど)はミスアライメント吸収に優れています。
  • 許容ミスアライメント範囲をカタログで確認し、適切な製品を選びましょう。

2.3 軸の取り付け方法の最適化

  • 軸同士の結合において、シャフトハブ接合の精度を確保する。
  • テーパーロックブッシュキー溝の加工精度を向上させることで、位置ずれを防止できます。

2.4 基台の剛性を確保する

軸が取付基台のたわみによってミスアライメントが生じる場合があります。

  • 高剛性の基台を設計し、振動や荷重による位置ずれを抑制します。
  • アンカーボルトの適切な配置調整脚の導入で基台の安定性を向上させましょう。

2.5 運転中のミスアライメントを抑える

運転中に温度変化や負荷変動で位置がずれる場合があります。

  • 熱膨張を考慮した設計を行い、材料や取付方法を工夫します。
  • 運転中の挙動を観察し、必要ならば位置調整を行う仕組みを追加します。

3. ミスアライメントが発生した場合の対処

  • 早期発見
    • 振動計や異常音をモニタリングし、異常が発生した場合はすぐに原因を特定します。
  • 原因追究
    • 軸受けや基台のたわみ、取付部の緩みをチェックします。
  • 修正
    • ミスアライメントが許容範囲を超える場合、軸位置を再調整します。

ミスアライメントを極力減らすには、設計段階からの対策が最も重要です。精密な加工や高精度な取り付け、適切なカップリングの選定が鍵となります。また、実際の運転環境を想定した設計を行うことで、運転中のトラブルも最小限に抑えることができます。

確実な設計で、安定した伝動性能を実現しましょう!

まとめ

ミスアライメントは、機械設計におけるカップリング選定で非常に重要な要素です。適切なカップリングを選定することで、機械の振動や摩耗を抑え、動力伝達の効率を最大限に高めることが可能です。ミスアライメントを正確に把握し、カップリングの特性を考慮して最適な選択をすることが、機械の信頼性と耐久性に大きく寄与します。


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