【エアシリンダ選定】クッション選定における運動エネルギーの計算【計算例・終端速度】

動力選定

エアシリンダのクッションを正しく選定するためには、負荷が持っている運動エネルギーを計算することがとても大切です。
運動エネルギーが大きすぎると、クッション機構だけでは衝撃を吸収しきれず、シリンダや装置が壊れてしまう可能性があります。

まずは基本から見ていきましょう!


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運動エネルギーの求め方

運動エネルギー(E)は、以下の式で求められます。

\(\displaystyle E=\frac{m} {2}×V^2\)

  • E:運動エネルギー [J(ジュール)]
  • m:負荷の質量 [kg]
  • V:シリンダの終端速度 [m/sec]

ポイントは、速度が2乗になるので、速度が少し上がるだけでも運動エネルギーは大きくなるということです!


簡単な計算例

例題

あるエアシリンダで、質量200kgのワーク毎秒0.5mの速度で移動させています。
このときの運動エネルギーを求めてみましょう!

式に当てはめます。

\(\displaystyle E=\frac{200} {2}×0.5^2\)

\(\displaystyle =100×0.25=25[J]\)

運動エネルギーは 25J になります!


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計算結果から何を考える?

この「25J」という運動エネルギーを、

✅ エアクッションだけで吸収できるのか?
✅ 追加でショックアブソーバを付けた方がいいのか?

を判断します。

例えば、シリンダメーカーのカタログに
「100φシリンダなら30Jまで吸収可能」
と記載されていた場合、この条件(25J)ならエアクッションだけで問題ないという判断ができます。

もし運動エネルギーが30Jを超えていた場合は…

▶ シリンダサイズを大きくする
▶ ショックアブソーバを追加する
▶ 速度を落とす

などの対策が必要になります。


エアシリンダの運動エネルギー計算では「終端速度」が重要

エアシリンダの設計をするときに、「運動エネルギーを計算してください」と言われたことはありませんか?
実はこのとき、終端速度をちゃんと意識していないと、誤った設計になってしまう危険性があるんです!

本項では、エアシリンダにおける運動エネルギーの基礎と、なぜ「終端速度」が重要なのかをわかりやすく解説していきます!


エアシリンダ設計で運動エネルギーを計算する理由

エアシリンダが高速で動くと、ストローク終端で必ず衝撃が発生します。

この衝撃に耐えられないと…

✅ シリンダ内部が破損する
✅ 取り付け部や周辺構造が破損する
✅ ワークが吹っ飛ぶ

といった重大トラブルにつながる恐れがあります。

そのため、エアシリンダ設計では、

  • この運動エネルギーを吸収できるか?
  • 必要ならクッション機構やショックアブソーバを付けるべきか? を正しく判断する必要があるのです!

なぜ「終端速度」が重要なのか?

さて、本題です。
なぜ運動エネルギー計算で「終端速度」が重要なのか?

理由はズバリ、 運動エネルギーは終端速度の2乗に比例する運動エネルギーは終端速度の2乗に比例する運動エネルギーは終端速度の2乗に比例する

からです!


たとえば、同じ質量の物体が

  • 1m/sで終端にぶつかる場合と、
  • 2m/sで終端にぶつかる場合では、

運動エネルギーの大きさは次のように変わります。

終端速度 v運動エネルギー E(m=5kg)
1 m/s2.5 J
2 m/s10 J

速度が2倍になっただけで、
運動エネルギーは4倍に跳ね上がっています!


つまり、ストローク中の最高速度ではなく、
「実際にエンドに到達する瞬間の速度(終端速度)」で計算しないと、
衝撃エネルギーを正しく見積もれない、ということなんです。

✅ 終端速度が速ければ速いほど、衝撃も大きくなる
✅ 逆に、クッションやショックアブソーバで減速して、終端速度を下げれば衝撃を減らせる

という設計思想になります。


終端速度を把握するには?

実際の設計現場では、終端速度を把握するために次の方法を取ります。

カタログ値を参考にする

エアシリンダメーカーのカタログには、

  • 標準ストローク速度
  • 負荷率に応じたストローク時間

これをもとに「終端で何m/sくらいになっているか」を読み取ります。


想定の速度プロファイルを考える

自分で

  • 加速区間
  • 定速区間

を想定し、終端速度を推定します。

特にクッション無しの設計では、加速後そのままのスピードでぶつかることが多いので注意です!


安全側で見積もる

よくわからない場合は、安全側(=速め)で見積もるのが鉄則です。
「ストローク途中の最大速度」≒「終端速度」と仮定して運動エネルギー計算をする方法もあります。


エアシリンダの運動エネルギーは、質量終端速度によって決まります。
運動エネルギーは終端速度の2乗に比例するため、速度が少し速いだけでエネルギーは急増します。

「ストローク途中の最高速度」ではなく、「終端での実際の速度」で計算することが重要です。
終端速度が速すぎる場合は、クッション機構やショックアブソーバを適切に選定しましょう。


はじめ
はじめ

エアシリンダの安全・高耐久な設計には、「終端速度」の正しい把握が欠かせません!

終端速度についての関連記事はこちら
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クッション選定の流れまとめ

  1. 質量速度から運動エネルギーを計算する
  2. カタログ値と比較して、クッション能力内かを確認する
  3. 必要に応じて、サイズアップや追加部品を検討する

注意ポイント

速度は終端直前の実速度を使う!
(平均速度ではなく、実際にぶつかる瞬間の速さ)

質量には、ワーク以外にもロッドや取付部品の重さを忘れずに!

エアクッションの調整は慎重に!
 (絞りすぎるとシリンダが動かなくなるリスク)


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まとめ

クッション選定で大事なのは、
「ただ何となく選ぶ」のではなく、運動エネルギーをきちんと計算してから選ぶことです!

難しい数式は使わず、

\(\displaystyle E=\frac{m} {2}×V^2\)

この1本の式だけ覚えればOK!

正しく計算して、安全で長持ちする機械設計を目指しましょう!


はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、機械の駆動源に関する基礎知識と選定基準をまとめています。

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