エアシリンダーの高温・低温環境での使用時の注意点

動力選定

エアシリンダーは、圧縮空気を利用して直線運動を行う空圧機器の一つです。

しかし、高温環境や低温環境では、
シリンダーの性能が低下したり、
寿命が短くなったりする可能性があります。

本記事では、エアシリンダーを高温・低温環境で
使用する際の注意点と対策について詳しく解説します。


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高温環境でのエアシリンダー使用時の注意点

高温環境の影響

高温環境(一般的に60℃以上)では、
以下の問題が発生する可能性があります。

シール材の劣化

エアシリンダー内部のOリングやパッキンが熱で劣化し、
エア漏れが発生することがあります。

一般的なNBR(ニトリルゴム)製シールは、
約80℃を超えると劣化しやすくなります。

潤滑油の蒸発・劣化

高温により潤滑油が蒸発すると、
シリンダー内部の摩擦が増え、
寿命が短くなる可能性があります。

一部の潤滑油は熱で酸化し、
粘着性が増して動作不良を引き起こすこともあります。

シリンダー本体の膨張

アルミ製のシリンダーは熱膨張しやすく、
ガイド精度に影響を与えることがあります。

ステンレス製のシリンダーを使用すると、
熱膨張を抑えることができます。

ホースや配管の劣化

標準的なナイロン製ホースは高温で軟化し、
破裂のリスクが高まります。

高温環境での対策

問題対策
シール材の劣化耐熱性の高いシール材を使用する
FKM(フッ素ゴム)やシリコンゴムなど
潤滑油の蒸発・劣化高温対応の潤滑剤を使用し、定期的に補充する
シリンダーの熱膨張ステンレス製シリンダーを採用し、
クリアランスを適切に設計する
ホースや配管の劣化耐熱ホースや金属配管を使用する
全体的な温度上昇エア冷却システムを導入し、温度を管理する

低温環境でのエアシリンダー使用時の注意点

低温環境の影響

低温環境(一般的に0℃以下)では、
次のような問題が発生する可能性があります。

エアの水分が凍結し、動作不良が発生する

圧縮空気に含まれる水分が凍結すると、エアシリンダーの内部や
配管が詰まり、動作不良を引き起こす可能性があります。

シール材が硬化し、エア漏れが発生する

一般的なNBR製シールは、低温で硬化し、
柔軟性を失うため、エア漏れの原因となります。

潤滑油の粘度が上昇し、動作が鈍くなる

低温環境では潤滑油の粘度が増し、
シリンダーの動きが重くなることがあります。

金属部品の収縮によるクリアランスの変化

低温になると、金属部品が収縮し、シリンダー内部のクリアランスが
変化するため、動作に影響を与える可能性があります。

低温環境での対策

問題対策
水分の凍結エアドライヤーを使用し、圧縮空気内の水分を除去する
シール材の硬化低温対応のシール材(シリコンゴム、ウレタンゴム)を使用する
潤滑油の粘度上昇低温対応の潤滑剤を使用し、定期的に補充する
金属部品の収縮シリンダーのクリアランスを適切に設計する
配管の凍結ヒーター付きホースを使用する、または配管を保温材で覆う

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「朝だけ調子が悪い」エアシリンダーの原因とは?

高速シリンダーは暖機運転がカギ

機械装置に使われるエアシリンダーは、
昼間は問題なく動いているのに、
冬の朝一番だけ不調というケースがよくあります。

特に高速で動かすエアシリンダーでは、
以下のような不具合が発生する可能性があります。


朝に起きやすいトラブル例

ストロークエンドまで動かない

タイミングセンサが反応せず、装置が停止してしまう

タイミングが合わず不具合が出る

シリンダーが指定時間内に到達せず、他の機構と干渉や停止

異常信号やエラー発生

自動運転が中断され、生産に支障が出る

これらのトラブルの多くは、
低温によるシリンダーの動作不良が原因です。


なぜ朝に不調になるの?

冬の朝は、以下の要因でシリンダーの動きが鈍くなります.

  • グリスが冷えて硬くなる
    • 摩擦が増えて動きが遅くなる
  • シール材(Oリングなど)が硬化
    • 気密性・摺動性が悪化
  • 圧縮空気中の水分が凍結
    • エアの流れが悪くなる

対策:暖機運転を行おう!

真冬の朝にいきなり本稼働させるのではなく、
「暖機運転(ウォームアップ)」を行うことでスムーズに動作するようになります。

ゆっくり往復運転を繰り返す

低圧でエアシリンダーを数回動かし、
内部の摩擦部を温めます。

空気圧は徐々に上げる

最初から定格圧力をかけるのではなく、徐々に上げていくことでトラブルを防止できます。

エアドライヤーを使う

配管内の水分除去に効果的で、ドレン凍結のリスクを軽減します。


✅ 冬場、特に朝一番の始動時はエアシリンダーの動きが鈍くなることがある
✅ これは潤滑グリスの粘度上昇や水分凍結、シール材の硬化などが原因
暖機運転を習慣化することで、トラブルを未然に防げる

「昼は動くのに朝だけ不調」はエアシリンダーの冷え固まりが原因かも
特に高速で動かすシリンダーは初動の遅れが致命的なトラブルにつながる
対策として暖機運転を習慣化することで、安定稼働が期待できる

はじめ
はじめ

寒い時期でもスムーズな機械立ち上げを行うために、
エアシリンダーの「朝の準備運動」を忘れずに行いましょう!

エアシリンダーの高速動作と負荷による発熱の影響と対策

エアシリンダーは、圧縮空気を利用して直線運動を行う空圧機器ですが、
高速動作や大きな負荷をかけると発熱することがあります。

発熱はシリンダーの性能や寿命に悪影響を与えるため、
適切な対策が必要です。

本項では、エアシリンダーが発熱する原因と、その影響、
そして具体的な対策について詳しく解説します。


エアシリンダーが発熱する主な原因

エアシリンダーが発熱するのは、
主に以下のような理由によるものです。

高速動作による摩擦熱の発生

エアシリンダーは内部でピストンがシリンダーチューブの
内壁と接触しながら高速で往復運動を行います。

高頻度での往復動作により、ピストンパッキンや
ガイドブッシュとの摩擦が増加し、熱が発生します。

ストロークが短くても高速で連続動作させると、
摩擦が蓄積しやすくなります。

高負荷による圧縮空気の急激な膨張・圧縮

エアシリンダー内の圧縮空気は、
ピストンが動くたびに急激に膨張・圧縮を繰り返します。

高負荷時にはより大きな圧縮力が必要になり、
空気の断熱圧縮が発生して温度が上昇します。

特に大きな負荷を持ち上げる用途では、
シリンダー内の圧縮空気が高温になりやすいです。

クッション機構の連続動作による熱の蓄積

エアシリンダーには、終端での衝撃を和らげるための
エアクッション機構が搭載されている場合があります。

クッション機構では、空気の流れを制限することで減速させますが、
このときの空気の圧縮と摩擦によりシリンダー内部に熱がこもることがあります。


発熱を抑えるための対策

エアシリンダーの発熱を抑えるためには、以下の対策が有効です。

低摩擦シールやガイドを採用する

耐熱性のある低摩擦シール(フッ素ゴムやウレタンゴム)を使用すると、
摩擦熱の発生を軽減できます。

ガイドブッシュの材質を強化(PTFEコーティングなど)
することで摩擦を低減できます。

適切な潤滑を維持する

エアラインにミスト式ルブリケーターを設置し、
適量の潤滑油を供給することで摩擦熱の発生を防げます。

高温環境では高耐熱性の
潤滑油(シリコングリースやフッ素系潤滑剤)を使用すると効果的です。

クッション機構を適切に調整する

クッション機構が強すぎるとエアの圧縮が増え、
熱がこもりやすくなるため、適切な調整を行うことが重要です。

高速動作時にはエアクッションではなく、
外部ダンパーやショックアブソーバーを併用すると、熱の蓄積を抑えられます。

冷却システムを導入する

シリンダーの放熱を助けるために、
冷却ファンやエアブローを設置すると効果的です。

水冷式シリンダーを採用することで、
熱の蓄積を抑えることができます。

高速動作時にはインターバルを設ける

高速で長時間連続運転すると発熱しやすいため、
一定時間ごとに動作を停止するインターバルを設けることで、
温度の上昇を抑えられます。

高速動作が必要な場合は、
熱の影響を受けにくいメタルシール方式のシリンダーを選定するのも有効です。


エアシリンダーの発熱を防ぎ、安定した動作を確保する

エアシリンダーの高速動作や高負荷による発熱は、
シール材の劣化、潤滑油の蒸発、動作不良、
部品の寿命低下といった問題を引き起こします。

発熱を抑えるためには、

  • 低摩擦シールや潤滑油の適切な選定
  • クッション機構の適切な調整と外部ダンパーの活用
  • エアブローや冷却ファンの導入
  • 連続運転時のインターバル設計

といった対策が有効です。

シリンダーの発熱を抑えることで、安定した動作を維持し、
機械の寿命を延ばすことができます。

エアシリンダーを設計・選定する際は、発熱のリスクを考慮し、
適切な対策を講じることが重要です。

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高温・低温環境でのエアシリンダー選定ポイント

環境選定ポイント
高温環境(60℃以上)– 耐熱性のあるシール材(FKMなど)を使用する
– 耐熱潤滑剤を選定する
– ステンレス製のシリンダーを採用する
– エア冷却装置を導入する
低温環境(0℃以下)– 低温対応のシール材(シリコンゴム、ウレタンゴム)を使用する
– 低温用の潤滑剤を使用する
– エアドライヤーを設置し、凍結を防ぐ
– 配管やホースを保温材で覆う

まとめ:エアシリンダーの環境適応が機械の安定性を左右する

エアシリンダーは使用環境の温度によって性能が大きく左右されるため、
高温・低温環境では特に注意が必要です。

高温環境の対策

▶ 耐熱性のあるシール材や潤滑油を使用する
▶ エア冷却装置を導入し、熱膨張の影響を抑える

低温環境の対策

▶ 低温用のシール材や潤滑油を使用する
▶ エアドライヤーで水分を除去し、凍結を防ぐ

使用環境に適したエアシリンダーを選定し、
適切な対策を講じることで、安定した動作を確保し、
設備の長寿命化につなげることができます。



はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。

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