放電加工(EDM:Electrical Discharge Machining)は、電気の火花放電を利用して金属を削る加工方法です。切削工具を使わず、電極とワークの間に高電圧をかけることで材料を少しずつ除去します。
この方法は、硬い材料や複雑な形状の加工に適しており、一般的な切削加工では困難な精密加工も可能です。そのため、金型製作や航空宇宙部品の製造など、幅広い分野で活用されています。
放電加工の基本原理
放電加工は、工具電極と加工物の間で火花放電を発生させ、その熱エネルギーで材料を溶かして除去する加工方法です。
✅ 絶縁された液体(加工液)を使用し、電極とワークの間で放電を発生
✅ 接触しない加工なので、工具摩耗が少ない
✅ 高精度な形状を加工可能
放電加工の種類
📌 ワイヤーカット放電加工
👉 細いワイヤー(電極)を使い、板材などを高精度で切断
🔍 例:金型の輪郭加工、細かい部品の製作
📌 型彫り放電加工
👉 電極をワークに押し付ける形で、三次元形状を加工
🔍 例:金型のくぼみや複雑形状の加工
放電加工のメリットとデメリット
▶ メリット
✅ 硬い材料(超硬合金、焼入れ鋼など)も加工可能
✅ 工具がワークに接触しないので、歪みが少ない
✅ 複雑な形状を高精度に加工できる
▶ デメリット
🚫 切削加工より加工速度が遅い
🚫 電極が摩耗するため、交換が必要
🚫 絶縁性のある材料(樹脂など)は加工できない
どんな場面で使われる?
🔹 金型の製作(プラスチック成形、ダイカストなど)
🔹 超硬材の加工(タングステン、セラミックコーティング部品)
🔹 微細加工(電子部品、精密部品)
放電加工は、通常の切削では難しい高硬度材料や複雑形状の加工に最適です。加工方法を理解し、適材適所で活用することが大切です!
ワイヤーカット放電加工における加工形状の制限とは?
ワイヤーカット放電加工(ワイヤーEDM)は、細いワイヤー電極を使って金属を高精度に切断できる加工方法です。しかし、「ワイヤーを使う」という特性上、加工できる形状にはいくつかの制限があります。
ワイヤーカット放電加工の形状制限
貫通形状しか加工できない
🚫 ワイヤーは「切り抜く」加工なので、貫通しない形状(袋穴や内部のくぼみ)は加工できません。
🔍 例:〇 可能 → 板の輪郭カット
🔍 例:× 不可 → 板の中央にポケット形状を作る
最小コーナーR(角の丸み)の制限
🚫 ワイヤー自体の直径があるため、直角の内角は作れません。
🔍 例:ワイヤー径が0.2mmの場合、最小コーナーRは0.1mm以上必要
テーパー角度に制限がある
🚫 ワイヤーは上下で角度をつけることができますが、大きな角度には限界があります。
🔍 一般的には30°~45°程度が上限(機械による)
加工スタート位置が必要
🚫 ワイヤーを通すための穴を事前に開ける必要があります。
🔍 板の端から切り込める形状なら問題なし
どのように対策する?
✅ 袋穴や内側の形状を作りたい場合
👉 型彫り放電加工(放電加工機)を併用する
✅ 直角のコーナーが必要な場合
👉 追加の加工(リューター仕上げや細穴放電)を行う
✅ 大きなテーパー角度をつけたい場合
👉 機械の仕様を事前に確認し、設計段階で制限を考慮する

ワイヤーカット放電加工は高精度な加工が可能ですが、形状の制約を理解して設計することが重要です!
ワイヤーカット放電加工における一般的なワイヤー径とは?
ワイヤーカット放電加工(ワイヤーEDM)では、細い金属ワイヤーを使って材料を切断します。
加工の精度や仕上がりに影響する「ワイヤー径」は、用途に応じて選ばれます。
一般的なワイヤー径の種類と特徴
ワイヤー径 | 用途・特徴 |
---|---|
Φ0.3mm | 高速加工向け、粗加工に適する |
Φ0.25mm | バランスが良く、標準的なサイズ |
Φ0.2mm | 一般的な精密加工向け |
Φ0.15mm | 高精度加工、細かい形状向け |
Φ0.1mm以下 | 超精密加工、微細加工向け |
ワイヤー径を選ぶポイント
✅ 加工速度と精度のバランス
✔ 太いワイヤー(例:Φ0.3mm)は加工速度が速いが、精度はやや低め
✔ 細いワイヤー(例:Φ0.1mm)は高精度だが、加工速度は遅い
✅ 最小コーナーRの影響
✔ ワイヤーの径が大きいほど、角の丸み(コーナーR)も大きくなる
✔ シャープな角を求める場合は細いワイヤーを選ぶ
✅ 切断面の仕上がり
✔ 細いワイヤーは仕上げ面が滑らかになるため、仕上げ加工が不要な場合もある
どのワイヤー径を選べばいい?
✅ 一般的な加工なら Φ0.2mm~Φ0.25mm
→ バランスが良く、多くの場面で使われる
✅ 高精度加工なら Φ0.15mm以下
→ 微細な形状や高精度が必要な場合
✅ 高速で加工したいなら Φ0.3mm以上
→ 大きな部品や時間短縮が重要な場合
ワイヤー径の選択は、加工のスピード・精度・コストに影響する重要なポイントです!

目的に合わせて適切なサイズを選びましょう。
まとめ
放電加工は、高硬度材料の加工や微細・複雑形状の製作が可能な優れた技術です。工具の摩耗がなく、精密な仕上がりが得られる点も大きな特徴です。
ただし、加工速度が遅く、電極や加工液の管理が必要といったデメリットもあります。そのため、他の加工方法と組み合わせながら、最適な加工手法を選択することが重要です。
適切な用途で放電加工を活用し、精密な部品製作や品質向上に役立てましょう!
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