電動シリンダの特徴と選定ポイント|初心者でも分かる設計ガイド

動力選定

電動シリンダは、モーターの回転を直線運動に変換して
動作するアクチュエータで、
高精度な位置決め・速度制御・クリーンな環境対応
同時に実現できるのが大きな魅力です。

近年は、組立装置や搬送装置、検査機など、
従来エアシリンダや油圧シリンダが
使われていた領域でも電動化が進んでいます。

本記事では、機械設計の初心者にも分かりやすいように、
電動シリンダの基本構造・特徴・メリット/デメリット、
そして選定のチェックポイントを詳しく解説します。

「どんなときに電動シリンダを使えばいいのか?」
と迷ったときの参考にしてください。

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電動シリンダとは?

電動シリンダは、モーターの回転運動をボールねじなどの機構で直線運動に変換し、
ロッドを前後に動かすアクチュエータです。

はじめ
はじめ

エアシリンダ(空気圧)や油圧シリンダに比べ、
電気だけで動作するのが最大の特徴です。


電動シリンダの主な特徴

① 高い位置決め精度

サーボモータやステッピングモータを使うため、
停止位置を数十μm単位で制御可能。

高精度な位置決めが求められる装置に最適です。

② 速度と加減速度の自由な設定

コントローラで速度プロファイルを自由に設定できるので、
ゆっくり動き出して、途中から速く、最後はソフトに停止
のような動作も簡単。

③ 推力のフィードバックが可能

電流値などから推力を推定できるため、
ワークの押し当て力を一定に保つ制御が可能。

組立や押し込み工程に便利です。

④ クリーンで静か

油圧のようにオイル漏れがなく、
エアシリンダのような排気音も少ないため、
クリーンルームや室内作業に向いています

⑤ 同期制御が容易

複数台をコントローラで同期させやすく、
並列で動かしたいときに有利


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電動シリンダのメリットとデメリット

項目メリットデメリット
動力源電気のみでOK(エア源不要)大推力が必要な場合は油圧に劣る
制御速度・位置・力を細かく制御できるコントローラ設定が必要
精度高精度位置決めが可能設定や調整に知識が必要
保守オイルやエアの配管が不要でクリーン価格はエアシリンダより高め

電動シリンダの選定ポイント

初心者が電動シリンダを選ぶときは、以下の点を順に確認するとスムーズです。

① 必要なストローク

「ロッドがどこまで動けばよいか」を明確にする。

余裕を持った長さを選ぶのがコツ。

② 推力(必要な力)

ワークを押す/持ち上げるなど、必要な力を算出しましょう。

摩擦や安全率も加味して決めます。

③ 速度と加速度

動作時間の目標から、必要な速度を逆算します。
「速さ」と「滑らかさ」のバランスを考えましょう。

④ 精度

位置決めの要求精度がどれくらいかを確認。

🔍 例)

±0.1mmでOKか、±0.01mmが必要か。

⑤ 使用環境

粉塵・水・クリーンルームなど、設置場所に応じて
防塵・防水仕様や潤滑方式を選定。

⑥ 制御方法

PLCやモーションコントローラと接続するのか、
単体でプログラム可能なコントローラを使うのかを決める。


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電動シリンダを導入するときの注意点

電動シリンダは高精度な位置決めや速度制御ができる
便利なアクチュエータですが、
導入にあたってはいくつかの注意点があります。

エアシリンダとは違う特性を理解し、事前に確認しておくことで、
長く安定して使える設備を設計できます。


初期費用はエアシリンダより高め

電動シリンダは、モータ・コントローラ・センサー類などが一体となるため、
初期費用はエアシリンダに比べて高価です。

そのため、採用を検討する前に以下を整理しておくことが大切です。

  • 求める位置決め精度はどのくらい必要か
  • 速度制御や加減速制御が本当に必要か
  • 稼働頻度やサイクルタイムはどの程度か
はじめ
はじめ

要求仕様を明確にすると、過剰なスペックを選ばず、
コストを抑えられます。


横荷重には弱いのでガイド併用がおすすめ

電動シリンダのロッドに横方向の荷重(横荷重)がかかると、
内部のボールねじやベアリングに無理な力がかかり、
寿命を縮めてしまう原因になります。

対策としては、次のような工夫が有効です。

  • ロッドは「押す/引く」動作のみに使う
  • ワークの位置決めや支持は、別のガイド機構で受ける
  • 荷重が大きい場合は「ガイド付き電動シリンダ」を選ぶ
はじめ
はじめ

横荷重対策を考えるだけで、
トラブルのリスクを大幅に減らせます。

シリンダの横荷重についての記事はこちら

モータやコントローラの設定に慣れる必要あり

エアシリンダはエアをつなげばすぐに動きますが、
電動シリンダはモータやコントローラの配線・パラメータ設定が必要です。

  • ケーブル配線の取り回し
  • 制御信号の入出力設定
  • 原点復帰や速度パターンなどのパラメータ調整

さらに、電気設計との連携が必須です。

制御盤のレイアウトや入出力仕様、電源容量などを
事前に打ち合わせておかないと、
後から配線や回路を修正する手間が発生します。

最初は少しハードルが高く感じますが、
メーカーのマニュアルやサンプルプログラムを活用するとスムーズに習得できます。


電動シリンダは「高精度」「省エネ」「クリーン」と多くのメリットがありますが、
コスト・横荷重・設定の難易度という3つの注意点を理解しておくことが成功のカギです。

事前に要求精度や制御内容を整理
ロッドに横荷重をかけない工夫をする
配線・設定に慣れるための時間を確保

はじめ
はじめ

これらを押さえれば、
電動シリンダを使った設備は長寿命で安定動作が期待できます。

まとめ

電動シリンダは、

「高精度位置決め」
「速度や押し当て力の柔軟な制御」
「クリーンな環境対応」

といったニーズに強いアクチュエータです。

エアシリンダでは対応できない精密な動きや複数軸の同期
求めるときに特に力を発揮します。

選定時は ストローク・推力・速度・精度・環境・制御方式
バランスよく検討するのがポイントです。


はじめ
はじめ

モーターやアクチュエーターなど、
機械の駆動源に関する基礎知識と
選定基準をまとめています。

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