エアシリンダを設計やメンテナンスで使うときに、
「ロッドと取り付け部の芯が少しズレてしまう」という悩みはありませんか?
そんなときに役立つのが 「フローティングジョイント」 です。
この記事では、フローティングジョイントの基本から使い方、
選定時のポイントまでを初心者向けに解説します。
フローティングジョイントとは?
フローティングジョイントは、
エアシリンダのロッド先端と、
押したい/引きたい部品の間に取り付ける中間パーツです。
わずかな芯ズレ(ミスアライメント)を吸収し、
ロッドやシリンダ本体に無理な力がかかるのを防ぎます。
活用シーン
フローティングジョイントは、以下のような場面で活躍します。
ロッドを直接ねじ止めしてしまうと、
斜め方向に力がかかり寿命を縮める原因になります。
フローティングジョイントを使えば、
負荷の動きをある程度「逃がす」ことができます。
フローティングジョイントはなぜ直動ガイドと併用するのか?
― シリンダ直付けでは横荷重がかかるリスクを回避しよう ―
エアシリンダの先端にワーク(治具や部品)を
直接取り付けて動かす場面は、機械設計ではよくあります。
しかし、シリンダロッドにワークを直付けする方法には
「横荷重」が発生するリスクがあり、
シリンダの寿命や動作精度に悪影響を与えることがあります。
そのリスクを回避するために使われるのが
「フローティングジョイント」 と 「直動ガイド」 の組み合わせです。
ここでは、両者の役割と併用する理由を初心者向けに解説します。
1. 横荷重とは?
シリンダは基本的に 「押す」または「引く」方向の直線力 を出す機器です。
しかし、ワークが斜めに取り付けられていたり、
取り付け位置が微妙にずれていたりすると、
ロッドに横方向の力(横荷重)がかかります。
横荷重が大きいと……
といったトラブルを引き起こす恐れがあります。
2. フローティングジョイントの役割
フローティングジョイントは、
シリンダとワークのわずかなズレを吸収するための部品です。
具体的には、下記のようなズレを許容します。
これにより、ロッドが常にまっすぐ押す/引く動作を
維持できるので、横荷重を軽減できます。
3. 直動ガイドの役割
一方で、フローティングジョイントだけでは
ワーク自体の重量や横方向の力 を支えきれません。
ワークが重いと、ロッドの先にかかる
「モーメント荷重(曲げ)」が発生します。
そこで必要なのが 直動ガイド(リニアガイドやスライドユニットなど)。
直動ガイドは、ワークの重量や横方向の力を受け止め、
スムーズに動かすためのサポート部品です。
4. フローティングジョイントと直動ガイドを併用する理由
この2つを組み合わせることで、シリンダは「押す/引く」という
本来の動作に専念でき、寿命や精度を守ることができます。
5. 設計時のポイント
- ワーク重量を確認する
- ワークが重い場合は必ず直動ガイドを設置し、
シリンダに無理な力をかけないようにしましょう。
- ワークが重い場合は必ず直動ガイドを設置し、
- フローティングジョイントの許容値を確認
- 許容偏心量(ロッド軸からどれだけズレを吸収できるか)
- 許容偏角度(取り付け角度のズレをどの程度吸収できるか)
- カタログ値を必ずチェックし、余裕を持った選定を。
- ガイドとジョイントの距離を適切に取る
- ガイドをシリンダの近くに配置すると、ロッドにかかるモーメントをより小さくできます。
- 取付精度を意識する
- 直動ガイドの取付面は、平面度や平行度が重要。
- わずかな歪みが横荷重の原因になるので注意しましょう。
初心者へのアドバイス
フローティングジョイントと直動ガイドは、
エアシリンダを安全かつ長寿命で使うために欠かせない組み合わせです。
シリンダは「押す/引く」だけに集中させる ことで、
トラブルを防ぎ、安定した動作を実現できます。

エアシリンダを使った機構を設計する際は、
ぜひ「横荷重をどう処理するか?」を意識し、
ガイドとジョイントを上手に組み合わせてみましょう。
フローティングジョイントの選び方|サイズ・荷重・材質をやさしく解説
エアシリンダを長持ちさせるために欠かせない
パーツのひとつが フローティングジョイント。
ロッドと負荷の取り付け時に、わずかな芯ズレを吸収し、
横荷重によるトラブルを防ぐ便利アイテムです。
でも、初めて選ぶときは
「どれを選定すればいいの?」と迷ってしまうことも。
ここでは、フローティングジョイントを選ぶときに
押さえておきたい3つのポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。
1️⃣ ねじサイズとピッチを確認
まずは、エアシリンダの ロッド先端のねじ をチェックしましょう。
ピッチが合っていないと、取り付けできないだけでなく、
ねじを傷めてしまう恐れがあります。
カタログや取扱説明書で、
ロッドのねじ情報を必ず確認しましょう。
2️⃣ 許容荷重をチェック
フローティングジョイントには「この荷重までならOK」という
許容荷重 がカタログに記載されています。
使用条件(ワークの重さ、シリンダの推力)を確認し、
十分に余裕を持たせて選定することが大切です。

「ギリギリ大丈夫」なものではなく、
安全率 を考慮して余裕のあるサイズを選びましょう。
3️⃣ 許容偏心量と許容偏角度を確認
フローティングジョイントは、取り付け誤差や負荷の動きを吸収するために、
偏心(中心位置のズレ)や角度のズレをある程度許容できます。
この値を超えて使うと、ロッドやジョイントが早く摩耗したり、
シリンダに横荷重が伝わって寿命を縮めてしまいます。
取り付けの精度や、負荷の動きに合わせて、
十分な余裕のある製品を選びましょう。
4️⃣ 材質を選ぶ
使う環境や負荷の大きさによって、材質も変わります。
| 材質 | 特徴 | 用途の目安 |
|---|---|---|
| 樹脂 | 軽量で安価。小さな負荷向き | 軽作業・試作 |
| スチール | 丈夫でコスパも良い | 中負荷の一般用途 |
| ステンレス | 耐食性が高い | 水や油がかかる環境、食品機械など |
フローティングジョイントを選ぶときは、
次の3ステップを覚えておけば安心です。
- ねじサイズとピッチを確認
- 許容荷重をチェックして余裕を持たせる
- 許容偏心量と許容偏角度を確認する
- 材質を使用環境に合わせて選ぶ
これらを押さえることで、
エアシリンダのロッドやシールの寿命を延ばし、
トラブルのないスムーズな動作を実現できます。

「とりあえずサイズが合えばOK」ではなく、
使用条件に合った最適なフローティングジョイントを選ぶことが、
設計やメンテナンスの品質を高めるコツです。
フローティングジョイント使用時の注意点
横荷重・精度を守って長持ちさせるコツ
エアシリンダの芯ズレを吸収し、
横荷重からロッドを守ってくれる便利パーツ「フローティングジョイント」。
ただし、正しく選定・使用しないと、
せっかくの効果が十分に発揮できないことがあります。
ここでは、初心者が押さえておきたい注意点をやさしく解説します。
大きな横荷重やねじれは吸収できない
フローティングジョイントは、取り付け時の
わずかなズレや角度誤差 を吸収するための部品です。
そのため、以下のような力には対応できません。
- 重たいワークを横から押し付けるような 大きな横荷重
- ロッドを無理に回すような ねじれ力
これらの力をそのままロッドに与えると、シリンダのシールが摩耗したり、ロッドが曲がる原因になります。
💡 ポイント
「ロッドには 押す/引く力だけ をかける」が基本ルール。
位置決めや支持は、必ず ガイド機構(リニアガイドやスライドガイド) を併用しましょう。
まとめ
フローティングジョイントは、
エアシリンダのロッドに無理な負担をかけず、
寿命を延ばすための便利なパーツです。
「ロッドと負荷を直接つなぐのが当たり前」と思いがちですが、
芯ズレや横荷重を避けたいときは、
フローティングジョイントを検討するのがベスト。
選定の際は、ねじサイズ・許容荷重・材質をしっかり確認して、
シリンダの性能を最大限に活かしましょう。

モーターやアクチュエーターなど、
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