はすば歯車(ヘリカルギア)は、機械設計で広く使われる歯車の一種です。
平歯車に比べて歯が斜めに傾いているのが特徴で、高速回転や静かな動作が求められる場面で特に重宝されています。
この記事では、はすば歯車の基本的な特徴と選定のポイントを初心者にもわかりやすく解説します。
はすば歯車(ヘリカルギア)とは?
はすば歯車は、歯が軸に対して斜め(はすば状)に切られている歯車です。
この斜めの歯により、歯と歯のかみ合いが徐々に始まり滑らかに動くため、振動や騒音が少なくなります。
- 歯が斜めに切られており、滑らかな噛み合いが可能。
- スパーギアよりも静音性と振動吸収性に優れる。
- 歯の接触面積が広く、トルク伝達能力が高い。
- 軸方向にスラスト荷重が発生するため、軸受設計が重要。
- 高速回転や高負荷の場面に適しています。
- 摩耗が少なく、長寿命な運転が可能。

はすば歯車の主な特徴

静かで滑らかな回転
斜めに切られた歯が少しずつ接触するため、歯車同士の衝撃が小さくなり、騒音や振動が減少します。
そのため、高速回転の機械や静音が重要な装置に適しています。
高い伝達能力
平歯車に比べて、はすば歯車は複数の歯が同時に噛み合うため、トルク(回転力)をより大きく伝達できます。
重い負荷をかける機械にも向いています。
軸方向に力がかかる
斜めの歯のため、歯車が回るときに軸方向の力(推力)が発生します。
これを支えるために、軸受けの設計が重要です。
製造コストがやや高い
平歯車より加工が複雑なので、コストや製造時間が増えることがあります。
はすば歯車(ヘリカルギア)の選定ポイントをわかりやすく解説
はすば歯車(ヘリカルギア)は、歯が斜めについていることで静かで滑らかな回転が得られる歯車です。
しかし、その特性を最大限活かすには、設計段階でいくつかの選定ポイントを押さえておく必要があります。
ここでは、初心者にもわかりやすく4つのポイントを紹介します。
使用環境と回転速度を考慮する
はすば歯車は高速回転や静音性が必要な機械に適しています。
例えば、自動車のトランスミッションや産業用の高速モーターなどが代表例です。
逆に、低速回転で単純な動力伝達が目的なら、平歯車のほうがコストも安く加工も簡単です。
設計の初期段階で「本当に静かさや高速性が必要か?」を見極めましょう。
軸受け設計に注意
はすば歯車は歯が斜めなので、回転すると軸方向(横方向)に押す力=推力が発生します。
この推力を支えられるベアリングや軸受けを選ぶことが大切です。
例えば、自転車のペダルを片方から押すと軸がずれるイメージです。
これを防ぐために、スラストベアリング(推力用の軸受け)や、左右で推力を打ち消すような歯車配置を採用することがあります。
歯の角度(はすば角)選定
歯の傾きの角度を「はすば角」といいます。
- 角度が大きいほど → 歯のかみ合いが滑らかになり、静かで効率の良い動力伝達が可能
- しかし角度が大きいほど → 軸方向の推力が増え、軸受けへの負担も増加
用途に応じてバランスを取ることが重要です。
たとえば、静粛性が重視される装置では大きめの角度を、負荷が大きい産業機械では控えめの角度を選びます。
コストと製造のバランス
はすば歯車は精密加工が必要なため、平歯車より製造コストが高くなりがちです。
また、組み付け精度や潤滑設計も重要になるため、全体コストにも影響します。
「高精度・高性能が必要か」
「平歯車で代用できないか」
この2点を事前に比較することで、無駄なコストを防げます。
🔍 はすば歯車を選ぶときは、
➤ 使用環境と速度
➤ 軸受け設計
➤ はすば角の設定
➤ コストと製造難易度
この4つをバランスよく検討することが重要です。

静かでスムーズな動きが魅力のはすば歯車ですが、
その性能を発揮するには設計時の準備がカギになります。
はすば歯車の選定における平歯車との違いと選定のコツ
歯車には大きく分けて「平歯車(スパーギア)」と「はすば歯車(ヘリカルギア)」があります。
一見すると似た形ですが、歯の向きや構造の違いから、用途や性能が大きく変わります。
ここでは、2つの違いと、はすば歯車を選ぶときのコツを初心者向けに解説します。
平歯車とはすば歯車の違い
項目 | 平歯車(スパーギア) | はすば歯車(ヘリカルギア) |
---|---|---|
歯の向き | 軸に対してまっすぐ | 軸に対して斜め |
動作音 | 比較的大きい | 静かで滑らか |
動力伝達 | シンプルで効率良い | 高速でも安定して伝達 |
軸方向の力(推力) | ほぼ発生しない | 軸方向の力が発生する |
製造コスト | 比較的安い | 高め(精密加工が必要) |
適用例 | 低速・単純な伝達 | 高速・静音性が必要な装置 |
はすば歯車を選ぶメリット
はすば歯車は、歯が斜めになっていることで常に複数の歯がかみ合う構造です。
これにより以下のメリットがあります。
- 静かでスムーズな回転(かみ合い衝撃が少ない)
- 高速回転でも安定した伝達
- 耐久性の向上(歯1枚あたりの負荷が分散される)
そのため、工作機械など、高速かつ静音性が求められる機械に多く使われます。
はすば歯車を選ぶときのコツ
コツ① 使用環境と速度を見極める
- 高速回転や静かな動作が必要なら、はすば歯車が有利。
- 低速・シンプルな構造なら、平歯車の方がコスト面で有利。
コツ② 推力対策を考える
- はすば歯車では軸方向の推力が発生します。
- スラストベアリングの採用や、左右の歯車で推力を打ち消す設計が必要。
コツ③ 歯の角度(はすば角)を調整する
- 大きな角度 → 静音性・滑らかさUP、ただし推力増加。
- 小さな角度 → 推力は減るが静粛性はやや低下。
コツ④ コストと性能のバランス
- 高精度加工が必要でコストが高くなる傾向があるため、性能要求と予算のバランスをとる。
平歯車はシンプルで安価、はすば歯車は静かで滑らか。
選定の際は、用途・回転速度・静音性の必要性・コストを軸に比較しましょう。

はすば歯車は、特に高速で静音性が必要な場合に真価を発揮しますが、
推力対策やコスト面を考慮するのが成功のカギです。
まとめ
はすば歯車(ヘリカルギア)は、高速回転や静かな動作が必要な機械で威力を発揮します。
複数の歯が同時に噛み合うため高トルクの伝達が可能ですが、
その反面、軸方向に力がかかるので軸受け設計に注意が必要です。
設計段階で使用環境や負荷、コストを考慮して適切に選定することが重要です。
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