【比重比較表】重量比較からみる材料選定

材料選定

機械設計では、使用する材料の物理特性を理解することが重要です。その中でも「比重(密度)」は、材料の選定において特に重要な要素の一つです。比重は材料の重量に直接影響し、設計全体の重量バランスや強度、コストにも関わります。

よく使う材料の比重比較表

材質比重(密度)特徴
SS4007.86一般的な構造用鋼。強度とコストのバランスが良い
S45C7.86炭素鋼で、高い強度と加工性を持つ。熱処理で硬度向上が可能
SUS3047.93ステンレス鋼。耐食性に優れ、錆びにくい
SKD117.8高い耐摩耗性と強度を持つ工具鋼
SKS37.85靭性が高く、耐摩耗性も優れている
SCM4407.85クロムモリブデン鋼。高強度かつ耐疲労性が高い
NAK557.8プリハードン金型鋼。高い靭性と耐摩耗性を持つ
A50522.68アルミニウム合金で、耐食性に優れ、軽量
A70752.8非常に強度が高く、軽量でありながら高強度を持つアルミニウム合金
MCナイロン1.16樹脂の中でも特に高い強度と耐摩耗性を持つ
POM1.4高い強度と硬度を持ち、摩擦が少ない樹脂素材

各材料の特徴と用途

  • SS400S45Cは、汎用性の高い鋼材で、強度や加工性が優れていますが、重量があるため軽量化が必要な場合には不向きです。
  • SUS304は、耐食性に優れるため、腐食のリスクがある環境で使用されます。比重は他の鋼材よりもやや高めです。
  • SKD11SKS3は工具鋼であり、耐摩耗性と高強度が求められる部品に適しています。
  • SCM440は、クロムモリブデン鋼で、耐疲労性が高いため、耐久性が重要な機械部品に多く用いられます。
  • NAK55は金型鋼で、高い靭性と耐摩耗性を兼ね備えています。
  • A5052A7075はアルミニウム合金で、非常に軽量でありながら強度も高いため、航空機や自動車などで軽量化が求められる場面に最適です。
  • MCナイロンPOMは樹脂材料で、比重が非常に軽く、金属材料よりも軽量化が必要な場合や摩擦低減が求められる部品に使用されます。

材料の重量計算式

材料の選定にあたり、比重に基づいた重量の計算も重要なプロセスです。製品の重量を正確に見積もることで、設計全体の強度や動力要件、コストなどを効率的に計画できます。ここでは、材料の重量を計算するための基本的な計算式を紹介します。

重量計算式

材料の重量Wを計算するための式は、以下の通りです。

\( \displaystyle W=\frac{ρ} {V}\)

  • W:重量 (kg)
  • ρ:密度 (g/cm³ または kg/m³)
  • V:体積 (cm³ または m³)

比重(密度)は材料ごとに異なるため、密度を正確に把握して計算する必要があります。また、計算する際に単位を揃えることが重要です。

具体例:SS400の重量計算

例えば、SS400の6面フライス材(サイズ:100mm × 100mm × 10mm)の重量を計算してみます。

  1. SS400の密度:7.86 g/cm³
  2. 体積 V:100mm × 100mm × 10mm = 100,000 mm³ = 100 cm³

\( \displaystyle W=7.86g/cm³×100cm³=786g=0.786kg\)

この計算から、SS400の100mm × 100mm × 10mmの材料の重量は約0.785kgとなります。

さまざまな材料の重量計算に応用

同じ方法で、比重の異なる材料に対しても重量計算が可能です。材料の密度は比重にほぼ等しいため、比重を使っても概算重量を算出できます。例えば、アルミニウム合金A5052の密度は2.68 g/cm³なので、同じ体積のA5052の重量は以下の通りです。

\( \displaystyle W=2.68g/cm³×100cm³=268g=0.268kg\)

比重の定義と重要性

比重とは、ある物質の密度を水の密度で割った値を指し、単位のない相対値です。比重が高いほど、同じ体積でも重く、低いほど軽量になります。設計においては、製品の重量を抑えるために比重の小さい材料を選ぶことが多いですが、強度や耐久性など他の特性も考慮する必要があります。

比重と密度の違い

「比重」と「密度」は、機械設計における材料選定で重要な物理量ですが、混同されがちです。それぞれの定義と違いについて明確に説明します。

密度とは?

密度は、単位体積あたりの物質の質量を表す物理量です。つまり、物質がどれだけ詰まっているかを示す指標で、以下のような公式で表されます。

\( \displaystyle 密度(ρ)=\frac{質量(m)} {体積(V)}\)

密度の単位:通常、SI単位系では kg/m³、あるいは g/cm³ で表されます。

  • 例:鉄の密度は約7,860 kg/m³(または7.86 g/cm³)

密度は、材料そのものの質量に基づいた絶対的な値であり、環境や基準に左右されることはありません。材料の密度が高いほど、同じ体積により多くの質量が詰まっていることを意味します。

比重とは?

比重は、ある物質の密度を基準物質(水)の密度と比較した相対的な値です。比重は無次元量(単位を持たない量)で、次のように計算されます。

\( \displaystyle 比重=\frac{物質の密度} {基準物質(水)の密度}\)

  • 比重の基準:一般的には、4℃での水の密度(1 g/cm³)を基準とします。
    • 例:鉄の比重は約7.85(水の密度1 g/cm³に対して)

比重は密度のように単位を持たず、他の物質との比較に基づくため、材料の「相対的な重さ」を表すために使われます。材料が水より軽い場合、比重は1未満となり、水より重い場合は1を超えます。

比重と密度の違い

  • 密度は、材料の単位体積あたりの質量であり、絶対的な値で環境に依存しません。単位として kg/m³ や g/cm³ が使われます。
  • 比重は、基準物質(水)の密度と比較して示される相対的な値であり、単位を持ちません。
例:鉄(SS400)の場合
  • 密度:7.86 g/cm³
  • 比重:7.86 (水の密度1 g/cm³と比較)

鉄の密度は絶対値として7.85 g/cm³で、比重も同じ7.86となりますが、これは水との相対的な比較によって得られる値です。

まとめ

材料の比重は、設計全体の重量やコストに直接影響を与えます。軽量化が求められる設計では、アルミニウムや樹脂が有利ですが、強度や耐久性を確保するために鋼や工具鋼が必要な場合もあります。比重と他の特性を総合的に考慮して、最適な材料を選定することが機械設計において非常に重要です。


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